2013/07/24 00:00

名前、顔、素性… 存在の全てが謎に包まれている話題のプロデューサー、ゾンビーが約2年振りとなる3rdアルバムをリリース! 11年、イギリスの名門レーベル[4AD]と世界契約を果たし、世界中から注目を集めたゾンビ―。アニマル・コレクティヴのパンダ・ベアがゲスト参加したことでも話題となり、ロックリスナーからも絶賛された2ndアルバム『デディケーション』。ディプロ、ブリアル、コード9、アニマル・コレクティヴが口を揃えて激プッシュ、更にアルバム・リリース前からWIREやTHE FADERなどの表紙を飾るなど、その注目度の高さを証明した。ダブステップを超えた新世代クロスオーバー・サウンドでエレクトロニック・ミュージック界の異端児として注目を集める。極限まで研ぎ澄まされたクールなサウンドと、謎めいたヴィジュアルを併せ持つゾンビ―の第3章がスタートする。


Zomby / With Love 【価格】
mp3・wav 単曲 200円 / まとめ購入 1,800円
【Track List】
1. As Darkness Falls / 2. Ascension / 3. Horrid / 4. If I Will / 5. Isis / 6. It's Time / 7. Memories / 8. Orion / 9. Overdose / 10. PrayForMe / 11. Rendezvous / 12. The Things You Do / 13. This One / 14. Vanishment / 15. VI-XI / 16. VxV / 17. 777 / 18. Black Rose / 19. Digital Smoke / 20. Entropy Sketch / 21. Glass Ocean / 22. How To Ascend / 23. I Saw Golden Light / 24. Pyrex Nights (feat. Last Japan) / 25. Quickening / 26. Reflection In Black Glass / 27. Shiva / 28. Soliloquy / 29. Sphinx / 30. Sunshine In November / 31. Vast Emptiness / 32. White Smoke / 33. With Love

ダンス・ミュージックのすべてがクラブ仕様である必要はまったくないはず

 黄金色のマスクで顔を隠した新進気鋭のプロデューサー、Zombyが新作『With Love』をリリースした。各音楽メディアで好評価を受けた、前作『Dedication』(2011)の発表後、ロンドンからニューヨークに拠点を移した彼。最近では環境が変わったことも影響したのか、彼のパブリック・イメージには似つかわしくないTwitterでの明け透けで奇抜な発言が話題になったり、日本のファッション・ブランド=C.Eとコラボレーションしたり… と音楽以外の部分で注目を集めていたが、いよいよ満を持して待望の新作が発表された。

 以前から、ダンス・ミュージックとしてはトラックが決して長くはないことが特徴のひとつだったZombyだが、今作においても33曲というヴォリュームにも関わらず、収録時間は約1時間弱ということで、その傾向はより顕著に。1曲1曲毎に、2ステップ・ガラージからハウスまで目まぐるしく色を変えるヴァリエーションに富んだトラック群は「今日なにした / こう思った / 明日どうする? 」なんて、彼の異国での何気ない日常を「愛を込めて」綴った、ラヴ・レターのようだ。  内省的な趣をもつこのアルバム、しかし、踊れない作品ということでは決してない。警告音のようなシンセで幕を明ける「As Darkness Falls」でスタートする。ウィッチ・ハウスやグライム由来の背筋が寒くなる様な不穏なムードを継承しつつ、熱心なクラブ・ミュージックのリスナーではない人にも開けた内容である。極端に歪んだ参照元のはっきりとしないサンプリング、80年代ヒップホップのトレード・マークの一つであるでもある808のサウンド… 使い方は決して新しくないものの、音の配置の「正しさ」には、先日、全英ナンバーワンを獲得したDisclosure(『Settle』)のアティチュードを思わせる、ポップネスがある。  Zombyがより深い思索の世界に入っていくのは、「Black Rose」、CDではディスク2のスタートとなる18曲目から。スチールパンのような金属音のシーケンスが、リスナーをZombyが描く悪夢へと誘う。フェードアウト・フェードインしながら、暗闇をたゆたうが如く、揺れるサウンドは一貫した冷たいトーンをもっている。ヒップホップをルーツと公言するZombyらしいダルでチルなビートにのって雨だれのようなシンセサイザーの音が、ニューヨークの街を一人悩み彷徨う旅人の姿を浮かび上がらせる。 「イントロ・アウトロが無く、フロア向けではない」なんて、指摘を受けることもあるZombyの音楽。しかし、そもそもダンス・ミュージックのすべてがクラブ仕様である必要はまったくないはずだ。永劫回帰する電子音のループは、ひとりで朗読する恋人からの手紙のように密やかなものであったっていい。クラブ・ミュージックの快楽性を決して、派手なクラビングのおもちゃにしない、Zombyの真摯な音楽との向き合い方が反映された1枚だ。

(text by 小田部 仁)

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PROFILE

Zomby
08年にアルバム・デビュー。11年にイギリスの名門レーベル[4AD]と契約し2作目『デディケーション』で本格世界デビュー。ダブステップと様々な音楽的要素をミックスしたクロスオーバー・サウンドが話題となる。ディプロ、ブリアル、コード9、パンダ・ベアといった人気アーティストがファンを公言。

>> Zomby official website

この記事の筆者

[レヴュー] Zomby

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