2013/10/12 00:00

デビュー作『卒業と、それまでのうとうと』が各メディア、ジャンルを越えて話題となった女性ラッパー、泉まくらが、待望の1stアルバムをリリース。前作リリース以降、くるり主催「WHOLE LOVE KYOTO」出演やパスピエとのコラボ作品『最終電車』をリリースするなど大きな注目のなか、さらに成長した証がアルバムにおさめられています。EVISBEATS、ハシダカズマ (箱庭の室内楽)、MACKA-CHINなど、様々なプロデュース陣を迎えながら描かれた、泉まくらの世界を存分に味わってみてはいかがでしょう。

泉まくら、待望の1stフル・アルバムを配信開始

泉まくら / マイルーム・マイステージ
【配信形態】
wav / mp3

【価格】
単曲 200円 / まとめ購入 1,800円

【Track List】
1. マイルーム・マイステージ
2. candle pro.by nagaco
3. 棄てるなどして pro.by EVISBEATS
4. ワンルーム pro.by YAV(MadSoma)
5. あたらしい世界 pro.by ハシダカズマ (箱庭の室内楽)
6. 真っ赤に pro.by MACKA-CHIN
7. Dance? pro.by kyoka
8. ドレスを着る前に pro.by Fragment
9. 東京近郊路線図 pro.by Sugar’s Campaign (Seiho × Avec Avec)
10. 君のこと pro.by nagaco

前作よりもちょっぴり大人になった女の子と、泉まくらの多才さ

日常がうまくいかなくても、同棲していた恋人が出ていってしまっても、自分にはマイ・ルームという居場所がある。外部をシャットアウトし内省的になってみると、次へ進むきっかけが掴めるはずだ。泉まくらの新作『マイルーム・マイステージ』は、そのような困難を乗り越えたいすべての人に贈られた、音楽のビタミン剤だ。

福岡県在住、メランコリックなトラックに乗せてラップする女の子、泉まくら。デビュー作『卒業と、それまでのうとうと』で女の子にうずまく嫉妬心、モラトリアムやエッチな気持ちを躊躇なくさらけ出し話題を呼んだ。イラストレーター・大島智子のイラストとともにつづられたリード曲「balloon」のPVはあまりにもリアルで、その衝撃に心を痛めたリスナーも多いだろう。他にもくるり主催フェス「WHOLE LOVE KYOTO」への出演や、パスピエの楽曲にラップを加えた限定コラボ・シングル「最終列車」が完売するなど注目を集めている。その流れからリリースされた本作もやはり嫉妬やモヤモヤを増幅させた作品になるのではないか予想していたが、いい意味で裏切られることとなった。”部屋”という内省的なアイテムを用いりながらも、ポジティヴな耳触りで女の子の共感ひとつひとつを掬い取って代弁してくれるので、心がじわじわと温まっていくのを感じる。

なんといっても驚いたのはその歌声だ。独り言に似た淡々とした歌い方は、優しく肌を撫でるかのようなすらっとしたものに変化。<揺らしてよ 溶かしてよ いいよ>から始まる「candle」の歌声からは、これまでのモラトリアムさえも包み込むかのような自己肯定と博愛に満ちている。EVISBEATS、fragment、ハシダカズマ(箱庭の室内楽)ら豪華プロデューサー陣が作り出した他の楽曲たちも、表現の幅をさらに増幅させている。前作では〈卒業〉、今作では〈失恋休暇〉なんてワードも飛び出し、前作よりもちょっぴり大人になった女の子と、泉まくらの多才さがうかがえる。

しかし、いくら表向きが可愛らしくとも、成長したように感じられても、女の子の本性はわからない。この作品も、実は裏で腹黒い感情がうごめいているのではないだろうかと予想してしまうのは私だけだろうか。そんな思いがぐるぐると巡ってしまうくらい、泉まくらの描く”女の子らしさ”は気まぐれで未知数。男の子はエスコートするような気持ちで、女の子はガールズ・トークするような感覚で寄り添って聴いてみてほしい。「この部分って、実はこう言いたいんじゃない?」と思わず議論してしまいたくなるはずだ。(text by 梶原綾乃)

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PROFILE

泉まくら

福岡県在住。2012年、術ノ穴へ所属し同年発表されたデビュー音源『卒業と、それまでのうとうと』が各メディアで話題となり、くるり主催「WHOLE LOVE KYOTO」出演やパスピエとのコラボ音源『最終電車』リリースなど大きな注目を集めてている。2013年6月配信限定E.P.『candle』リリース。年内に待望の1stアルバムをリリース予定。

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この記事の筆者

[レヴュー] 泉まくら

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