2014/11/18 19:17

cero、片想いにつづく東京インディ・ポップ・シーンの新世代、ふるえるゆびさき。彼らがセカンド・アルバム『続きをきかせて』を2013年8月26日にリリースした。

ファースト・アルバムをリリース後、ふるえるゆびさきのメンバーはそれぞれ気ままな海外放浪へ。そしてつくられたセカンドには、ベトナム、タイ、トルコ、フィリピン、フランス、オーストラリア、インド、そして東京。その土地で見た景色、嗅いだにおい、聴いた音が詰め込まれた。各々の土地のざわめきのように管楽器も打ち込みもいろんな音が鳴っているのに、どこか遠くひっそりと鼓膜を揺らす。そんな新世代の音楽を届けるべく、フリー・ダウンロードにて「一人旅」をお届けします。

それだけではなく、なんとふるえるゆびさきのリーダー、鰐川翔伍は、シーンは異なるがこちらも新たな風を吹かせているTHE OTOGIBANASHI'Sのbimが中学時代の同級生。これはおもしろい組み合わせ! ということで、ふるえるゆびさきの"続き"をたのしみにするあいだ、ぜひ一度目を通してほしいスペシャル対談の実現です。

>>「一人旅」のフリー・ダウンロードはこちらから<<

ふるえるゆびさき / 続きをきかせて

【価格】
mp3 単曲 100円 / まとめ購入 500円
WAV 単曲 120円 / まとめ購入 700円

【Track List】
01. 遠くの方へ / 02. 一人旅 / 03. プロペラ / 04. ベトナムでわしも考えた / 05. あるべきすがたかたち / 06. 恋の予感 / 07. 田舎道

THE OTOGIBANASHI'S / TOY BOX

【価格】
mp3 単曲 150円 / まとめ購入 1,500円

【Track List】
01. "OPENING" / 02. K.E.M.U.R.I. / 03. Froth On Beer / 04. "LUNCHTIME" / 05. Pool /
06. Gana Gana Ganda / 07. Humlet / 08. Fountain Mountain / 09. "DINNERTIME" / 10. Closet / 11. Dawn / 12. "ENDING" / 13. Under The Bed

INTERVIEW : 鰐川翔伍(ふるえるゆびさき)×bim(THE OTOGIBANASHI'S)

左から鰐川翔伍(ふるえるゆびさき)、bim(THE OTOGIBANASHI'S)

東京のインディーズ・シーンが活気付いている…… という言葉を今年、何度聞いただろう。2010年を起点に勃興した、ローカルな音楽としての東京のシーンに、2013年、もう何度目かのキラキラとしたエピックな瞬間が訪れている。今年4月にリリースされたTHE OTOGIBANASHI'Sのファースト・アルバム『TOY BOX』、次いで8月にリリースされた、ふるえるゆびさきのセカンド・アルバム『続きをきかせて』も、可能性と希望に満ちた未来を予感させるマイル・ストーンとしてそれぞれ求められる場所で輝いている。

今回、OTOTOYでは、ふるえるゆびさきの鰐川翔伍と、THE OTOGIBANASHI'S bimの対談取材を行った。ヒップホップ・グループとバンドという違いはあれど、2013年の日本の音楽シーンの最前線で闘う平成生まれのミュージシャンであり、中学時代の「マブ」でもある2人に、彼らのバックグラウンド、そして、音楽のいまについて話を聞いた。

インタヴュー&文 : 小田部仁

鰐川 : 嫌われてたんだ(笑)。 bim : そんなことないよ!(笑)

――おふたりは中学校の同級生だったそうですね?

bim : でも、同じクラスとかではなかったよね。なんで、仲良くなったんだっけ?

鰐川 : 元々は同じ仲間グループにいたんだよね。サッカー部とか野球部とかスポーツやってるって感じの奴らで集まってて。そのなかに俺もbimもいたって感じ。

鰐川翔伍(ふるえるゆびさき)

――いわゆる、「やんちゃ」してる感じの仲間だったんですか?(笑)

bim : そうそう。どっちかといったらそんな感じ(笑)。でも、鰐川と音楽の話とかは全然したことなくて。っていうか、中学のときは普通の友達とそんなこと話したことなかったんすよ。

鰐川 : 俺らが中3でバンドをはじめたときも、bimは「…… ふーん」って感じで(笑)。

bim : 学校で友達と話すにしても、洋服の話とかだったかな…。

――お互いにはどんな印象を抱いてたんですか?

