2013/12/20 00:00

全国流通のCDはおろか、これまでCD-Rなどでも音源のリリースは皆無。にもかかわらず今年のボロフェスタ2013では異例にして唯一の全日出演を果たすなど、地元・京都シーンの賑やかな磁場に欠かせないアクトとなりつつある2人組が、このTRIP MENです。ヴォーカルとビートを担当するKOZO PUNISHERとギタリスト兼ヴォーカリストのSHOGO STARTERからなる彼らが、ファースト・アルバム『I'LL BE BACK』をリリース。彼らが真っ当な評価を受ける契機となるでしょう。

実際、これまでのTRIP MENの受容のされ方を見るにつけ、ボロフェスタにおける、タイム・テーブルに組み込まれずゲリラ的にライヴをおこなうというダイナマイト・アクトなる表記など、どこか飛び道具的で色物的な扱いをされてきたのも事実。確かに派手ながらB級さも漂うステージ衣装や“ファッキン・ノイズ”と執拗に連呼するパフォーマンスは、パーティの瞬間的な盛り上げ役として機能してきました。90年前後のレイヴ・サウンドやニュージャック・スウィングを参照元としたひたすらアッパーでハイパー、ともすればアウト・オブ・デートとも聴こえるサウンド志向もまた、彼らへの視線にバイアスをかけていたかもしれません。

その一方で、筆者がライヴを見る度、サウンドの太さや音質、あるいはステージングの面で、明らかなヴァージョン・アップがされ続けていることは見逃せませんでした。このユニット、実は我々が思っている以上に極めてひたむきに音楽へ取り組んでいるんじゃないか。そして、今回のアルバムはその仮定が誤りでないと実証しています。音楽的方向性はこれまでの延長線上でいて、ビートの強度、ギターやシンセの音色の迷いなさ、シャウト・ヴォーカルの切れ味には、一切の照れやおどけはなし。tofubeatsやokadadaといった新鋭トラック・メイカー、おとぎ話の面々、おとぼけビ~バ~のあっこりんりんのゲスト參加も冷やかしでなく、ミュージシャン同士のリスペクトや共感のもとに実現したことが伺える充実の1枚となっています。『I'LL BE BACK』というタイトルも、絶対にこの一作だけで終わらないという決意が込められているというのは深読みすぎでしょうか。2人の真意に迫ってみました。

OTOTOY特典! ボーナス・トラック「morning St」入りパッケージ!

TRIP MEN / I'll Be Back
【価格】
mp3、WAVともに 単曲 200円 / まとめ購入 1,350円

1. Intro (feat. okadada) / 2. TRIP MEN (feat. tofubeats & okadada) / 3. Jack Boozer / 4. Bad By Myself / 5. Romeo Must Die / 6. Interlude / 7. Fergie / 8. HARD CANDY (feat. おとぎ話 & あっこりんりん & okadada) / 9. Bogus / 10. Freak Me Out! / 11. A Snotty Bunch / 12. Fergie (okadada Remix) / 13. morning St(OTOTOYボーナス・トラック)


※アルバム購入していただくと、OTOTOY限定ボーナス・トラック「morning St」が付きます。

「Jack Boozer」
「Jack Boozer」

INTERVIEW : TRIP MEN

インタヴュー & 文 : 田中亮太 (JET SET KYOTO / club snoozer)
写真 : 西野紫帆
撮影場所 : 新天地

誰もいままで京都で聴いたことのないビッグでアメリカンなサウンドさ(SHOGO)

ーーまずは基本的なことから訊かせてください。お2人は留学先のトロントで出会ったそうですね?

SHOGOSTARTER(以下、SHOGO) : そう。会った頃のKOZOはジム・キャリーの映画『マスク』みたいなONとOFFの差が激しいやつで、びっくりさせられたよ。

KOZO PUNISHER(以下、KOZO) : スーパー・ドンキーコングな兄ちゃんがいると思ったらSHOGOだったんだ。

ーー京都では、いつ頃から活動されているんですか?

SHOGO : 2010年の頭ぐらいからかな。

ーーTRIP MENを京都のシーンで認知させていくにあたって、まずどのように動いていったのでしょう?

SHOGO : とにかくライヴだね! 最初はメトロってクラブで色んなジャンルのイベントにブッキングしてもらってたよ。

KOZO : 4曲入りぐらいのデモを作っていろんな人に配ったんだ。ライヴ・ハウスに行く時は必ずプロディジーのパーカーを着ていってさ。パーカーに反応して話かけてくれる人にはもれなくデモを渡していたよ。メトロのブッキング・マネージャーのジャックさんと会ったのもそれがきっかけ。意外に効果有りで、いろんな人がライヴ・オファーをくれたよ。あとはいままで京都のみんなが見たことないようなライヴするってことは、結成当時から決めてたね。だって同じじゃダメだろ?

