先行ハイレゾで聴く! Sotte Bosseにより新たに生まれ変わった名曲群
音楽ユニットi-depやプロデュース、DJなどジャンルレスな活動で知られるナカムラヒロシと、様々なアーティストとのコラボレーションでソロ活動も行うヴォーカルCanaによるプロジェクト、Sotte Bosse。人々の耳や想い出に染み込んでいる良質なポップ・ソングをソフトなボサノヴァやサンバにアレンジし楽曲の良さを再認識させてくれるサウンドは、新たなカヴァー・フォーマットを生み出し、今日のカヴァー・シーンに強く根付いてる。そんな彼らによる5枚目のカヴァー・アルバムをこのたび先行、しかも24bit/96kHzのハイレゾ音源でお届け! ドリカムの「LOVE LOVE LOVE」などの大ヒット・ソングはもちろんのこと、SEKAI NO OWARI「RPG」、秦基博「鱗」、くるり「ばらの花」など、新旧問わない曲群に新たな息吹を吹き込んだ、オリジナリティー溢れる音像は今作でも健在。ユニットとしての未来を明るく照らすような新感覚のアレンジと、彼らによるオリジナル曲に込めた思いに迫った。
Sotte Bosse / Beautiful Life(24bit/96kHz)
【価格】
alac flac wavともに 単曲 500円 / まとめ購入 2,484円
【Track List】
1. やさしさで溢れるように (JUJU)
2. ひとつだけ (矢野顕子)
3. 25コ目の染色体 (RADWIMPS)
4. 鱗 (秦基博)
5. 天体観測 (BUMP OF CHICKEN)
6. ばらの花 (くるり)
7. 吉祥寺は夜の6時 -Interlude- (オリジナル・ソング)
8. RPG (SEKAI NO OWARI)
9. It's a Brand New Day -奇跡の日- (オリジナル・ソング)
10. 中央線 (THE BOOM)
11. はるのはるか (sasakure.UK)
12. 空も飛べるはず (スピッツ)
13. ORION (中島美嘉)
14. LOVE LOVE LOVE (DREAMS COME TRUE)
15. Beautiful Life (オリジナル・ソング)
INTERVIEW
前作から4年。ヴォーカルのCana、コンポーザーのナカムラヒロシともに、Sotte Bosseが、通算5作目のカヴァー・アルバム『Beautiful Life』をリリースした。収録された楽曲の数々は、誰しも一度は耳にしたことのあるナンバーが中心(オリジナル曲2曲+インスト1曲収録)。だが、Canaの歌声、そしてナカムラヒロシのアレンジは、慣れ親しんだはずのそれらの楽曲に、もう一度出会うことを可能にしてくれる。自分の大好きな楽曲と再会するというのは、なんと素敵な体験だろう。Sotte Bosseが僕たちに与えてくれるのは、単なる耳ざわりのいいカヴァーではない。それぞれの楽曲の中に生きる主人公、ひいては音楽そのものとの新たな巡り会いなのだ。一時は「カヴァーが嫌になったこともあった」という2人。インタヴューを通して見えてきたのは、彼らがそれでもカヴァーにこだわりつづける理由、そして今作に対する強い自信だった。
インタビュー&文 : 長島大輔
「もうカヴァーはいいんじゃないか」って話してた時期もありました
——4年ぶりの新作となりましたが、長い時間が空いたのには何か理由があったんですか?
Cana : 子供が生まれたのが一番ですね。2009年頃からずっとお休みを取っていました。ちょうどヒロシさん(ナカムラヒロシ)にも子供が生まれたり。それで長い時間が空いたんです。
——この4年でお二人とも親になったんですね。
Cana : そうなんです。そういう意味では、一から土を耕すような4年間でしたね。ある意味ではゼロからの再スタートになったので、自分の歌と向き合う良い機会にもなりました。
——自分の原点に戻ったというか。
Cana : 本当にそうですね。「自分の歌とは何か」、「なぜ歌うのか」とか毎日考えましたね。
——ナカムラさんはいかがですか?
ナカムラヒロシ(以下、ナカムラ) : 僕的には震災というのがすごく大きくて。あの日を境に、ミュージシャンとしての世の中への接し方とか、表現者としての音楽への接し方が変わってしまいました。なんて言うか、もっと音楽を私的なものにしたくなったんです。
——私的なものというと?
ナカムラ : 音楽でパブリックなものをコントロールしようとすることに、アーティストとして疑問を感じるようになったというか。あくまでも自分のために音楽をやるっていうのがベースだっていう。
——なるほど。具体的にどう変わりました?
