2013/06/28 00:00

京都大作戦、ボロフェスタといった大型フェスに参加、イベント「WHOLE LOVE KYOTO」をくるりと共催するなど、地元京都を中心に躍進を遂げている3人組バンド、Turntable Films。今回、サポート・メンバーを含め総勢8人編成のスペシャル・セットで行ったワンマン・ツアーの音源が収録されている、初のライヴ・アルバムをリリース。 いまの彼らのライヴにきっと足を運びたくなる、必見のインタヴューとともにお届けします。

Turntable Films 『LIVE (Trailer Movie)』
Turntable Films 『LIVE (Trailer Movie)』

Turntable Films / LIVE
【価格】
mp3 単曲 150円 / まとめ購入 1,500円
WAV 単曲 170円 / まとめ購入 1,700円

01.Bye Bye Love / 02.Honey Bee's Bloom / 03.Here in My Heart / 04.Toy Camera / 05.Uncle Tree / 06.Good Bye My Friends / 07.Portrait / 08.Awake / 09.2steps / 10.Torpor / 11.Won't Let You Down / 12.Music River / 13.Where Is My Little Heart / 14.As I do Now / 15.Summer Drug / 16.Evil Tongue / 17.Animal's Olives


INTERVIEW : Turntable Films

photo by mai narita

右から、井上陽介(Gu)、田村夏季(Dr)、谷健人(Ba)

Sax : 土竜(Live House nano店長/ボロフェスタ)
Rap Steel Guitar, Banjo : 岩城 和彦 (Pirates Canoe)
Percussion, Guitar, Mandolin, Chorus : 妹尾 立樹 (Sistertail / LLama)
Keyboard, Glockenspiel : 植木 晴彦
Keyboard, Pianica : 佐々木 悠 (パノマティ / こっきり)

京都のオルタナ・カントリー・バンド、Turntable Filmsが初のライヴ・アルバム『LIVE』をリリースします。2012年暮れから今年初頭に開催されたワンマン・ツアーから、選りすぐりの17曲を収録した今作。バンド・メンバー3人に、地元・京都で活躍する手練のアーティスト5人が加わった、8人編成での演奏です。グロッケンシュピールやマンドリン、ラップ・スティールなどが彩る柔らかなアンサンブルによって、バンドの突出した魅力であるソングライティングの良さがあますところなく表現された、芳醇な香り漂うライヴ・アルバムになっています。2012年の京都・磔磔における初ワンマンに端を発した、多人数編成でのパフォーマンスが、現在最初の円熟期を迎えていることを雄弁に伝える作品でしょう。バンドの現在地を解き明かすべく、今回はその磔磔ライヴ以降の活動から振り返ってもらいました。

インタビュー&文 : 田中亮太

京都・磔磔での初のワンマン・ライヴ

2012年4月14日に磔磔で開催されたバンド初のワンマン・ライヴ。メンバーの3人にライヴ・アルバムにも参加している5人、さらに元メンバーの船田のぞみ、ゆーきゃん、QUATTROの潮田雄一も加わり、総勢11名という編成で演奏した。

ーー現在のライヴのモードは、この磔磔ワンマンからスタートしたように思いますが、このタイミングで多くのサポート・メンバーを入れたのは、どうしてですか?

井上陽介(以下、井上) : その前の2月にキーボードだったのんこ(船田のぞみ)が脱退したことが、きっかけのひとつではありますね。いまも前の4人でやってたら、少なくとも現在のかたちにはなってなかったやろうし。彼女の代わりのサポートを1人入れるなら、何人入れてもええんちゃうかなって思ったんですよね。

田村夏季(以下、田村) : ただ、前から陽ちゃん(井上)は、「ほんまにこのバンドで表現したい音はもっと大人数じゃないとできひん」みたいなことは、ちらほら言ってましたね。

ーー結果的に、このライヴはそれ以降の自分たちの活動に、どんな影響を及ぼしましたか?

田村 : 当初はあの日限りの編成みたいな感じやったんですけど、もうとにかく演奏してて楽しくて。打ち上げのときには「またやろう」ってなってましたね。それからは、各々のメンバーに出てもらえるときに参加してもらってます。

谷健人(以下、谷) : コーラスで参加してもらったゆーきゃんが「11人のバンドみたいだった」って言ってはって。一緒にやったみんなが楽しかったんやと思う。

ーー3人ないし4人のみのときのライヴと、大人数編成時のライヴでは意識の面で違いありますか?

