2013/09/13 00:00

NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のサウンドトラックのヒットにより、その名を広めつつある音楽家、大友良英。実際『あまちゃん』で彼の名を知った方も多いだろう。実は大友、テレビ番組での楽曲提供も長いキャリアがあり、それ以外にも映画音楽の参加、そしてなによりも多数名義での活動など、現在までにコンスタントかつアクティヴに楽曲発表を続けている。OTOTOY内での限定配信数の多さからも、その様子がよくわかる。そこで今回、本サイトで配信された音源を軸に、大友の活動を振り返っていきたい。

前衛から映像、そしてお茶の間へ

そもそも、大友良英とはどんな作曲家なのか? 彼がドラマに提供している楽曲を聴いてみても、とんでもなくジャンルレスな色調であるため、特定のジャンルに結びつけるのが難しい。それもそのはず、大友はもともと、映像向けの音楽を専門に手がける音楽家というわけではなかった。

彼の音楽活動の始まりは、学生であった80年代にさかのぼる。フリー・ジャズに強い関心を示した大友は、大学でジャズ研や民族音楽の講義を受けるかたわら、フリー・ジャズ・ギタリストの高柳昌行のもとで生徒・付き人として下積みを続けた。

その後80年代後半から即興・前衛演奏家として活動を始め、90年代に入ってからは自身がバンマスを務めるバンド「GROUND-ZERO」を結成。ソロにおいてもノイズ・ミュージックやフリー・ジャズの作品を精力的に発表しつつ、表現のアプローチとしてターンテーブルの使用も開始。ボアダムスの山塚EYヨとともに活動を行い、ギタリストのみならずターンテーブルとして評価され始めたのもこのころからになる。

GROUND-ZERO / 革命京劇 (1995年 LIVEより)
GROUND-ZERO / 革命京劇 (1995年 LIVEより)

2000年に入ってからは再びジャズへと回帰し、大友良英ニュー・ジャズ・クインテット(ONJQ)を結成。菊地成孔もそのメンバーの1人であった。このあたりから映画・ドラマの音楽に携わる機会が増え、映像作曲家として名を広めていくこととなった。そして『あまちゃん』のサウンド・トラックに参加、現在に至るわけである。

精力的なコラボレーション活動

ソロのみならず、多彩なグループ編成での活動が多い。ここOTOTOY内でも、数多くの限定配信音源が発表されてきた。それを紹介していこう。

まずはスティール・ギターを中心に様々な弦楽器を演奏する高田漣。日本初となるインディー・レーベルURC(アングラ・レコード・クラブ)、その後継として誕生したベルウッド・レーベルで数々の名盤を生み出したフォーク・シンガー、高田渡の息子でもある。OTOTOYと「サウンド・レコーディング・マガジン」の合同企画の一環として収録されたコラボレーションで、DSDの高音質さのPRも兼ねたものだった。 大友のターンテーブルさばきと高田のスティール・ギター、音の反響と融合が見事に計算された、刺激的なセッションとしてパッケージングされ、今なお当時の空気感を味わえる。


大友良英+高田漣 / BOW
【配信形態】
1. DSD+mp3 Ver.(※1.15GB)
2. HQD(24bit/48kHzのWAV) Ver.(※617MB)


【価格】
DSD+mp3 まとめ購入のみ 1,000円
HQD まとめ購入のみ 1,000円


【Track List】
1. 街の灯 / 2. It's Been A Long, Long Time / 3. 教訓1 / 4. At The Airport / 5. BOW


>>『大友良英+高田漣』特集ページはこちら

同じく「サウンド・レコーディング・マガジン」に関連したものとしては、同主宰のレーベルがNHK-FMでオンエアしたラジオ番組『坂本龍一 ニューイヤー・スペシャル』も有名。この番組内で5人のゲスト・アーティストを迎えたセッションが放送されたが、大友はメンバーの1人として参加している。 彼が参加している楽曲はオーネット・コールマンをモチーフにし、坂本のピアノと大友のギターのみという実にシンプルな構成。しかし彼らの息遣いまでも伝わるような即興演奏で、繊細な一面を存分に浸ることの出来る名演だ。


坂本龍一+大友良英 / improvisation inspired by Ornette Coleman
【配信形態】
1. DSD+mp3 Ver.
2. HQD(24bit/48kHzのWAV) Ver.

