Gotchのフィジカルに対するアティチュードを感じる
私だって、君だって、あの娘だって歳をとる。誰だっていつかは灰になる。だったら限りある人生をどう生きようか。ほら、いのちを燃やせよ。アルバムのタイトル曲でもある「Can't Be Forever Young」(=いつまでも若くいることはできない)に「いのちを燃やせ」という邦題をつけるのはおそらくGotchくらいだろう。一見、悲観的なタイトルだが、それを踏まえたうえで生きることの愛おしさを歌っているアルバムである。
このアルバム全体を通して放たれる、良い意味で気の抜けたような気だるそうなGotchのファルセットが耳に抜け、とても心地良い。そしてパーカッションやハーモニカ、オルガン、アコースティック・ギター、ハンド・クラップの音、重ねられたコーラスからはフィジカルに寄り添ったような手作りの温かみを感じる。きっとサポートメンバーとの曲作りも楽しかったのだろう。ここ数年のGotchこと後藤正文は、さまざまな場面でフィジカルの重要性を語ることが多くなってきた。それは震災から今日に至るまでの活動を経て、じかのコミュニケーションの良さを実感し、生きていることが希望そのものなのではないかという思いがより強くなったからではないだろうか。このアルバムからは、そんなGotchのフィジカルに対するアティチュードを感じるのである。
歌詞は今まで彼が書いてきたものよりもストレートな表現で、恋を思わせるような曲も多い。だが、繰り返し歌われるのは〈時間は有限だということ〉〈恋もいつか終わってしまうし / 夢も希望も何にもないなんて言ってたらそれだけで人生終わっちゃうよ〉と言っている。「喪失」や「終わり」を迎える前に精一杯あがこう。君は限りある人生をどう生きる?(Text by 目黒愛里彩)