田村 : 大勢でやってるときは、それぞれの音が新鮮で気持ちいいから、リラックスしたムードにはなってますよね。3人か4人のときは、「よりロックに」みたいな。

アルバム『Yellow Yesterday』のリリースとツアー

2011年4月18日、バンド初のフル・アルバム『Yellow Yesterday』がリリース。6月3日から、リリース・ツアーもスタートし、全国6会場を回った。各会場の共演者は、COMEBACK MY DAUGHTERS、QUATTRO、Predawn。原田茶飯事、シラオカなど。

ーー『Yellow Yesterday』はASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんがベスト・アルバムのひとつに挙げるなど、 評価された作品となりました。

田村 : 拾ってくれたらうれしいなと思ってた人がちゃんと拾ってくれた気はしてますね。

井上 : 伝わる人には伝わったかなと。例えば、あのアルバムはあえて音圧をめちゃくちゃ低く設定してるんですけど、その意図を理解してくれる人がいたりとか。枚数的には、正直もっと売れてほしかったですけど(笑)。

一同 : (笑)

井上 : あれだけ良いアルバムなんやからねえ? まあ、でも販売状況的にも、まだ途中って印象ですけどね。

ーーアルバムの曲をライヴで演奏するにあたっては、どんな面を打ち出すことを意識していますか?

谷 : 特にここってのはないですね。でも、バンドの曲ってつねにやりながら更新されていくもんやと思うんですよね。ライヴでやっていくなかで、「これや」ってところに落ち着いて、そっからまた違うところに行ったりする。

田村 : 例えば「2steps」なんかは、ライブではCDよりずっと早いBPMで叩いてますけど、それもライヴでどんどん更新されていったんですよね。あと、 サポート・メンバーのアレンジや意見によっても変わりますね。「Won't Let You Down」の間奏は、4人の時期はもっとバックビート気味で叩いてたんですけど、佐々木(悠)さんから「もっと前のめりで踊ってる感じでどう?」って言われたんですよ。それで叩いてみたら感じが良くて、いまはそのノリで叩いてるし。

1st ONE-MAN TOUR 2012-2013 

2012年11月24日から翌年の1月29日まで、東京、名古屋、福山、京都で初のワンマン・ツアーを開催。今ライヴ・アルバムには、このツアーでの演奏が収録されている。

ーーアルバムのツアーから4ヶ月と短いスパンで新たなツアーを決めた理由は?

井上 : 一番は磔磔のワンマンがうまくいったからやと思う。その感じを少しでも他の地方の人に伝えるためにっていう目的やね。あと日本語曲もできたし。

ーーその初の日本語詞楽曲である「チェロ」と「ブレイクファースト」のシングルCDをツアーの前売り特典にされていましたが、このタイミングで新しい試みに取り組んだのはどうしてですか?

井上 : アルバムの次に、なにに挑戦しようかと考えたときに、じゃあ日本語もやってみるかって取り組んでたんですよね。それが良いタイミングで完成したってところですかね。

ーーそれにしても、ライヴ会場限定DVDの『Live at TakuTaku』や前売り特典シングルなど、このバンドはつねにライヴに来てくれるお客さんへ、新鮮さを提供している印象です。こうしたアイデアはどんな狙いから産まれてくるのでしょうか?

井上 : 自分がカナダに留学してたとき、外国のバンドってライヴ会場限定の音源とかがむちゃくちゃ多いなって思ってたんですよね。だからライヴに行くとお得感がある。自分たちも、毎回お客さんにとっておもしろいことをしたいなと。

谷 : そもそもCDとライヴは違うほうが好きやからなー。自分の好きなバンドにもそうであってほしいと思ってるし。だから、One Mic Showなり、みなみ会館でのLate Show Filmsなり、見せ方もいろいろ工夫していくほうが、楽しいですね。