bim : 鰐のことは「うるせえヤツがいるな」って思ってました(笑)。

鰐川 : 嫌われてたんだ(笑)。

bim : そんなことないよ!(笑)

鰐川 : bimには、中学のときからすでにすごくオシャレなイメージがありましたね。俺らがそのころ聴いてた音楽とか、やってた音楽って青春パンクみたいな青臭い感じのやつだったんですけど、bimはそういうのには興味なさそうだったよね。

bim : あんまり友達と音楽の話をするってことはそんなにはなかったんだけど、例外的に俺と鰐の共通の友達に、アツキっていうヤツがいるんですけど、そいつとは音楽の話してたかもしれないですね。そいつはジャパニーズ・レゲエをよく聴いてて。俺はヒップホップを聴いてたんで、お互いに教え合ったりしてましたね。

鰐川 : 中学のとき、俺はずっとアツキと同じクラスだったんですよ。そういう共通の友人がお互いを実は結びつけてたってのはあるかもしれません。

bim : あ、ちょっと話し変わっちゃうんですけど。俺らのアルバムのマスタリングをしてくれたエンジニアさんの後輩が、実は俺らの学校の先生だったりしたんですよ(笑)。ラップやってたらしくて。今度挨拶しにいこうかとか思ってるんですよね。

bimは、聴いてる音楽とか俺らには教えてくれなかったんですよね。

――へぇ、実は身の回りに今の音楽活動に関係のある人がちょこちょこいたんですね。中学校以前、そもそも最初に音楽に興味をもったきっかけって覚えてます?

鰐川 : あんまりパッとは思いつかないんですけど、やっぱり小学校のときの先生の影響ですかね。その先生はブルーハーツに関係があった人らしくて、小学校の教室でずっとパンクを流してたんですよ(笑)。それがすごくいいなと思って、CDを買った記憶がありますね。

bim : 俺は小学校のときに放送委員会に入っていたんですけど、そこで流した曲をみんながおもしろがって聴いてくれたのが原体験ですかね。当時、普通にTVから流れてくるような音楽にはさして興味はなくて…… あと、なんとなく覚えているのは、家族で沖縄旅行に行ったときに、たまたま音楽フェスが泊まったホテルの近くでやっていて、そこにTHE VENTURESとTHE BOOMが来てたんですよ。で、そのときに聴いたTHE VENTURESが凄くカッコ良くて…… 廊下ですれ違ったりもしたんですけど(笑)。

bim(THE OTOGIBANASHI'S)

――bimさんがヒップホップに興味をもったきっかけはなんだったんですか?

bim : 俺、中学のころとか自分のことめちゃくちゃイケてるやつだと思ってたんですよね。みんなが聴いてるものとか「へっ」と思っていて「俺が一番カッコいいもの知ってるぜ」って。

鰐川 : bimは、聴いてる音楽とか俺らには教えてくれなかったんですよね。

bim : みんなと違うものを聴きたいと思っていて。それを前提に音楽を掘ったときに、ヒップホップに辿り着いたんですよね。

鰐川 : 俺らが中学のときに聴いてる音楽とかに対して、何にもコメントせずに、1人でニヤニヤしながら好きな音楽を聴いてるイメージがありましたね。そういうbimの態度を俺は「カッコいいな」と思いながらも「なんで教えてくれねえんだよ!」って憤ってましたね(笑)。

――当時、音楽の他に影響を受けていたものってあります?

bim : すごくスケーターが好きだったんですよね、俺らができないことをやってんのがカッコいいって思ってました。スケボー自体は何時間も練習したんだけど、全然うまくなんなくて(笑)。あとは、サンフランシスコのピストのシーンとかはカッコいいって思ってましたね。それから、NIGOさんやSKATE THINGさんとかがやってた、A BATHING APEには影響をうけましたね。高校のときにみた番組のなかで、NIGOさんが、USのビッグ・アーティストとかと仲良くしてて、人と違うことやってんのはすげえなって。

鰐川 : なんか、bimの話を聞いてると、中学のときは自分たちの延長線上にいた気がしたのに、全然違うものをみていたんだなと思って、物悲しくなってくるよ……(笑)。 俺は、マキシマム ザ ホルモンとか聴いてたんですよね。同じ時代や環境に生きていたのに、ここまで違うのかなぁって思うなぁ…。

bim : 俺もホルモンは聴いてたよ。でも、ヒップホップとかの話ができる相手が単純にいなくて。ラップが好きとか言うと「YO-YO」とか言われて、バカにされるし、そういうことがあるから無理して、友達に「俺はヒップホップが好きだ」って言う意味がなかったんですよね。

