2013/08/17 00:00

PARALLEL WORLD~終ワリノ始マリ~ episode 1.


彼女は毎日言っていた。生きるのが辛いと、もう死にたいと、残り10秒のカウントダウンが始まる。

「どうぞお好きにして下さい。」

そう言うと彼女は、助けて欲しいと、止めて欲しいと、声には出さず叫び始める。彼女は必ず残り一秒で躊躇うんだ。

もう 死にたいと言える間は、もう 死んでやると言える間は、その間にいつも私はカウントダウンを感じる。その言葉を向けた相手の中に命綱を張り、10を唱えるまでに私を止めてと言ってるようで、苦しみから逃れたいはずなのに、誰かに必要とされたがる。矛盾。

矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾。

あれもこれも、私も彼女も、矛盾で成り立っているんだ。

そんな矛盾を抱えながら、君が選ぶのは、生の道? 死の道? それとも第3の道?

「ごめんなさい…ごめんなさい…もうしません、ごめんなさい…」

また今日も私の体にはゴムホースで叩かれた痕が残る。背中とお尻と腿が赤く腫れ上がっている。おまけにゴムの匂いがいつまでもへばりつく。這い蹲って自分の部屋に戻りその姿を鏡にうつす。この腫れ上がった体もこの涙も私の痛みじゃない、私の苦痛じゃない。ほらだってこうやって鏡に映してしまえば、これはもう私の痛みじゃなくなる。今、この瞬間から彼女(yucat)のものになる。私はまたいつもの私に戻る。私にはもう一人の私がいる。

誰にも話したことのいないもう一人の私が、彼女に初めて会ったのは小学5年生の時。鏡をのぞくとそこには傷を負った彼女が映っていた。彼女に会えるのは夜か、私が泣いている時か、辛い思いをしている時。私は彼女に泣いている理由を話す。彼女はいつも全てを受け止めてくれました。

すると彼女はこう言う。

「辛いこと、苦しいことがあったら私を呼んで。私に全てを吐き出すの。そしてあなたはまたいつも通り笑顔に戻る。あなたは周りの人たちが心配しないようにいつも笑っていて。辛いことは私が全て引き受けるから。」

私は彼女を、私の心の中に存在するもう一つの現実世界、パラレルワールドの中に住まわせている。死にたくなるほどの悲しみや苦悩は全部彼女が背負ってくれているおかげで、私は今も笑って過ごすことが出来ている。光のあり方は一つじゃない。ここでは暗闇も悲しみの叫びも音に変わる。闇には必ず光がある。私は笑い続けなければいけない。そして彼女は叫び続けなければいけない。このPARALLEL WORLDで。

あなたは誰? 私を救ってくれるの? 私を愛してくれるの?

ミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレナイミタサレタイ
人間はタリナイって思ったモノを、何かで埋めようとする生き物、それがあまりにも残酷な破壊衝動だったとしても…。時々、鏡に映る自分を見ると切り刻みたくなる衝動に駆られる。日に日にあの人の顔に似ていく。お前にも同じ血が流れているんだぞと言わんばかりに。暴れる奇声、それを抑えようとする言葉がリビングの方から耳を塞いでも塞いでも聞こえてくる。何度も手首を切る 何度も飛び降りる。何度もバットを振り回し、部屋のガラスや壁を粉々にし、包丁やハサミを突きつけてくる。

『もうやだよ…。』

包丁もハサミもバッドもカッターもゴムホースも剃刀も今私のベットの中にある。これで今夜は誰も傷つかない。

『はやく終わって下さい。神様お願いします。はやくここから救って下さい。』

毎晩声を殺し泣きながら眠りについていた。いつまでこの地獄は続くの?。ねぇ、いつまで私頑張ればいいの?