ナカムラ : 決定的に違うのは、僕がプライヴェート・スタジオを作ったことで、音の研究や実験が自由にできるようになったことですね。Canaちゃんが4年間、ずっと自分自身と向き合ってたのに対して、僕は逆にいろんな人とコラボレーションしたり、プロデュースをしたり、とにかく経験を積んで武者修行をしてました。
——この4年間、お二人とも大きな変化を経験したんですね。Sotte Bosseは2008年にオリジナル・アルバム(『Tomorrow Knows Yesterday』)をリリースしたこともありますが、今回、やはりカヴァー・アルバムを作るという意志は変わらなかったですか?
ナカムラ : 正直に言えば、ほかのアーティストの魂の入ってないようなカヴァーを聴くたびに、もうカヴァーはしたくないと思ってましたね。それもあって4年っていう時間が過ぎたんです。実際、今回のアルバムも、じつはオリジナル曲のほうが先にできていたんですよ。
Cana : 私もそうで、二人して「もうカヴァーはいいんじゃないか」って話してた時期もありました。
——そうだったんですね! お二人の口からそんな言葉が出てくるとは…。お子さんが生まれたり、震災を経験したりと、表現者としてはオリジナル曲に向かうという選択肢もあったと思いますが、それでもカヴァー・アルバムにこだわった理由というのは?
Cana : オリジナルであろうとカヴァーであろうと、ヒロシさんと私にしかできない音楽があるんだなって痛感したからですね。やっぱり良い曲、大好きな曲っていっぱいあるし、それを自分たちならではの世界観で表現できるっていう自信がありました。あとは、この4年の間にさまざまなアーティストのフィーチャリング・ヴォーカルとして歌わせてもらったことで、今ならまたカヴァーが楽しくできるかもって思えたんです。
ナカムラ : 僕はすごくシンプルですよ。今回のアルバムに収録されている「天体観測」は、前にピアノ弾き語りのバラード・アレンジでやったことがあったんです。でも、ふとしたきっかけでもう一回アレンジしなおしてみたら、あの曲もやりたい、この曲もやりたいっていう状態になって(笑)。カヴァー馬鹿になってしまいました(笑)。だから、「なぜカヴァーなのか」って哲学的に答えることもできるけど、結局は自分自身への負けん気の強さなんですよね。「絶対にもっとすごいアイディアを思いつける!」っていう。そういう意味では、今回のアルバムは「天体観測」に背中を押されてできたのかも。
Cana : 今までの4年間をしっかり詰め込みつつ、集中してカヴァー・アルバムが出せたっていうのは本当に感無量です。カヴァーに対してテンションがぐっと下がったときがあったからこそ、余計大切に思えるし、これからの自分たちのやり方の基礎になるようなアルバムになりましたね。
アンレンジメントの最新形ができた
——なるほど。では、音源についても具体的に聞いていきたいと思います。今回の選曲はどのように?
Cana : じつはやりたい曲がほんとにたくさんあって、選曲には困りました。ヒロシさんにアレンジしてもらったけどうまくいかなくて、結局ボツになった曲もあるし、逆に「ダメかな?」って思ってたら良い方向に転じた曲もあります。
ナカムラ : へー。それはどの曲?
Cana : 「ORION」っていう中島美嘉さんの曲なんですけど、仮歌を入れたときに、この曲は難しいかなって…。
ナカムラ : あのときはデモだから! このユニットはデモすら許されないんか!(笑)
Cana : 私は仮歌の時点で完璧になっていないと不安なんですよ(笑)。
——はははは(笑)。今回、Sotte Bosseらしい軽快なボサノヴァ・アレンジはもちろんですが、「天体観測」(BUMP OF CHICKEN)とか「ばらの花」(くるり)に見られるしっとりとしたアレンジが多かったのも印象的でした。
ナカムラ : バラードのようでエレクトロニカっていうことで、僕は「バラードトロニカ」と呼んでるんですけど、ちゃんと声で感動させられる僕のバラードトロニカ・アンレンジメントの最新形ができたと思ってます。
——「バラードトロニカ」ですか、なるほど。
ナカムラ : このアレンジはライヴの反応が面白いんです。というのは、このアレンジをダブステップと言う人もいるくらい、ジャンルの解釈がさまざまなんですよね。最近、音楽ってはっきりとジャンル分けしなきゃいけない風潮があると思うんですけど、アーティストが好き勝手やったら、ひとつのジャンルに収まるものなんかできるはずがないんです。だから、それだけ感想が分かれるのは当然のことなんですけど、それでも”Sotte Bosseの曲”になるのは、Canaちゃんのヴォーカルがあるからなんですよね。
——Canaさんの声がSotte Bosseの多様なアレンジをひとつに結びつける役割を果たしているんですね。新しいアレンジということで言えば、「25コ目の染色体」(RADWIMPS)なんかも印象的でした。この曲でCanaさんはラップを披露しています。
ナカムラ : これは今回のレコーディングの中のひとつの挑戦ですね。ラッパーじゃない彼女がラップでどうやって世の中に伝えるのかっていうのは、すごく興味のあるところでした。とはいえ、あまりたくさん録って慣れた感じになるのも違うので、ギリギリのところを録音してます。
カヴァーの良さって、いろんな人の価値観に触れられること
——なるほど。Canaさんが一番難しかったのはどの曲ですか?