鰐川 : いやぁ、俺なんか、ただサッカーが好きみたいな感じだったから、中学までの記憶はなかったことにしたいなぁ……(笑)。

俺らがそのときにみていた世の中と実際の世の中のあり方って実際はかなり違ったんじゃないかな

――おふたりが、音楽活動を本格的にはじめようとした時期はいつなんですか?

bim : 高校2年生ぐらいのときからちょこちょこ仲間とやったりはしてたんですけど、いまのメンバーとかを誘ってやりはじめたのは、部活を引退した後、高3からですね。その後は、曲を作ったり、本格的にPVを作ったりしてました。

鰐川 : ふるえるゆびさきの前にもバンドはやってたんですけど、いまの形になったのは僕らも大体、同じころですかね。当時のメンバーは全員同じ大学の付属校の生徒だったんで、大学行くまでのすることのない期間を利用して。

――例えば、僕らが音楽の原体験を得た時期って、まだまだJ-POPってものが元気だったと思うんですけど、そのころの音楽に対する思いとかってあんまりおふたりからは感じられませんね?

bim : 最近よく考えるんですけど、俺らがそのときにみていた世の中と実際の世の中のあり方って実際はかなり違ったんじゃないかなと思うんですよ。宇多田ヒカルがTVでいっぱい流れていようが、なにしてようが、そこに興味がいくような状態に、俺らが単純に達していなかったんですよね。ポケモンとかベーブレードの方が好きだったし。

鰐川 : 僕もそれは思いますね。もし、そのときにきちんと体験していたら「影響受けていたのかもなぁ」とか、いまとなっては「とりこぼしちゃったのかもな」とか、僕は思っちゃうんですけど……。ただ冷静に考えると、それは俺らがそのとき見ていた世界にはなかったんですよね。そのころにも、無意識的に「原体験」ってあるっちゃあるんだろうけど、ないことにしたほうが、いまは楽な気がしてます。 

――THE OTOGIBANASHI'Sもふるえるゆびさきも、自分たちで作品のプロダクションを手掛けていますよね?

鰐川 : 音源の製作だけじゃなく、ジャケのデザインとかも自分たちでやっているんですけど、そういうふうに自分たちで作った手作りのものを北海道の人とかも買ってくれているっていうのが単純におもしろいですね。bimはPVの監督とかもやってるんだよね?

bim : うん。

THE OTOGIBANASHI'S / Fountain Mountain
THE OTOGIBANASHI'S / Fountain Mountain

鰐川 : THE OTOGIBANASHI'Sのそういう自由さがいいなぁって思っていて。SUMMITっていうレーベルに所属しているのに、すごく自由にやってる。しかも、人に頼むこともできるんだけど、全部自分たちでやってる。THE OTOGIBANASHI'Sの曲を聴いていると、きちんとストーリーがみえて、アトラクションを体験しているような気分になる。俺らも、そういう感じを出したいと思ってやっているんだけど、なかなかそうもいかなくて。俺らはそういうTHE OTOGIBANASHI'Sの感じに憧れているところもあるな。

新しいものは、やりづらいかもしれないんですけど、オリジナルなものは作れると思う

――THE OTOGIBANASHI'Sもふるえるゆびさきもヒップホップとかトーキョー・インディーみたいな大きなシーンのなかにくくられることも多々あるわけですけど、そんななかで、オリジナルな表現っていうものについてはどんなふうに考えていますか?

bim : 中学とか高校のときは自分が好きなものが1番イケているっていう自信があったんですよ。で、いまでも少しはその自信が残っているのかなって思っているんですけど……。俺は、カッコいいものを一からつくり出すっていうよりも、色んなところからそれをサンプリングしているだけだと思っているから。それが、新しい表現になっているなら「よかった、よかった」って感じ。

鰐川 : サンプリングしているっていう感覚って、俺らのなかでもあって。自分がカッコいいと思った部分を抽出してつくり出したものを「いいな」って思ってもらえるっていうのはうれしくて。今回のアルバムでは、海外のフィールド・レコーディングで録った素材や好きな映画の音源を使ったりもしたんだけど。あとはもちろん、古い音楽からネタをひっぱってきたりもしていて。元ネタをわかっている人に「これ、ここからもってきたでしょ?」とか言われると「あ、そうです」って気まずくなるんじゃなくて「そうなんですよ!」って話したい気分になるんです。

