同郷シカゴのトラックスマンや、RPブーなどジューク・シーンの重要アーティストが、次々とアルバムをリリースするなか、そのネクスト・ジェネレーションの筆頭、DJラシャドのファースト・アルバムが、ダブステップの流れを牽引してきたレーベル、ハイパーダブから、リリースされることとなった。多くの主要音楽メディアが発売前から、高い期待をよせてきたが、それを裏切ることなく、ジュークという枠組もこえて、現在のダンス・ビートの最前線に躍りでたサウンドといっても過言ではないだろう。日本リリース・ヴァージョンでは、過去シーンにてアンセム級のクラシックとなりながら正規リリースされていない「Reverb」が収録されている。本作を、日本で早くからジュークのトラック・メイカーとして活躍しているD.J.G.O.(Booty Tune)が紹介する。

DJ RASHAD / DOUBLE CUP
【配信形態】
WAV まとめ購入 2,000円 / 単曲 250円
MP3 まとめ購入 1,500円 / 単曲 200円

【収録曲】
01. Feelin (DJ RASHAD feat Spinn & Taso)
02. Show U How (DJ RASHAD feat Spinn)
03. Pass that Shit (DJ RASHAD feat Spinn & Taso)
04. She a Go (DJ RASHAD feat Spinn & Taso)
05. Only One (DJ RASHAD feat Spinn & Taso)
06. Everyday of my Life (DJ RASHAD feat DJ Phil)
07. I Don't Give a Fuck (DJ Rashad)
08. Double Cup (DJ RASHAD feat Spinn)
09. Drank, Kush, Barz (DJ RASHAD feat Spinn)
10. Reggie (DJ Rashad)
11. Acid Bit (DJ RASHAD feat Addison Groove)
12. Leavin (DJ RASHAD feat Manny)
13. Let U No (DJ RASHAD feat Spinn)
14. I’m Too Hi (DJ RASHAD feat Earl)
15. Reverb (DJ Rashad) ※日本限定収録曲

スピーカーから煙ふくほどの音圧で楽しいんでいただきたい(D.J.G.O.)

DJラシャドとは? 簡単に説明すると、巷を騒がすダンス・ミュージック、ジューク / フットワークの代表的なトラック・メイカー兼DJ。CDでのリリースは今までなかったけど、データでリリースしまくってるベテラン選手。インタヴューでは、10代のころからキャリアをスタートしたと語ってる。ゲットーの生え抜きですわ。最近はヨーロッパに遠征する機会も増えて服装が垢抜けましたね。すこし前までROCAWEARとかホッケー・ジャージでキメてたんやけどな。いなたい感じがよかったんやけど、誰だっておしゃれしたいもんな… しゃーないです。ヨーロッパ遠征効果は服だけやなくて、音楽も強靭にアップデートされているんですわ。初期の作品でよくみられた、高速の4つ打ちスタイルから、ディープなフットワーク・トラック、ヨーロッパ・シーンを意識したジャングル風味が、この1枚にぎっちり詰めこまれてますわ。おまけに、日本限定でM15「Reverb」!! 門外不出のバトル・トラックです。ぜひとも、スピーカーから煙ふくほどの音圧で楽しんでいただきたい。


DJ Rashad「I don't Give A Fuck」

余裕で今年の1等賞ですね。どれくらい余裕かちゅうたら、九九の1の段くらいの余裕ですよ。収録曲すべて、1曲のなかでめちゃめちゃビートのパンチ・ラインが多いんですよ。全15曲、長くて4分、ほとんど3分ちょいやけど、ごっつい密度でアイディアがつまってますわ。ヴォイス・サンプル、曲のテーマになるサンプリング・ソース、ドラムの各パートの抜き差しやパターンの変化、諸々のタイミング。単純なコピー & ペーストでは作りだせないグルーヴです。プッシーとブーティーだけの音楽やとおもってたら大間違いやで!! 全体をとおして尋常じゃないレヴェルのトラック・メイクなんですが、今回のアルバムの目玉は、ヨーロッパ遠征で覚えたジャングルのスタイルと、シカゴ・スタイルをブレンドした曲ですね。M11「Acid Bit (DJ RASHAD feat Addison Groove)」なんかその最たる例ですわ。エイリアンVSプレデター、力也にホタテくらいの相性でっせ。アシッドとジャングルて、うちらボンクラがよろこばんはずないやん! 焼き肉のあとの抹茶アイスのごとく、メロウなソウルネタにデトロイトっぽいシンセをからませたオシャレ・トラックまで!! (低い低いベースが鳴ってるけど)。除夜の鐘の音鳴るまでこの1枚でいけまっせ!