ーーなるほど。いまの話を聞くと、谷くん自身もこのバンドのライヴには、CDと違う魅力があることを自負している印象です。

谷 : 音源はどうしてもバンド内でもぶつかるし、ある程度全員の妥協点を探す作業でもある。けれど、ライヴのときは、「ほんまはこうしたいんやで」ってのを各人が出せる。それがおもしろいと思いますね。だから、ライヴってバンドのやろうとしていることが、スタジオ作品以上に伝わる場やと思うんですよね。このバンドのコアの深さやレンジの広がりを、もっとわかりやすく出せてるんじゃないかな。あと大人数でやるときも、サポートに囲まれてってよりは、ちゃんとひとつのバンドとして見せるようにしているので、そこは魅力的に見えてるかもしれないですね。

田村 : ただ、真ん中にあるのは陽ちゃんの曲の良さだと思いますね。そこをサポート・メンバー含めてみんなが演奏でさらに広げようとしてる。

WHOLE LOVE KYOTO、NANO MUGEN CIRCUIT 2013、One Mic Show

4月29日、くるりとの共同主催で京都KBSホールにて1000人規模のイベント、WHOLE LOVE KYOTOを開催。さらに、6月15日に同会場にてASIAN KUNG-FU GENERATION主催のNANO MUGEN CIRCUIT 2013に出演。また、その合間にメンバー全員で1本のマイクを囲みアコースティック楽器のみで行う、古いカントリー・スタイルの小会場ライヴ「One Mic Show」をスタートさせた。

ーーWHOLE LOVE KYOTOはイベントとして大成功で、バンドのライヴも大変好評だったそうですね。お客さんや他のバンドからの反応で印象的なものはありましたか?

田村 : NANO MUGEN~もそうですけど、これまで前にしてきたライヴハウスのお客さんってのとは、また違った音楽好きの人たちにアピールできた気はします。良かったと多くの人に言ってもらえましたし。

谷 : (くるりの)岸田さんに「Wilcoより良かったで」って言われたのは、「それはほんまに言い過ぎや」と思ったけど(笑)。

井上 : 2012年4月の磔磔からはじめた試みの結果を、ここで出すことができた気がしましたね。演奏もすごくうまくいったし。ちゃんと応えられたな、見せられたなと思った。

ーーそして、後のNANO MUGEN CIRCUITと大きなふたつのイベントを挟む形で、極めて小さな規模の新企画「One Mic Show」をスタートさせます。この企画の狙いは?

井上 : WHOLE LOVE KYOTOをしたり、NANO MUGEN~に出るからそこへ合わせたってわけでは全然ないですね。これまでもアコースティック・ライヴはしてたんやけど、それは結局アコギからライン通してスピーカーで鳴らしてたものやったし、そこに「嘘やん」って思ってたところもあるんです。それが実はすごくストレスで。規模の大小はどうでもよかったんやけど、楽器生音でひとつのマイクで声をすべて拾ってやるってなると、どうしても小さい場所になる。自分がやること自体はギター弾いて歌うだけやから、いつもと変わらへんねんけど。

ーーこの企画をやることで、バンドのどのあたりの側面に光を当てようとしたのでしょうか?

谷 : 僕らのやってるカントリーって音楽は、それこそPA機材ない頃から演奏されてきたものやから、方法論としては昔からあるものなんですよね。でも、そういうスタイルのライヴを見たことがない人は多いと思いますし、本人たち的には楽しみつつ、お客さんには自分たちのより深いところに触れてもらいたいなと。

はじめてのライヴ・アルバム『LIVE』

photo by inoss.

ーーでは、今回リリースされる作品『LIVE』について教えて下さい。昨年末からのワンマン・ツアーのなかで録られた音源とお聞きしていますが、具体的にいつの演奏が収録されているのですか?

谷 : 新宿MARZと磔磔のライヴですね。

田村 : そのなかで演奏が良かったものを厳選しました。

谷 : ほぼノーカットだったライヴDVDより演奏面ではシビアに選びましたね。

ーー収録内容もしかりですが、普段のライヴでも、新作中心というより、ディスコグラフィーから万遍なく演奏されている印象です。セットはどういう点を意識して選んでいるのですか?

井上 : ライヴで演ってて、 息のしやすい曲を選ぶんですよね。アルバムのなかでポイントになった曲でも、ライヴでやるとうまく息ができひん曲もある。ただ、それとは逆に昔の音源のなかにも、今の編成でやるとびっくりするくらい呼吸ができる曲もあって。そういう選択で今のセットになったって感じかな。

ーー録音された演奏を聴いてみて、特にぐっときた曲は?