【価格】
DSD+mp3 / HQD ともに500円

【Track List】
1. improvisation inspired by Ornette Coleman


>>『坂本龍一 NHK session』特集ページはこちら

さらにOTOTOYコラボレーションによるイベント『PHON』の第一回イベントの音源では、アルゼンチン音響派と呼ばれる一派を代表するギタリスト、フェルナンド・カブサッキとのコラボレーションが実現。 ダブル・フリーキー・ギタリストによる弾け合うノイズ合戦は時に繊細、また時に歪み切った空間を練り込んでいく。二人の雑音による対話の行方は、ぜひ本サイト限定配信の音源で見届けていただきたい。


フェルナンド・カブサッキ & 大友良英 / PHON vol.1- Improvised Session 20110501 part1&2 (DSD+mp3 ver.)
【配信形態】
DSD+mp3

【価格】
1stステージと2ndステージともに各1000円






フェルナンド・カブサッキ & 大友良英 / PHON vol.1- Improvised Session 20110501 part1&2 (HQD ver.)
【配信形態】
HQD

【価格】
1stステージと2ndステージともに各1000円






>>『フェルナンド・カブサッキ & 大友良英』特集ページはこちら

映画・ドラマとの関わり

『あまちゃん』以前にも、大友はドラマ作品への楽曲提供をいくつも行っている。 近年のものでは『とんび』(NHK)や『鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争~』(NHK名古屋)、『鈴木先生』(テレビ東京)も彼が関わっており、いくつか挙げてみただけでもジャンルを問わず、様々なタイプの映像への音楽提供に取り組んでいるのがわかる。さらにはどの作品に対してもしっかりと馴染むアプローチを提供しているのは、センスのみならず相当の演奏能力と教養を持ち合わせていなければできない偉業である。

国内外問わず、映画作品への提供数も計り知れない。ここ最近の作品では、2008年に発生した「秋葉原通り魔事件」をモチーフにし、社会のはぐれものを痛烈に描き切った『ぼっちゃん』、住職で芥川賞作家でもある玄侑宗久(げんゆう そうきゅう)の半生を題材とした『アブラクサスの祭』(主演にはスネオヘアーがキャストされたことでも話題に)、今年5月に頭部のけがで急逝した岩佐寿弥監督が、チベットから亡命した一人の少年を追った遺作『オロ』など、ミニシアター系の作品からドキュメンタリーまで、幅広い分野の作品で彼の名前を確認できる。

大友が音楽で参加した映画『ぼっちゃん』予告編
大友が音楽で参加した映画『ぼっちゃん』予告編

反原発に対しての取り組み

福島原発に端を発する原発反対運動を積極的に行っていることでも有名な大友。OTOTOY内で企画された特集『REVIVE JAPAN WITH MUSIC』においてもその想いが克明に語られ、地震直後の非常に速い段階から、その危険性を問題視している。 >>『REVIVE JAPAN WITH MUSIC』第一回 : 大友良英

この姿勢は前インタビューから二年が経ったあとでも変わらずに追求し続け、近年のライヴ活動でもそれはよく表されている。 >>『REVIVE JAPAN WITH MUSIC』第十回 : 大友良英 インタビュー

終戦記念日である8月15日に福島市で行われるライヴ・イベント『PROJECT FUKUSHIMA!』では代表を就任し、遠藤ミチロウや和合亮一といった福島県ゆかりの人物とともに、震災後毎年大々的な活動を進めている。今年度の開催では盆踊りをテーマに、「あまちゃん音頭」や「相馬盆唄」といった異色の演目が並び、TwitterなどのSNSにおいても大きな話題となったことも記憶に新しいところだ。
>>『フェスティバルFUKUSHIMA!2012』大友良英インタビュー

ほかに震災復興支援の取り組みとして、本サイト限定配信のオムニバス・アルバム『Play for Japan 2013 vol.3 ~a will finds a way~』にも参加。こちらも現在でも好評配信中なので、ぜひ触れてみてほしい。


V.A. / Play for Japan 2013 vol.3 〜a will finds a way〜
【配信形態】
mp3 / wav

【価格】
mp3 / wav ともにまとめ買いのみ 1,500円

【Track List】
3. otomo yoshihide turntable solo 2002 re-mix ver.2013


PROFILE

大友良英

1959年生まれ。ギタリスト / ターン・テーブル奏者/作曲家 / プロデューサー。ONJO、INVISIBLE SONGS、幽閉者、FEN等複数のバンドを率い、またFilament、Joy Heights、I.S.O.など数多くのバンドに参加。同時に映画、CF等、映像作品の音楽も手がける。近年は美術家とのコラボレーションも多く、自身でもサウンド・インスタレーションを手がける一方、障害のある子どもたちとの音楽ワーク・ショップにも力をいれている。著書に『MUSICS』(岩波書店)、『大友良英のJAMJAM日記』(河出書房新社)など。

大友良英 twitter
大友良英のJAMJAM日記
オフィシャルHP

この記事の筆者
高橋 拓也 (もり)

泡沫大学生。ナゴム好きをこじらせ、現在80's NEW WAVE(おもにドイツ周辺)を掘削視聴中。

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[レヴュー] 大友良英

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