2014/04/11 16:44

【ハイレゾ先行配信】桑原あいがトリオで描き出す自由なジャズのアンサンブル――3rdアルバム『the Window』を先行配信開始

(c)Tadashi Yamashita

ジャズ・ピアニスト、桑原あい率いるai kuwabara trio projectが前作より約1年ぶりとなる3rdアルバム『the Window』をリリース。幼少よりメディアに取り上げられるほどの桑原あいの確かな才能は、大型フェスへの出演、USツアーなどさまざまな経験を積んだ2ndアルバムからのこの一年で更に磨かれスケールの大きなものに。そこにトリオ・プロジェクトのアンサンブルが乗り、時には桑原のピアノに寄り添い、時には独創的な超絶技巧で曲に色を添えます。是非とも高音質で触れていただきたい一枚です。

3rdアルバム『the Window』をハイレゾ先行配信スタート!

ai kuwabara trio project / the Window

【収録曲】
1. Prelude
2. “Into the Future or the Past?”
3. Time window
4. A little weird
5. Innocent reality
6. Empty-window
7. Whether or not
8. Of mist, to envelope something
9. Loveletters
10.Cradle

【配信価格】
(左)
alac / flac / wav(24bit/96kHz) : 単曲 300円(1曲目のみ200円) / アルバム購入 2,900円
(右)
mp3 : 単曲 250円(1曲目のみ150円) / アルバム購入 2,400円

Whether or not
Whether or not

INTERVIEW : ai kuwabara trio project(桑原あい、森田悠介)

左から、桑原あい、森田悠介

情熱的でありながら理知的。プログレッシヴでありながらスタンダード。超絶技巧で聴かせたかと思えば、繊細な鍵盤のタッチでうっとりさせる。ai kuwabara trio projectの新作『the Window』は、変幻自在のコンポージングに圧倒されっぱなしの1枚だ。前作から1年、初の海外公演となったアメリカ西海岸ツアーを経験し、彼女たちのサウンドはよりダイナミックなものへ。今作はドラマーとして石若駿と今村慎太郎の2人を迎え、万全の布陣で作られたアルバムと言えるだろう。フロントマンの桑原あい(Pf)、そしてトリオを支える森田悠介(Ba)に話を訊いた。

インタヴュー & 文 : 長島大輔

完成するものが想定したタイトルを超えていくというか

――前作『THE SIXTH SENSE』リリース時のインタヴューで、企画書を準備してからアルバム制作に入るという話をしていましたよね。すごくおもしろいなと思ったんですけど、今回も企画書を作ったんですか?

桑原 : じつは今回、企画書は作りませんでした。前作と今作とでは、作品の趣旨がまったく別なんです。というのは、前作は文字通り「第六感」をテーマにしたアルバムで、そのテーマから個々の曲が派生するという感じだったんですね。だから企画書をがっつり作ってから取りかかったほうがやりやすかったし、イメージも分散せずに全体を俯瞰できたんですよ。でも今作の場合、ひとつの世界を表現するというよりは、曲ごとにまったく違う世界を持つというコンセプトなんです。

――なるほど。じゃあ今作は一貫したテーマがあるわけではない?

桑原 : そうですね。最初、曲のタイトルだけをまず考えて、前作のように企画書を書いてみようとしたんですけど、いざ曲を作りはじめてみると、完成するものが想定したタイトルを超えていくというか。今回収録されている曲は、レコーディングの当日まで形が定まらなかったんですよ。

――もともとはテーマを設定しようとしてたけど、曲を作っているうちにやりたいことが先行していっちゃった?

桑原 : そうなんですよ。インプロの部分が前作よりも多くて、だからより柔軟な対応が必要でしたね。テーマとかタイトルって、結局はひとつの言葉に過ぎなくて、やっぱり曲ありきじゃないですか。だから、今回はテーマとかタイトルに縛られたくないって思いました。『the Window』っていうタイトルも、9つの窓からそれぞれ違う世界を覗く、みたいな意味があって。あんまりひとつの世界にこだわらずに、いろんな世界を見せたかったんです。

――そうだったんですね。なぜ「窓」だったのですか?

桑原 : ドアじゃなくて窓を選んだのは、ドアって基本的には地に接してるけど、窓は上にあるから地に接してない。そういう意味でよりポジティヴだなと思って。前作のようにぎゅっとしたコンセプト・アルバムじゃなくて、もう少しオープンな気持ちで聴いてもらいたいという思いもありました。

自分は日本人だということを認めてジャズをやっているので

――なるほど。前作から1年ぶりの作品ですが、そのあいだにアメリカ西海岸ツアーを回ってますよね。いかがでしたか?