KOZO

ーー2011年4月にアップされた最初のPV「TRIP MEN」にジャックさんも出演していますね。フッド感の強いものになっていますが、あのPVに出ているみなさんは、京都で活動を始めてからの仲間なんでしょうか?

SHOGO : 完全にこっちで出会ったマイ・メンばかりだよ。たまたま、その撮影日と京都大学の試験の日が重なってて、ラジカセ持った狂った奴らが京都大学の回りを爆音でねり歩いてたんで、試験に受かった奴も、受かってない奴にも、“京都はヤバい”感が与えられたんじゃないかな(笑)。

ーーその後も定期的にPVをアップロードされていましたが、発信方法として映像に力を入れているのはどうしてですか?

SHOGO : KOZOはもともと映画監督になりたくて映画を作っていたし、映像に関わってるクルーに恵まれてるっていうのもあるかな。この前のボロフェスタの映像なんて、カメラ8台だからね。

KOZO : とにかく映像が好きなんだ。特にハリウッドや海外のMTVのような感じが好みさ。TRIP MENのイメージを多くのオーディエンスに伝えるには、これが一番いい方法だと思ってる。

TRIP MEN BOROFESTA 2013-I'LL BE BACK Edition-
TRIP MEN BOROFESTA 2013-I'LL BE BACK Edition-

ーー近年インディ・バンドは自主制作CD-Rなどから音源を販売スタートする傾向も強いですが、TRIP MENは今作が初になります。これまでパッケージを作成しなかった理由は?

KOZO : TRIP MENの場合曲作りにはとても時間が掛かるし、SHOGOもギタリストとしての腕をじっくり磨きあげてもらって、俺の作るトラックに負けないぐらいのギターを弾いてもらいたかった。だからやっと出すべき時が来た! って感じかな。

ーー制作当初はどんなアルバムにしようと考えていたんですか?

KOZO : サウンドを聴いただけでTRIP MENってわかる、アッパーでなおかつバラエティーにとんだ作品にしたいと思ってたね。

SHOGO : 誰もいままで京都で聴いたことのないビッグでアメリカンなサウンドさ。

90年代レイヴやR&Bのガッツあるビートにソウルを感じたんだ(KOZO)

ーー制作の際、お2人に役割分担はあるのでしょうか?

KOZO : 俺がビートを組んでからSHOGOがギターをのせるってケースが多いね。

SHOGO : そんでもって後のミックス・ダウン、全体のエフェクト処理は全部俺が担当してる。

KOZO : ネプチューンズみたいな分担制だよ。

ーー今作音作りの面で参考にしたような作品やプロデューサーがいれば教えて下さい。

KOZO : ザ・プロディジーのリアム・ハウレット、アタリ・ティーンエイジ・ライオットのアレック・エンパイア、 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの全アルバム、パブリック・エナミーのプロデュース・チーム、ボム・スクワッドにティンバランド、デスティニーズ・チャイルドのセカンド・アルバム『The Writing's On The Wall』… いっぱいありすぎて答え切れないよ!

※ザ・プロディジー : イギリスのテクノ / エレクトロ・ロック・バンド。1980年代末期のレイヴ・カルチャーをその出身基盤にもち、ロックとテクノの積極的な融合を試みることで、その先駆者として既存の電子音楽の持つ可能性を大きく押し広げた存在である。3rdアルバム『ザ・ファット・オブ・ザ・ランド』は世界的大ヒットを遂げ、1990年代におけるダンス・ミュージックの到達点、金字塔と評される。

※アタリ・ティーンエイジ・ライオット : ドイツのデジタル・ハードコア・バンド。3枚のアルバムをリリースした後、2001年にMCのカール・クラックが急死したことを受け活動を停止。2010年に入り活動を再開、同年5月に再結成ライヴを行った。

※レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン : 1990年にカリフォルニア州ロサンゼルスで結成。「レッド・ツェッペリンとパブリック・エナミーの融合」と呼ばれる特徴的なサウンドと、マルコムX、チェ・ゲバラ、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアなどから思想的影響を受けた政治メッセージを持つ歌詞が特徴。

※パブリック・エナミー : ニューヨークのロングアイランド出身のヒップホップ・グループ。ラップの世界の革新、ヒップホップとハード・ロックの融合などさまざまな変革をもたらした。2013年にロックの殿堂入りを果たす。

※ボム・スクワッド : 1980年代末を中心にパブリック・エネミーやスリック・リック、アイス・キューブなどのプロデュースで活躍したプロデュース集団。様々なサンプリングを重ね合わせ、ノイズになりかねない組み合わせからパワフルな音楽を作り出す手腕で、ヒップホップ・ミュージックに大きな影響を与えた。

ーー今作にはtofubeatsとokadadaも参加されていますが、彼らのような昨今著しい台頭を見せている若い世代のトラック・メイカーの存在はやはり刺激となっていますか?