蘇る記憶。私は鏡に映る私を見つめながら点と点を結ぶように右頬にあるホクロとホクロをカッターで繋いだ。赤い線が滲み出した時、心が少し軽くなった気がした。この痛みさえあれば、私は私を確認出来る 痛みは私を裏切ったりはしない。だけど最近少し物足りない。何も感じない。Perfect Pain どこにいっちゃったの? ずっとそばにいてくれるって約束したのに。

隠したいなら隠しきってくれればいいのに。嘘つくなら最後までつき通してくれればいいのに。そしたら傷つかなくて済むのに。覚めない夢を最後まで見せてよ。

信じるって難しいね この世で一番難しい。それでも本当は信じたいんだよ? すごく。でも、怖いんだ

私は自らを傷つけることでしか確認出来ない。痛みと嘘があれば生きていける。痛みはいつだって私に正直で素直で、心へと真っ直ぐ届く存在。完璧な痛みは私を救ってくれるの? それとも私を壊してしまうの? 痛みだけが知っている。

私が本当に欲しいモノは、お願い誰か私を、、、、
誰か私を殺したいほど愛してくませんか?

本物か偽物か、真実なのか嘘なのか。何でも二分割出来るほど人間単純ではないでしょう。あれもこれもあなたの目に映る私はすべて私であって、どれも本当なのに、どっちも私なのに。どっちかが本当で、どっちかが偽物だって決めつけようとする。世界は目に見えるモノだけで出来ているわけではない。歪んでしまったのは世界なのか、私か、それとも君か?

“無意識の中にある真実を”

真実を見る覚悟はある? 消したい記憶が暴れだす。大きな音が嫌い 静寂も嫌い。叩かれるのは嫌い。他人の涙も嫌い。一人は嫌い。家族なんていらない。愛なんていらない。安らげる場所なんてどこにもなかった。いつ殺されるんだろうって毎日びくびくしながら生きてた。

何度も考えた。何度も同じ夢を描いた。もう終わりにしよう。終わらせるんだ。辛かった 壊したかった。この世界を止めたかった

だけど、他人の人生をこの手で終わらせ、地獄を生きるくらいなら、自分の人生をこの手で終わらせ、楽になりたかった。ねぇ誰でもいいよ。誰かここから助けて。連れ去って。私は私が恐いんだ。この手はいつだって凶器になる。本物の悪になる。いつだって誰だって。こんなはずじゃなかったと。止めどなく流れる‘赤’を見て思うんだ

―この世界を変えたいんだろ?―

分かってる。分かってるよ。自由も孤独も選ぶのはこの手だ。負のループから抜け出したい。でも… どうすれば?

その時、彼女の声がした。

『今から言うことは誰にも内緒だよ。もうすぐこの地球は消える…。でも安心していいよ。イイコト教えてあげる。ここから君を連れ出してあげる。周りは色々言ってくるかもしれないけど、耳を傾けてはいけないよ。言わせておけばいい。そのまま振り返らずに真っ直ぐ進むんだ。君は生きたいんだろ。だからこんなにも生きづらい世の中を、もがいてもがいてもがいて、泣きながら叫んでいるんだろ? ほら聞こえてきた―あんた達に分かってたまるかー ―負けるもんかー。さぁ、闇をかき集めるんだ。このマシーンの燃料は君の負のパワーだ』

あれから16年。私はやっとパラレルワールドの中で居場所を見つけた。歌っていれば寂しくない。歌っていれば私は私のままでいれた。深い深い暗闇の中で、ずっと息の吸える場所を探していた私にとって、歌うことは光そのものだ。だけどふと思う。

『これでよかったのかな…? 私の目指したルートはここで正しかったのかな。』
『その答えを探す旅だとしたら?』

さぁ扉は開かれた。そこの君も一緒に行かない? PARALLEL WORLDへ。待っているのは希望か? それとも絶望か? それは行ってからのお楽しみだ。分かっているのは、誰しも与えられし、同じ明日は来るってこと。

『最後にひとつだけ。どうしたら元の世界へ戻れる?』
『それは… いつだって君次第。』

[レヴュー] yucat

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