桑原 : サンフランシスコ、ロサンゼルス、デンバー、アラスカを回ったんですが、すごくいい経験でしたね。

――会場はライヴハウスですか?

森田 : 大学のホールが多かったですね。午前中は学生さんを集めてワークショップをやらせてもらって、夜にコンサートっていう日程とか。

――反応はどうでしたか?

桑原 : 聴く側のエネルギーがすごかったですね。自分たちが提示したよりももっと大きく捉えてくれるというか。すごいダイレクトに受け止めてくれるし、それがダイレクトに返ってくる。私たちに対する先入観がないぶん、ぱっと入りやすかったみたいで。日本らしいジャズが通じるのかどうか、不安な気持ちがあったんですけど、そういうのがまったくなくて、想像以上の反応でした。アルバムの制作に関して言えば、すごくバネになったと思います。

――「日本らしいジャズ」というワードが出ましたが、曲を書いたり演奏したりするときに、日本人らしさって意識しますか?

(c)Tadashi Yamashita

桑原 : 自分は日本人だということを認めてジャズをやっているので、そういう意識はありますね。アメリカであってもフランスであっても、海外って母国愛がすごく強いですよね。そういう意味で、自分も「私は日本人です」っていう誇りを持てるように生活していきたいと思ってます。音楽がどうっていうよりは人間的に。

――森田さんは西海岸ツアー、いかがでしたか?

森田 : ひょんなきっかけでこのツアーのお話をいただいて、最初は「アメリカですか…」みたいな。でも、日本人3人のメンバーで4ヶ所も回れるということがすごく光栄だなと思ったので、いつも通りのことをやろうと。普段やってる通りのことが自分たちの素直な姿だから、それは絶対崩さないようにって。その結果いい反応をもらえたので、よかったと思います。

――アメリカ・ツアーを経たことで、今回のアルバムにどんな影響がありましたか?

桑原 : インプロの充実ですね。より互いの音を聴くようになりました。ツアーの最中は言い合いもしましたが、みんなの意見を聞くいい機会になったし、アンサンブルに対する意識が高まったと思います。たとえば2曲目の「"Into the Future or the Past?"」は、場面の切り換えがいちばん多い曲だったので、構成でどんなふうにみんなと寄り添えるかを考えたし、7曲目の「Whether or not」は、アンサンブルをしましょう、という話をして。

森田 : テーマとリフしか決まってなくて、あとは勝手にやれみたいな(笑)。

――「Whether or not」はピアノに歪みのエフェクトをかけていますよね。

桑原 : そうですね。この曲だけ唯一歪みを使いました。生のピアノが好きなので、あまりシンセは使いたくないのですが、攻撃的でおもしろい音を出してみたくなったんですよ。そのとき、森田くんがエフェクターを使っているのを見て、ピアノにエフェクトをかけたらどうなるんだろうって。ピアニストさんによっては弦に細工をする方もいらっしゃるんですけど、私はピアノの弦を傷つけたくなかったので、エフェクターを使うことにしました。楽器屋さんでいろいろ試してみたんですけど、ピアノ専用のエフェクターってほとんど売ってないんですよね。

森田 : で、最終的には普通のギター用のディストーションを買って、マイクで拾ったピアノの音をリアルタイムで歪ませるアイディアを考えたんですね。最初はアメリカ・ツアーで実験してみたんですけど、これならピアノを弾きながら手元で歪みをコントロールできそうだなって。

桑原 : 「Whether or not」だけ極端に攻撃的にしたかったので、思い切ってそういう要素を使ってみました。あとは生音だけですね。

――生のピアノにこだわりがあるんですか?

桑原 : そんなにこだわる必要ないじゃんって言われることもあるんですけど、私にとっては大事なことですね。

ドラマーによって、私のソロとかフレーズがぜんぜん違うものになっていると思う。その違いを楽しんでほしいですね

――今作からドラマーとして石若駿さんが参加していますが、何かきっかけがあったんですか?

桑原 : 『THE SIXTH SENSE』をリリースしたときに、タワーレコードでインストア・イヴェントをやったんですけど、そこで対バンしたのが石若駿デュオだったんですよ。そのときに駿くんのドラムを初めて聴いて、「このドラムはいままで一緒にやったことのないタイプだ!」と思ったので、打ち上げで声をかけました。今回は駿くんと今村慎太郎さん(前作にも参加)という2人のドラマーに参加してもらってるんですけど、本当にびっくりするほど違う音を出すので、曲もまったく違うものになるんですよね。

(c)Tadashi Yamashita

――それぞれどういう音を出すんですか?