SHOGO : ファッキン・エキサイティングに刺激になってる!

KOZO : tofubeatsくんもokadadaさんもすっげクールで音楽的に全然違う世界の人たちなのに、なぜかTRIP MENを応援してくれていてすっげぇ嬉しいね。

SHOGO : tofuくんがTRIP MENのうるさいトラックでラウドにコーラスやってるなんて誰も想像しないだろうし(笑)。

KOZO : okadadaさんのリミックスもすごく良いし、Introのスキットもいい感じに作れた。

SHOGO : okadadaさんめっちゃいい声なんだよね。

SHOGO

ーー一方でおとぎ話おとぼけビ~バ~のあっこりんりんが“HARD CANDY”にフィーチャーされていますが、彼らに参加してもらった狙いは?

KOZO : この曲は俺らの楽曲の中でもとても人気があるんだ。だって“ファッキン・ノイズ”を何度もシャウトするだろ? いつか(おとぎ話)の有馬さんが「アルバム作る時はファッキン・コーラスさせてくれ!!」って言ってたから、仲のいいブラザーおとぎ話にフーリガンみたいなコーラスで参加してもらったのさ。そして、もともとこの曲のサビは女の子が歌うイメージだったから、あっこりんりんに普段歌わないような歌い方で歌ってもらったよ。

ーーそもそも90年代初頭のレイヴ・サウンドとニュージャック・スウィングを組み合わせた音楽を2010年代に鳴らすというアイデアは、いったいどこから降りてきたのでしょうか?

SHOGO : マイアミからじゃないかな?

KOZO : お前、冗談が過ぎないか(笑)? まぁ好きな音楽をやってたら、自然とこういうサウンドになっただけだよ。

ーーこうしたサウンドはお2人にとって当然リアル・タイムな音楽ではないと思うんですが、どのように発見していったんですか?

KOZO : 音楽に興味を持ったきっかけがYMOでね。その繋がりにある音楽を聴いていったら自然とたどり着いてたよ。

ーーいまの音楽にはないどういった魅力を感じていたのでしょう?

KOZO : ガッツのあるビート感やグルーヴ、なんかうまく言えないんだけど、いろんな意味でソウルを感じたんだよ。

ーーレイヴやハードコア・テクノ、ニュージャック・スウィングや90年前後のブラック・ミュージックでそれぞれオールタイム・フェイバリットと言える楽曲をいくつか挙げてください。

2人がセレクトした楽曲はこちら!

The Prodigy「Out Of Space」
The Prodigy「Out Of Space」
GUY「TEDDY's JAM」
GUY「TEDDY's JAM」

Aaliyah「One In A Million」
Aaliyah「One In A Million」

KOZO : もう亡くなってしまったけれどアリーヤは大ファンなんだ。今作の「Romeo Must Die」って曲は同名の映画に出てる彼女にインスパイアされてできた。

SHOGO : 歌詞も天国にいるアリーヤに向けて書いたんだ。

KOZO : TRIP MENに興味を持ってくれた人たちがアリーヤを聴いてくれるといいな。

このアルバムを聴けばTRIP MENがガチのグループっていうのがわかると思う(SHOGO)

ーーレイヴ自体の一発屋は時代の徒花と見られることがありますし、バンド・シーンでいまこうしたサウンドを探求しているアクトは皆無と言っていいと思います。お2人のなかで音楽的方向性を定めるにあたって、ためらいや不安はなかったのでしょうか?

SHOGO & KOZO : 全くなかったし、いまもないね!

ーーでは、現実にTRIP MENの本質とは関係ないところで、どこか色眼鏡をかけて見られてるんじゃないかと感じることはありませんか?

SHOGO : そう感じる時も時々ある、俺たちの事をただのチャラくて軽い奴らみたいなね。誰かの感想でB'zをチャラくしたぶち上げ系ユニットってのもあったよ(笑) !

KOZO : それはいろんな意味でおもしろいな。でも、そんな事いちいち気にしてたらTRIP MENなんてやってられないよ!

SHOGO : このアルバムを聴けばTRIP MENがガチのグループっていうのがわかると思う。音楽に関してはいつも真剣に取り組んでるし。

ーーこれまでライヴを度々見てきて、TRIP MENというユニットは色物とは真逆、実は向上心の塊なのではという印象を受けています。実際日々のワークには熱心に力を注いでいるのでしょうか?