ラシャドが少年時代に所属していたハウス・ダンス・クルー「ハウス・オー・マティック」に捧げたDJディーオンのトラック

少々鼻息が荒くなってしもたんで、気持ちをニュートラルにすべく少し昔話をします。さかのぼること30年くらい、ヒップホップとハウスが一般的なストリートの音楽やったみたいなんですよ。ほんで、両方ともそんなに遠い畑でもなかったぽい。当時のサウンドを聴くと両ジャンルとも、アパッチやホット・パンツなどのブレイクビーツの使用や、使用機材(AKAI、エンソニック、ROLANDのドラム・マシーンやサンプラーなどなど、きりがないから割愛)にも近似性が容易にうかがえますわ。どヒップホップ・レーベル、タフ・シティのサブ・レーベル、スモーキンはハウス・レーベルやし、ナーヴァスとエイト・ボールとかね。シカゴ・ハウスのオリジネーター、ジェシー・サンダースやヴィンス・ローレンスは、ヨーロッパでハウスがはやりはじめても自分たちのことをR&Bアーティストだといってたそうな(最後のヒップ・ハウサーD.J.Maesakaのブログより)。
ジュークてね、そういう感覚がそのまんま残ってる音楽なんですよ。カテゴライズ未然のエネルギーちゅうか、闇鍋ちゅうか。こないだまでマーケットの外にいたひとらが、自分らの音楽で世界のダンス・ミュージック・シーンに揺さぶりをかけてんよ。リリース元、世界のハイパーダブでっせ!? ちょっと前やったら考えられへん条件ですよ。もし、ひっくりかえったら痛快やん? アメリカのここ10年のヒップホップ事情がいい例やとおもいます。いまのヒット・チャートを席巻するスタイル(808ベース、打ち込みサウンド、バウンス云々… )は、ずっとアメリカのローカル・シーンではおなじみのものやったんですけど、むかしは「ヒップホップではない」とさえいうひともいましたわ。邪道やと。ほんで気づいたら、バカにされてたローカルのスタイルが、ジャジーで渋い90年代の東海岸スタイルにとってかわったんですわ。これ、ジュークもありえない話やないですよ。なににとってかわるのか、全然わかりませんけど。マジで可能性ありまっせ。(D.J.G.O.が音楽の稼ぎで区民税払える可能性とか)。(text by D.J.G.O.)

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Traxman / Da Mind Of Traxman

ジューク / フットワークのゴッドファーザー、トラックスマン(リリース当時、42歳)のデビュー・アルバム。シカゴに脈々と受け継がれるハウス・ミュージックのソウル、ベース・ミュージックのスピード感、ビート・ミュージックの脱臼感、テクノのミニマル感、ヒップホップのネタ感まで、20年以上のキャリアを誇るベテランの“技”と“幅”が織りなす最狂のブラック・マシーン・ミュージック・アルバム。来日時、DJ中にトイレにいってました。

RP Boo / Legacy

こちらもジューク / フットワークの重要人物、RPブーのデビュー・アルバム。RPとはレコード・プレイヤーの意味だそうです。DJを超越してるという意味かもしれません。ダンス・バトルのせめぎ合いから生みだされたシカゴ史上最狂の辺境ビートがてんこもりのアルバムです。このひと、奥さんが美人なんですよ。(そろそろ来日するそうです)

Machinedrum / Vapor City

マシーン・ドラムことトラヴィス・スチュワートのNinja Tune移籍第一弾作品。アルバム・タイトルは、これまで何度も夢で見たという大都市に由来。その都市の一区画を表現するというコンセプトのもと各トラックが制作されたという。シーンを席巻しはじめたポスト・ダブステップ~ジューク以降のジャングル再燃というトレンドを見事にとらえながら、ポップとドープを絶妙にブレンドした会心作。

PROFILE

シカゴ・ゲットー・ハウス黎明期より活動を続けるDJ / プロデューサー。Planet μからのリリースで2012年ここ日本ではトラックスマンがブレイクをはたす一方、DJラシャドはヨーロッパでキング・オブ・ジューク/フットワークとしてその名を轟かせ、コード9やアディソン・グルーヴをはじめ多くのUKベース・アクトに影響をあたえ、現在のハイブリッドなダンス・ミュージックのトレンドを左右する最重要アーティストのひとりとなった。その世界的評価が高まるなか、2013年にはHyperdubと契約をはたし、3月には「Rollin」EPをリリース。ブラック・ミュージックからドラムンベースやテクノ、ハウスまであらゆるジャンルへの接続をおこない、さらなる賞賛を浴びた。2013年夏Pitchfork Festivalをはじめ多くのフェスへの出演をへて、10月には満をじして待望のオリジナル・アルバム『ダブル・カップ』をリリース。

豆知識 : 初めての音楽体験は、学校のブラス・バンド。小学校5年生から中学2年生まで続けていたという。

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