2014/01/14 00:00

あなたの食欲を刺激する36曲、「孤独のグルメ Season 3」O.S.T.

主人公、井之頭五郎がふと立ち寄った店で大衆料理に舌鼓を打つ。そんな光景を淡々と描くスタイルで人気のTVドラマ「孤独のグルメ」。このドラマにおいて、その内容とともに話題を呼んだのが、視聴者の食欲を掻き立てる劇中音楽の数々だ。OTOTOYでは、昨年7月から9月にかけて放送された最新シリーズ「孤独のグルメ Season 3」のサウンドトラックを、CD発売に先駆けて5日間先行配信。原作マンガの作者である久住昌之が率いるバンド、THE SCREENTONES(スクリーントーンズ)によって奏でられたこのアルバム、ただのサントラと侮ることなかれ。ロシアン、フレンチ、アラビアンまで、世界中のあらゆる音楽をつまみ食いし、どこかエキゾチックな雰囲気を醸し出す全36曲は、あなたの食欲を刺激してくれること間違いなし。レヴューとともにお楽しみください。

どこよりも早い、OTOTOYだけの先行配信!!
THE SCREENTONES / 「孤独のグルメ Season 3」O.S.T.
【配信形態 / 価格】
MP3 / WAV まとめ購入(36曲) : 1,500円 (単曲購入は各150円)

【Track List】
01. Still Alone
02. 孤独のツンドラ
03. 小腹が空いた
04. 買い食い
05. 甘い誘惑
06. 野毛のジャズパパ
07. ペコちゃんブルース
08. 街の裏回廊
09. レガートワルツ
10. 食欲全開ドラム
11. 異国のグルメ 2
12. エスニック日和
13. 火事鍋
14. 中野区アフガニスタン
15. 空腹匍匐前進
16. 午後三時のフルーツサンド
17. Rumba de Goro
18. ツンドラの男達
19. 夕日のツンドラ
20. 極寒のボサ
21. Slap Alone
22. 伊豆Qのテーマ
23. レゲエ season 3
24. BMW
25. Shinano River
26. ニイガタナダ
27. 十日町の空
28. 収穫祭
29. 鰯の渦
30. 七輪車
31. エレキのツンドラ
32. Grand Cabaret
33. ディキシーツンドラランド
34. ツンドラは未だ遠く
35. GooGoo
36. Season3 ClubMix [Bonus Track]

久住昌之(THE SCREENTONES)からアルバム購入者へメッセージ

このたびは、THE SCREENTONESのアルバムをご購入くださって、ありがとうございます。
ボクはJASRACによる著作権管理に関して疑問をもち、自分たちの曲を自由に演奏・再録音したい(JASRACに加盟すると自分の曲でも使用料が発生します)、そしてボクらの楽曲を気に入って下さった人に広く無料で使っていただきたい、という意味で、「孤独のグルメO.S.T. 1,2」に関して、「著作権フリー」という言葉を使ってしまいましたが、当然ながら作曲者の権利、出版したレコード会社が守られるべき権利はあります。お手数ですが、「孤独のグルメO.S.T. 1,2,3」の楽曲の使用を希望する方は、地底レコードまでご連絡ください。
特定の政治宗教などの団体の宣伝や、大きな営利目的でないかぎり、基本的に無料で許諾しています。なお、ライヴなどで我々の楽曲をコピー・演奏することに関しては連絡の必要はありません。音楽そのものは、基本的には誰もが自由に無料で楽しめるべきだと、ボクは思っています。

THE SCREENTONESを代表して 久住昌之

気に入った曲を聴くと腹が減るというパブロフの犬的効果も起こった

「孤独のグルメ」は2012年に始まったテレビ東京系列の深夜番組である。一応全国放送ではあるものの、地域によって放送時期に一年以上のズレがあったりして、もしかしたらご存じない方も結構いらっしゃるかもしれない。内容は、“酒を嗜まない松重豊扮する井之頭五郎が仕事を終えて独り食事をする”という、テキストで書くと身も蓋もないものだが、既にシーズンを3つ重ねて、シーズン4の要望も極めて高い人気番組である。原作は同名の漫画であり、シーズン1では比較的忠実に原作をなぞる内容で制作された。しかし原作は一巻完結のため、シーズン2からはひたすら独りで食事をするというアウトラインは同じまま、テレビ番組オリジナルと言ってよい内容になっている。シーズン1から原作者の久住昌之氏が番組に深く関わっているため、ある意味、原作の続きがテレビ番組として作られているともいえる(原稿執筆後、一年に一〜二回は週刊SPA!にて新作が発表されているということを確認したので補っておきたい)。