SHOGO : ギターを磨く頻度は誰にも負けないと思うよ。

KOZO : あんまり教えたくないけど、ライヴの時の運動量が半端ないから、スタミナ付けるために爆音であゆ(浜崎あゆみ)を聴きながらランニングしたり、あとは部屋でライヴの時のイメージ・トレーニング。これは俺が子供のころ『学校へ行こう』ってテレビ番組に出てた時から続けてて、毎日これをしないと気がすまないんだよ。

ーーライヴ・パフォーマンスにおいて自分たちの強みだと自覚しているところ、逆にまだまだパワー・アップしていかねばならないと感じているところをそれぞれ教えて下さい。

SHGO : 強みは誰にも負けないスピード感とエンターテイメント性だね。パワー・アップしていかなきゃいけない点は「TRIP MENは深夜12時を過ぎてからだね」ってよく言われるんだけど、深夜じゃなくても違和感のないテンションでもライヴできるようになることかな。

ーー『I'LL BE BACK』というアルバム・タイトルはネタのようでいて、この1枚で終わるユニットじゃないという本気のスタンスを表しているように感じました。今作以降はどのような活動で存在感をさらに高めていこうと考えていますか?

SHOGO : いままでは関西圏を中心にライヴして来たけど、これからはこのアルバムを引っ提げて関東、全国、海外とできるだけいろんな場所でライヴしてみたいね。

KOZO : やっと俺らの名刺が出来た! って気持ちだし、いままで絡んでないような人たちとも対バンしたいし、一度だけでもデッカいアリーナでライヴしたい。1万人以上のオーディエンスと一緒に中指立ててファッキン・ノイズできたら最高だね。あと、このCDをカリフォルニアに住んでるアーノルド・シュワルツェネッガーに聴いてもらいたいな。アルバム制作中は『ターミネーター』のサントラにエナジーをもらってたんでね!

RECOMMEND

おとぼけビ~バ~ / 目撃! ラブミ~・サイン

再録2曲を含む、バンド結成から現在までの“今”が詰まった9曲入りミニ・アルバム! 2枚のEP、ライヴ・アルバム、限定EPに次いでの作品にあたり、全国流通盤としては「今夜限りなんて絶対に言わせないっ!」に次ぐ2枚目、1年3ヶ月振りのリリース! マスタリングはゆらゆら帝国、どついたるねんなどを手掛ける中村宗一郎が担当!

tofubeats / lost decade

君は知ってるかい? 踊らな死ぬことを。神戸郊外発インターネット経由、これが2013年のポップ・ミュージック! 過去多くのフリー・ダウンロード作品や、ビッグ・ネームとのリミックス・ワークで世間を賑わせてきたtofubeatsが22歳にして遂に待望のファースト・アルバムをフィジカル・リリース! 神戸から放たれた2012年最大のヒップホップ・アンセム「水星 feat. オノマトペ大臣」、2013年最初のシングル「夢の中まで feat.ERA」はもちろん、SKY-HI、南波志帆、G.RINA、PUNPEE、仮谷せいら、オノマトペ大臣といった豪華ゲストを招聘した新曲も収録! 最新のクラブ・ミュージックからディスコ、90sポップスへの愛あるオマージュまで、神戸からインターネットとポップを経由して届けられる17曲! これが完全に次世代のポップ・スタンダードです!

特集ページはこちら

msc / MATADOR

B-BOY PARKの絶大な話題性と人気を誇るMC BATTLE2002年で般若を決勝で見事に下し優勝したKAN率いるMS CRU改めMSCの1stフル・アルバム。地元、新宿・高田馬場界隈を拠点に活動する彼らのラップの特徴は、この街で日々繰り返される暴力や性に関するハードでショッキングな現実を非常にリアルに表現している点。そのような描写からは、ヒップホップにありがちな「不良性」のアピールよりも、このような状況をなんとか生き抜いていこうとする強い意志が感じられ胸を打つ。DJ BAKUや志人ら次代を担うアーティストもゲストとして参加した注目の1枚。

LIVE INFORMATION

I'LL BE BACK release Party
2014年1月11日(土)@京都METRO

PROFILE

TRIP MEN

2010年、カナダのトロントで出会ったSHOGOSTARTERとKOZO PUNISHERが京都中心にライヴ活動開始。BreakBeats、Techno、R&Bなどをミックスした幅広いトラックと、アッパーで、時に哀愁を感じさせるギターとの組み合わせはライヴ・イベント、またはクラブ・イベントまで縦横無人に渡り歩く。

>>official website

この記事の筆者

[インタヴュー] TRIP MEN

TOP