ふるえるゆびさき / WATANUKI RHAPSODY〜プロペラ@下北沢mona records
ふるえるゆびさき / WATANUKI RHAPSODY〜プロペラ@下北沢mona records

bim : でも、俺のなかでのサンプリングって、鰐が言っているようなことじゃないのかもしれない。むしろ、音源そのものっていうよりは「雰囲気」とかなんですよね。お客さんには伝わっていないのかもしれないんだけど。そういうモノの作り方しかできないんですよね。

鰐川 : 新しいものは、やりづらいかもしれないんですけど、オリジナルなものは作れると思うんですよ。俺ら、ふるえるゆびさきは、はっぴいえんどやceroも好きですけど、1個のバンドとして鳴らしているものは、俺らのオリジナルな音だし。その感覚がなくなったら、俺はやる気がなくなっちゃうから「オリジナル」って言いたいんですよね。別に「~フォロワー」っていわれるのも光栄だしうれしいんですけど。

bim : う~ん。新たなシーンとかサウンドとかは、もうすでにできちゃってるしな……。俺がとんでもない天才だったら「やってやろう!」って気分にもなると思うんですけど、いまはむしろそういうことよりは、モノを作るときに「俺、こういうの好きですけど、良かったらどうぞ」っていう感覚の方がおもしろいと思っている。別に俺的には「オリジナルを生み出してるぜ!」っていう感じではやってないんですよ。いまあるものを使って、どういうふうに聴いた人にビックリしてもらうかっていうのを考えています。……でも、単純にやっていて楽しいっすね、ラップ。

――お二方とも、すばらしいアルバムを作り上げたわけですけど、今後の展望とかってなにかありますか?

鰐川 : ふるえるゆびさきはみんな旅好きで、大体11カ国ぐらいこれまで旅しているんだけど、そんなわけで、セカンド・アルバムでは、旅にまつわるアルバムをつくりたいと思ってやってたんです。でも、それをやっと作り終えたら、いまは抜け殻みたいになってしまって。次はコンセプチュアルなこととかはなにも考えずに、宅録で作っていきたいと思っています。今年中にできたら良いなぁ。

bim : もっと、ヒップホップにしたいなって思ってます。前にインタヴュワーの人に「ヒップホップっていうスタイルをつかって別のものを作ってるみたい」って言われたことがあって、それがすごく悔しかったので。前回作ったものの延長線上のようなかたちで、それをもう少し深めたものを作りたいと思っています。いろいろ作っているのが楽しいから、抜け殻になっている暇ないんです(笑)。

鰐川 : すごいアーティスト然としているなぁ(笑)。 俺らは生活の一部になっちゃってるからなぁ。これから、気を引き締めて行きたいと思いますね(笑)。

Live information

ふるえるゆびさき
2013年11月29日(金)@下北沢monarecords

THE OTOGIBANASHI'S
2013年10月17日(木)@下北沢THREE
2013年10月18日(金)@原宿ラフォーレ
2013年10月20日(日)@恵比寿BATICA
2013年11月8日 (金)@代官山UNICE
2013年11月17日(日)@高崎WOAL
2013年11月24日(日)@代官山LOOP
2013年11月27日(水)@新代田FEVER
2013年11月29日(金)@恵比寿KATA
2013年12月5日 (木)@恵比寿BATICA
2013年12月22日(日)@原宿ラフォーレ

PROFILE

ふるえるゆびさき

2011年の終わりごろに結成。 都会に生きるやるせなさをひた隠し、どこか遠くの方への思いを馳せながら、今日と明日の隙間に生きている。 2012年に自主制作のファースト・アルバム『一回映画終わったあと』を発売。 各々のメンバーによる気ままな海外放浪の果てに、2枚目のアルバムとなる『続きをきかせて』が完成。2013年8月26日から全国流通開始。

THE OTOGIBANASHI'S

bim、in-d、PalBedStockの3MC'sから成る日本のRAPグループ。
bimの呼びかけでin-d、PalBedStockは嫌々ながら2012年に結成。グループのコンセプトは
「Dis○ey & Rap」
という自由でアホらしいものである。愉快犯のようにバラエティに富んだトラックや3人独自のフロウから、まるでオモチャ箱から飛び出してきたかのような曲を生み出す"THE OTOGIBANASHI'S"の物語はまだ始まったばかりのようだ。

この記事の筆者

[インタヴュー] THE OTOGIBANASHI'S, ふるえるゆびさき

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