Cana : 矢野顕子さんの「ひとつだけ」ですね。歌の表現が一番大変でした。矢野顕子さんの原曲のイメージがものすごく強いし、しかも同性ということもあって。矢野さんの曲って、矢野さんがその曲の中に主人公としてすでにいるんですよね。だから、軽く入ろうと思ってもダメなんです。スタジオで寝転んでみたり、姿勢を変えてみたり、いろいろ試しながら録りました(笑)。
ナカムラ : 最初、この曲は結婚する前に好きな人へ向けた歌なんだろうと思っていたんですが、結婚して夫が単身赴任してる家の奥さんだって歌えるはずだし、どんなふうにも解釈できるよねっていう話をしたんです。それでしっくりきたのかな? Canaちゃんは歌詞の解釈をしっかりしないとその曲が歌えない、いわば女優さんなんですよね。
——女優さんにとっての台詞と同じなんですね。
Cana : そうなんです! 女優さんが役によって髪も服も表現も全部違うように、私もそうありたいんです。1曲1曲メッセージも違うし、伝え方も違うし、主人公も違うから、それによって表現が変わるのは当たり前じゃないですか。主人公を掴むっていうのが一番大事なんですけど、矢野さんの曲は、矢野さんじゃない主人公をイメージするのが難しかったんです。
——なるほど。掴むのが大変と言えば、Sotte Bosseのカヴァー・アルバムには、これまで必ずスピッツの曲が入ってますよね。今回も「空も飛べるはず」が収録されていますが、草野さんの詞の世界も、草野さん以外をイメージするのが難しそうですね。
Cana : すごい! よく気づきましたね! スピッツ大好きなんです。草野さんの場合、好きすぎて自分の中にもう世界観ができあがってるんですよね(笑)。
——そうなんですね(笑)。今回のアルバムはSotte Bosse初のハイレゾ配信だと思いますが、ハイレゾで聴いてほしい曲を1曲挙げるとしたらどれですか?
ナカムラ : 「RPG」(SEKAI NO OWARI)なんかは生々しすぎて、思わず「エロいなあ~」ってスタジオで言ったのを覚えています。僕らが普段スタジオで聴いてるのはこの音なんですよね。
——ハイレゾ=「エロい」っていう表現は言い得て妙ですね。最後に、このアルバムに込められたメッセージがあれば、教えていただけますか?
Cana : 子供が生まれたり、愛犬が亡くなったりしたこともあって、「生きる」ってことについての思いが強く反映されたアルバムだと思います。生きてるってほんとにすごいことだと思うので、その思いをカヴァー曲に込めて歌いたいと思いました。でも、そこで肩に力を入れるんじゃなくて、あくまで生活の中でいろんな感情と向き合いながら、シンプルにそれが伝えられたらいいなって。生きるエネルギーがたくさん込められたアルバムです。
——誰もが一度は聴いたことのある曲がたくさん収録されていますが、Sotte Bosseのカヴァーを聴くことで、その曲ともう一度出会うきっかけになるのではないかと思います。
Cana : そうなったらいいですね! カヴァーの良さって、いろんな人の価値観に触れられることだと思うから、本当にカヴァーをやって良かったと思っています。
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LIVE INFORMATION
Sotte Bosse presents Just Think〜“Beautiful Life” リリース記念ライブ〜
2014年7月19日(土)
渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
OPEN : START / 17:00 : 18:00
自由¥3,900(税込・ドリンク代別)
PROFILE
Sotte Bosse
2006年、i-depとしてポップ・フィールドからクラブ・フィールドまで幅広く活躍中のトラック・メイカー、ナカムラヒロシと、心のヒダにやさしく触れるような希有な歌声を持つシンガー、Canaが出会いユニットとして活動をスタート。J-popを独自の解釈でアレンジしたトラック、詩の世界は深く入り込み語りかけるようなスタイルで聴く者を瞬時に惹きつける歌声が織りなすカヴァー・ソングはスマッシュ・ヒットを記録し、個々リスナーはもちろん、カフェなどのラウンジ・ミュージックとしても人気を集めている。