桑原 : 慎さん(今村慎太郎)に関しては、音を出すスピードがめちゃめちゃ速いというか。絶対に狂わないし、断定力がある。「こうだろ!」みたいな力強さがあって、どっしりとした岩みたいに安定してますね。駿くんの場合、ひとつひとつの音がなめらかで、まるで線で繋がっているような… わかりますか?(笑) ドラムセットをメロディー楽器として演奏してる感じなんですよね。

――なるほど。

桑原 : それが明確に出たのが「Whether or not」なんですけど、冒頭のベースのリフからは、ロックっぽいドラムを連想しがちだと思うんです。でも、リハーサルで駿くんに「リフにドラムが合わせるんじゃなくて、なめらかに響くような音がほしい。シンバルが響いて、ベースの上のほうで泳いでる感じ」って説明したら、「わかりました」って言われて。実際に演奏を始めたら、駿くんが急に立ち上がって、高い位置からシンバルを叩いたんですけど、それが本当に素晴らしくて。「それだよ! でもなんで立ったの?」って聞いたら、「やっぱり座って叩くと、ドラムって思っちゃうんですよ」って。そういう視点を駿くんは持っていて、自然にできる。それがおもしろいと思いますね。

森田 : 慎さんの場合は、「下は俺が守るから、お前は自由に弾け」というようなプレイをしてくれるんですよ。それに合わせて僕もシンプルなラインを弾いて、2人でがっしりとした土台を作るときもあるし、逆にピアノがぎゃーっていったときはフレーズのほうに回ることもある。駿くんの場合は、彼がずっと自由に泳いでいて、ピアノもそれに追従して泳いでいくので、俺は下に抜けるよみたいな引き算をしています。

――ドラムの演奏からインスピレーションを受けましたか?

桑原 : 受けました。ドラマーによって、私のソロとかフレーズがぜんぜん違うものになっていると思う。その違いを楽しんでほしいですね。リズム隊って本当に大事なので、かなり私の演奏に影響するんです。

――最後に、今作は24bit/96kHzのハイレゾで配信されますが。

森田 : 今回、ハイレゾ用にCDと別にマスタリングをしてもらっているので、そのあたりの違いも楽しんでいただきたいですね。

2ndアルバム『THE SIXTH SENSE』も高音質配信中!

とどまることを知らない創造のイマジネーション! 鮮烈のデビューから半年、早くも届けられたai kuwabara trio projectのセカンド・アルバム『THE SIXTH SENSE』は全9曲書き下ろし、前作を越えるスケール感とコンセプトに打ちのめされる大傑作! 楽曲によってシンセや声、SEのダビングを施し、また一部CDJを使用するなど徹底的にコンセプトを追及した一切の妥協のない内容。桑原あいのピアニストとしてはもちろん、コンポーザーとしての才能が存分に発揮された珠玉の楽曲が並ぶコンセプチュアルな作品。

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LIVE INFORMATION

3rd album 『the Window』リリースLIVEツアー

2014年4月14日(月)@北海道札幌市 摩天楼音食倶楽部
2014年4月15日(火)@北海道砂川市 地域交流センターゆう・大ホール
2014年4月16日(水)@北海道帯広市 幕別町百年記念ホール・大ホール
2014年4月18日(金)@北海道札幌市 札幌市教育文化会館・小ホール
2014年5月9日(金)@静岡浜松 ハーミットドルフィン
2014年5月10日(土)@大阪 Mr.ケリーズ
2014年5月11日(日)@愛知 名古屋スターアイズ
2014年5月17日(土)@富山 高岡文化ホール・大ホール
2014年5月22日(木)@神奈川 モーションブルー横浜
2014年7月某日@東京 ホール公演予定

PROFILE

ai kuwabara trio project

ピアニスト桑原あいの作曲作品を、“ピアノトリオ”という形態で表現するためのプロジェクトである。緻密に練られた楽曲構成と即興演奏を主体とする。

自主製作にてリリースされた1stアルバムでは、楽曲の性質に応じて3人のドラマーを起用。2ndアルバムは、コンセプト・アルバムとして全体でひとつの世界を描く。

>>OFFICIAL HP

[レヴュー] ai kuwabara trio project

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