2013/07/19 00:00

東京都内を中心に活動するバンド、ミツメ。2ndアルバム『eye』をリリースしてから約10ヶ月というスパンで新作『うつろ』をリリース。この4曲入りEP『うつろ』は、『eye』で掲げていた"ハイファイ"、"SF"といったテーマから一転、大きく方向転換している。今作も、メンバーとエンジニア田中章義の5人のみで制作したというが、彼らがいま鳴らしている音は、どうなっているのか。レヴューとともにたのしんでほしい。

ミツメ / うつろ

【配信形態】 WAV、mp3

【配信価格】
WAV 単曲 200円 / アルバム購入 700円
mp3 単曲 150円 / アルバム購入 500円

【Track List】
01. うつろ / 02. 会話 / 03. 気まぐれ女 / 04. Chorus

日常の楽観的な感情の中にぽっかりと開く穴

2009年から都内を拠点に活動を続ける4人組バンド、ミツメ。ファースト・アルバム『mitsume』、セカンド・アルバム『eye』を経て、今なお精力的に活動している。4人のすらっとした佇まい、飾り気のないシンプルで直球なサウンド、情緒的で詩的な情景を見せる歌詞。そのアンニュイな存在感に徐々に人々は惹きつけられ、気づけばミツメはインディ・シーンの台風の目として、もはや度外視できない存在となった。

そんなミツメの新しいEP『うつろ』が届いた。ボサノヴァ調のギターリフで幕をあける、リード曲”うつろ”。休日、外はぽかぽか陽気なのに、わざわざうす暗い部屋で見る白昼夢のような、少しの湿り気を帯びたサイケデリックでネオアコな音を鳴らす。その音はどうしようもないほど美しく、蒼く、そしてもどかしい。「うつろ」という言葉の丸さ、表面の辺りに留まる語感だとか、輪郭がぼんやりして夢か現実かよくわからない言葉の纏う空気感、その全てがミツメにピッタリだと思った。

そもそも「うつろ」ってどういう意味だっけと思い、辞書を引いてみる。漢字では「空ろ」とか「虚ろ」とか書くように、その意味も「内部がからであること。また、そのさま。空洞。」だとか「心が虚脱状態であること。また、そのさま。表情などに生気のないさま。」だとか、意外とダイレクトにマイナスな意味が出てきた。この曲自体メジャーコードで明るく、ギターもびにょんびにょんとおもしろいエフェクトがかかっており耳も楽しい。でも「うつろ」な感情って、意外とそういうところに存在しているのかもしれない。あからさまに鬱々とした感情の中に存在する空虚さよりも、日常の楽観的な感情の中にぽっかりと開く穴のほうが見過ごせずに気になってしまう。

他にもミツメ節炸裂のM2”会話”や、一貫して鳴らされるギターリフを芯にして空白に音を放り込むように鳴らされるM3”気まぐれ女”(こちらはタイトルからして最高なので個人的に推したい)、タイトなサウンドに靄をかけるようなエフェクトを施されたヴォーカルが絡むM4”Chorus”など、盛りだくさんで贅沢な4曲に仕上がっている。

ゆる~いグルーヴでサイケデリックに倦怠を奏でるミツメ、さらなる邁進にも期待が高まる今EPは必聴盤だ。(text by竹島絵奈)

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ミツメ / eye

前シングルでは、郷愁を誘うフォーク・サイケロックを見せた1stアルバムから大きく方向転換。シンセサイザー・リズムマシンを取り入れたスペーシーな SF・ポップスを展開し、話題を集めたミツメ。その流れを汲み、メンバー4人がそれぞれの興味を追求するなかで、さらに多様なアプローチを貪欲に取り入れていった本作は、ダブからシンセポップ、ファンクチューンまで実に多様な楽曲が収録されている。S.F、ニューウェーブ、特撮、80年代…そんなものが今回のキーワードになっているそう。近年の海外インディーにも接近しながら、日本語で歌われる素朴な歌と、どこか歪で間抜けな質感は、ここにしかないサウンド。また、本作も前回に引き続き、作曲、アレンジ、録音・ミックスに至るまで、メンバーと彼らの友人であるエンジニアを加えた5人のみで制作されている。

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ミツメ / Fly me to the mars!!!

カセットテープのみでリリースされた作品『Fly Me to The Mars』が配信開始。持ち前のシンプルなギター・サウンドを軸に、ここ数年USインディ・シーンを席巻しているチルウェイヴ以降のシンセ・サウンドや、ビーチポップ特有のリヴァーヴ感を身にまとい、海外インディ嗜好のギークたちも全惚れさせることウケアイのキラめきデイドリーム・ポップ"Fly Me to the Mars"。そして、同路線のサウンドに牧歌的なメロディを組み合わせることで、元々評価の高いノスタルジックな日本語詞がより一層輝きを増している「煙突」と、その才能が開花する瞬間を捉えた眩し過ぎる2曲をカップリング。

ミツメ / mitsume

活動最初期から演奏してきた曲を新たに録音し直したファースト・アルバム。70年代日本語ロックへの憧れや、90年代への郷愁、サイケ、オルタナ、ローファイ、ネオアコ、フォークなどがいびつに詰め込まれた本作は、DIY精神でアレンジや録音からアートワークに至るまで、全ての行程をメンバーと友人のエンジニアで敢行したもの。シンプルだからこそ映える珠玉のメロディーの数々は必聴です。

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RECOMEND

森は生きている / 日々の泡沫

60~70年代の音楽の遺産を深く咀嚼したアナログで有機的なプロダクション、卓越した演奏、文学的な歌詞の世界観を持つ、森は生きている。2012年の末に自主制作でリリースしたデモCD-R「日々の泡沫」が配信スタート。

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京都の現役大学生バンド、Homecomings。Second Royal Recordsからデビュー・アルバムをリリース。メンバーはヴォーカル&ギター / ベース / ドラムの女子3名&リード・ギターの男子1名、京都の大学のフォークソング部内にて結成され「80'S洋楽ヒット、世界各国のインディポップ、クリスマスソングの影響を受けた」という4人組です。抜群のメロディと女の子全員でハモりまくるコーラスワーク、部活内で培われたという意外にも骨太なサウンド、とにかくフレッシュな感性が弾けまくったファースト・ミニ・アルバム。まるで青春の中の一瞬を切り取ったかのようなキラキラと眩しすぎる一枚です。

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PROFILE

ミツメ

2009年 東京で結成。4人組のバンド。
2010年 ライブ活動を開始。
2011年8月 1stアルバム「mitsume」発売。
2012年1月 1stカセットシングル「fly me to the mars!!!」発売。
2012年7月「fly me to the mars!!!」を7インチレコードで発売。
2012年9月 2ndアルバム「eye」発売。
2013年4月 渋谷O-nestにて単独公演"one-man show"を開催。
2013年5月「mitsume」「eye」のLPを同時発売。
現在都内を中心に活動中。

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この記事の筆者

[レヴュー] ミツメ

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