聴いたときに懐かしさを感じた。頭の中をよぎったのはイールズ。
初めて「Wonderland」を聴いたときに懐かしさを感じた。頭の中をよぎったのはイールズ。単純にスクラッチの音と、リズムによるものなのか。僕の感覚があっているのかは分からない、けれど1990年代終わりから2000年にかけてオルタナティヴ・ロックという言葉が消えていき、それと共にラップ的なもの、R&B、ブルース、カントリーのような色々な曲調をミックスさせた音が多く生まれた時代(僕にとってはイールズの『Electro-Shock Blues』やバットリー・ドローン・ボーイ『The Hour Of Bewilderbeast』、ウィーン『The Mollusk』等がそうで、あげたバンドは今でも大好きなのだが)。もしかしたら後藤氏も思い入れがあるのかもしれない。
アルバム『Can't Be Forever Young』はシー・アンド・ケイク、トータスのジョン・マッケンタイア氏がミックスに携わっている。ジョン・マッケンタイア氏のミックスはかなり色を残すイメージがあった。しかし全体を通して聴いた感じではあまり強い印象は無く、ギター、ドラム、シンセの音が立っている事と、クリアで清潔感のある音色は言われて初めてそんな気がするといった感じであった。だけれども、そんな事がどうでもよくなってしまうぐらい、後藤氏の個性を強く感じさせる素晴らしいオリジナルなアルバムに仕上がっている。生音が多い事で鮮麗された音も柔らかく暖かい、そして「Humanod Girl」や「The Long Goodbye」「Lost」のようなインディー・ポップな曲から「Wonderland」「Aspirin」「Great Escape from Reality」のように捻りのきいた曲まで多彩で飽きさせない。加えて後藤氏の声はとても聴きやすく、全体を通して共通感を感じさせる大切な要素になっているように思う。
最後に、正直こんなに何度も聴いてしまうとは思わなかった。そして同時に既視感を覚え、そのジェネレーション感に感動してしまった。『Can't Be Forever Young』を通し、まだトータスやシー・アンド・ケイクを聴いていない方へ新しい音楽の探求のヒントをも示す素晴らしい1枚だ。(Text by 中村文泰)