ダイナソーJrのベーシスト、ルー・バーロウ率いるセバドーが、通算8作目となる、14年ぶりのニュー・アルバム『Defend Yourself』をリリース。94年の『ベイクセール』以来となるセルフ・レコーディング作品となる今作。常にオルタナティヴの現場で音を鳴らし続けてきただけあり、その音はブランクなど一切感じさせない。貫録という言葉で表すのも野暮なほど、スタイルを貫き通すエモーショナルなサウンドに耳を傾けていただきたい。
Sebadoh / Defend Yourself
【価格】
WAV、mp3ともに 単曲 200円 / まとめ購入 1,500円
【Track List】
1. I Will / 2. Love You Here / 3. Beat / 4. Defend yr Self / 5. Oxygen / 6. Once / 7. Inquiries / 8. State of Mine / 9. Final Days / 10. Can't Depend / 11. Let It Out / 12. Listen / 13. Separate
時代の流れなど関係ない
90年代初頭、80年代に流行していた商業的な音楽に対してのカウンター・カルチャーとして生まれたオルタナティヴと呼ばれる音楽シーン。オルタナティヴという言葉はいまとなっては曖昧な言葉になってしまったが、90年代当時のオルタナティヴとは「代わりになるもの」という意味から、当時主流だった音楽の代わりになるあたらしい音楽のことを指していた。そしてグランジやローファイなどの商業主義とは無縁な反主流的な音楽は、ニルヴァーナのブレイクによってメインストリームに台頭していく。今回紹介するセバドーはその当時ペイブメントなどとともに、ローファイ・オルタナ・ムーブメントを巻き起こしたバンドのひとつだ。しかし私はセバドーの音楽がオルタナティヴとは思っていない。時代の流れ的にオルタナティヴという括りにされてしまっただけで、セバドーの音楽はいつも変わらずセバドーなのである。
前作から14年、セバドーの新作『ディフェンド・ユアセルフ』は初期の頃と同じようにセルフ・レコーディングを行い、相変わらずローファイを貫き通している。気だるそうな歌声、ヘロヘロなギター・リフもドタバタなドラムもどれも当時のまま。ダイナソーJrのような轟音ギターのノイズ感もまさにローファイだ。
しかしセバドーの魅力はローファイがどうだとかそんなところではない。ローファイのバンドは山ほどいるし、それだけではなんの魅力にもならない。彼らの良さはソング・ライティング力の高さにあるのだ。ダイナソーJrのベーシストでもあるセバドーの中心人物、ルー・バーロウは昔から非凡なソング・ライティング・センスを魅せていたが、今作でもルー・バーロウ節が炸裂している。メロウでポップなM1「I Will」やM10「Can't Depende」、ダイナソーJrを思わせるノイジーでヘヴィーなサウンドのM4「Defend Your Self」、M7「Inquiries」、「Final Days」、ポップでパンキッシュなM5「Oxygen」、M8「State Of Mine」や哀愁漂う泣きメロ全開のM11「Let It Out」、M12「Listen」など今作のなかでさまざまな楽曲を聴かせてくれる。そしてどの曲も耳に残る人懐っこいメロディがしっかりあるのだ。そしてもちろんジェイソン・ローウェンスタインの存在も忘れてはならない。『SebadohⅢ』からセバドーに参加したジェイソン、彼も素晴らしいソング・ライターなのだ。どちらがどの曲を作ったのかは分からないが、2人の絶妙なバランスがセバドーの良さでもある。ルー・バーロウのソロ名義の作品『Emoh』でも彼が参加しているが、こちらもすばらしい作品だ。こちらはアコースティックがメインの楽曲だが、ルー・バーロウの美しく、優しいメロディがさらに際立っている。
一度は離れてしまった2人だが、もう一度手を取り合ってくれて本当に良かったと思う。そして今作から参加したボブ・ダミコ。この3人でセバドーだ。14年という年月は世界の音楽シーンを大きく変えてしまったが、時代の流れなど関係ない。彼らは変わらずセバドーの音楽を鳴らしている。(text by 吉野敬一郎)
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LIVE INFORMATION
HOSTESS CLUB WEEKENDER
2013年11月30日@恵比寿ガーデンホール
w/Neutral Milk Hotel、Okkervil River、Delorean、Temples
PROFILE
Sebadoh
1986年、ダイナソーJr.のベーシストのルー・バーロウと、エリック・ガフニーによりマサチューセッツにて結成され、ペイヴメント等と並び、ローファイ・ブームを巻き起こした伝説的バンド。1987年、“Homestead”レーベルよりデビュー・アルバム『The Freed Man』を発表後、ジェイソン・ローウェンスタインを加えた3ピースとなる。3枚のスタジオ・アルバムをリリースした後、人気レーベル“Sub Pop”と契約。幾度かのメンバー・チェンジを経ながら、その後5枚のアルバムをリリース。2013年9月には、約14年ぶりとなるフル・アルバム『Defend Yourself』をリリース。