テレビ化にあたって必要な劇判をTHE SCREENTONESという久住氏を中心とするバンドが制作、演奏している。このレヴューはシーズン3に関するものだが、シーズン1(開始当初には継続するかどうか分からなかったことからシーズン1とは表記されていないが)にもシーズン2にもオリジナル・サウンドトラックという形式でアルバムが発売されている。放送時は前半5/6が井之頭五郎パートで、後半1/6では久住氏が同じ店舗に行ってほぼ毎回酒を飲みつつ店のメニューから別の料理を頼んだりするという構成になっていて、"映画本編とコメンタリー付きトラックをフルに観た時の満足感" を一つの番組の流れの中で感じられるようになっている。サウンドトラックの提供、アルコール要素の補完など、原作者による番組の「私物化」がこれほどうまくいっていて、心地よく感じる番組も珍しい。

THE SCREENTONES

前置きが長くなったが、サウンドトラック側から眺めてみると各シーズンにはテーマが設定されている。このシーズン3は「ツンドラ」である。なぜツンドラなのか。作品内を通底する「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ」という井之頭五郎の矜持があるのだが、この矜持に代表されるように、この作品の食事行為には大仰でストイックな求道精神が根底にあるように思われる。この気持ちはシェアする類いの気持ちではなく、わざと隣に座る人に精神的壁を作るような、この作品における「孤独」の本質だと思われる。勢い、そのような前提を持った人にとって外的世界は厳しくあるべきなので、荒野やツンドラといった厳しい環境がテーマになるのだろうなと勝手に想像をたくましくしているが、本当のところはどうなんだろうか。

サウンド面ではツンドラ=ロシア風サウンドがあると思えば、ペルシャやフレンチ、ワルツ、ジャズ、サーフロックなどなんでもありなのは、シーズン1、2と同様である。番組視聴中にはほとんど意識していない音楽との結びつきは、サウンドトラックだけを聴くと自然と意識に上ってくる。一般的にこの手のサウンドトラックは脚本にあわせて場面毎に個別に作られるため、順に聴くとどうしてもバラバラ感があるが、この作品の場合、自宅での食事中に再生したりすると、上で書いたような孤独な求道者モードのスイッチが入り、結果として食事が異常に進んだりする。そのうち、気に入った曲を聴くと腹が減るというパブロフの犬的効果も実際に起こった。また、外食しようと思ったとき、たまたまサントラの曲が脳内再生されると「独りで酒を飲まずに大量に」食べたくなるから要注意である。

なお放送時、2ちゃんねるのテレ東実況スレでは毎週番組のテーマ・ソングである「孤独のツンドラ」が流れるタイミングにあわせて(テキストではあるが)「ローロロロー」の大合唱が起こっていたことは記しておきたい。そもそも筆者が番組の存在に気付いたのも「夜食テロキター」などの書き込みで実況スレが一気に盛り上がったため、テレ東を観てみたのがきっかけである。ネット時代に於けるテレビ番組の理想的な一形態を「孤独のグルメ」に見ることができる。個別の孤独を皆で共有するという極めて高度な楽しみ方が確かに成立し、このサントラを持ち出すことで、外食時なんかに番組を自分の体験として重ねることが出来てしまうのだ。

続編はフォーマットを何も変えず、淡々と続けていただきたいものである。まずはシーズン4を今年中にお願いしますテレ東さん。そしてシーズン2の最終回みたいにTHE SCREENTONESメンバーの本編へのカメオ出演をお願いしますw (text by 竹中直純)

「孤独のグルメ」過去のサウンドトラックも配信中

孤独のグルメ

ふと食べたいと思ったものをただただ美味しそうに食べる主人公、井之頭五郎の姿が人気を呼び、「癒し番組」とも「夜食テロ」とも呼ばれたテレビ・シリーズ。井之頭五郎は、日々の仕事のちょっとした合間に空腹を満たしては、つかの間の「自由」を感じていた。そんな井之頭の食事シーンと心理をひたすら描き、ドキュメンタリーのように淡々と映し出していく演出が話題に。「Season 3」は、2013年7月から9月にかけて放送された。現在、特典映像満載のDVDおよびBlu-rayボックスが発売中。

>>OFFICIAL HP
>>DVD / Blu-rayの詳細

THE SCREENTONES

「孤独のグルメ」の原作マンガを手掛けた久住昌之によって結成されたバンド。「孤独のグルメ Season 1~3」すべての劇中音楽を担当し、それぞれのオリジナル・サウンドトラックを発表している。

Member
久住昌之 (acoustic guitar / vocal)
フクムラサトシ (soprano sax / tenor sax / recorder / vocal / programming)
河野文彦 (acoustic guitar / electric guitar / recorder / vocal / programming)
Shake (keyboards / kazoo / vocal / programming)
栗木健 (drums / percussions / sampling / vocal / programming)
戸田高弘 (vocal / mix / mastering)

Special guest
吉田のりお (electric bass)
えりんぬ (piano)
cossami (vocal)

この記事の筆者

[レヴュー] THE SCREENTONES

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