田村 : 「Music River」の前奏とか、すごく気持ちいいですよね。いままでは出てなかった音が出てる。あと「Torpor」で、最後のサビの前の間奏で、珍しく陽ちゃんがテンションあがって「ほぉーう」みたいな声をあげるところとか。そのあとの谷のコーラスもテンション高い感じになってて良いです。

谷 : 「Torpor」と 「Animal's Olives」は良かったですね。「Animal's~」はスタジオ盤とは違った良さが出てるような気がします。もともと淡々とした流れに、ちょっとずつ展開をつけていく曲なんですけど、それよりもライヴのほうがダイナミクスも大きいし、音の質感もロックな感じなんですよ。演奏がうまくいくと、トランス状態みたいなところまで連れていってくれる曲なので、その感じがこのライヴからは出てますね。曲としてはとっつきにくいはずなんですけど、それを空気感で聴かせれている。

井上 : 僕は「Awake」がライヴでできてるのは嬉しかったですね。あの曲は鍵盤2人いないとできひんから。だから「Awake」でメロトロンとピアノが一緒に鳴ってるところかな。

ーーライヴ・アルバム用の井上さんのコメントに、"いつかこんなライブをしたいと僕達が描いていた物がかたちになった"とありますが、具体的にどんなライヴを思い描いていたんでしょうか?

井上 : 大人数でやってみたかったんですよね。例えばハワイアンを自分がやってたとしたら、ステージで踊るフラガールがいたらもっと雰囲気出るのになーと思うじゃないですか。それと同じで、アルバムの音の感じを、大人数でやればもっと出せるなって。前は無理やり4人でやってたってところもなくはなかったですから。いまは多くの人に一緒に演奏してもらうなかで、Turntable Filmsは3人ですけど、実際もう何人編成のバンドでもいいやってところもある。別に自分がギターを弾かなくてもいい、それくらい、いまのライヴは自由で夢のある場所になってる気がするんですよね。

ーーでは、このタイミングでライヴ・アルバムを出すというのは、どういう層にどんなことを伝える狙いがあるのでしょうか?

井上 : 僕らのことをアルバムでしか知らない人は、いまの編成でこんな感じのライヴをやってるってことが伝わらへんから、作品として一度形にしておこうかなと。1年以上現体制でやってて、自分たちのなかでもちょうど根付いたっていう実感もあることやし。

谷 : だから板についてきたというか、いまはちょうどコンディションが良い状態ですよね。

ーー今後も多人数編成でのライヴを継続される予定として、さらにどのようにヴァージョン・アップしていきたいですか?

谷 : 参加してくれるミュージシャンによって、演奏する曲も変わるってのが良いと思うんですよね。それができるようになったらおもしろいですね。いまはこの編成でのライヴがいい形になってるけど、ずっと同じメンバーでやれるわけじゃないやろうし。だから、新しいプレイヤーが加わったとき、その人がいるときのTurntable Filmsはこれ! って感じで、バンドの幅を広げていきたい。ずっとロックなライヴってのもいいだろうし。

井上 : ライヴ云々というより、僕はいまのライヴのメンバーで作品が作りたいと思っています。前は自分の頭のなかで考えたものを作品にする感じやったけど、いまはもっと他人に好きにやってもらえる。別に自分が楽器も弾かんでもええし。歌うだけみたいな。

ーー最終的には歌も歌わなくなってしまったり。

井上 : ライヴにも来いひんくなったり(笑)。

一同 : (笑)

井上 : 横で見てたりな。監督みたいな立場で。

谷 : マイルス・デイヴィスみたいやな。

井上 : まあ、そこまではいかんくても、自分にできひんことを、もっとうまくできる人たちと作品が作りたいなーって感じ。

ーーでは、2013年バンドとしてもっとも重点を置いて取り組みたいことはなんでしょう?

井上 : 僕はまず曲を作ることやな。

田村 : One Mic ShowなりLate Show Filmsなり、新しい企画をちゃんと成功させることですかね。エレキがアコースティックになっただけってのでなく、新しいアイデアや試みがあるものにしたいです。

谷 : まあ陽ちゃんが曲を作るって言ってるからあれですけど、僕はいろんな地方をちゃんとライヴで廻るってのも必要なんじゃないかと思ってます。それこそ全都道府県ツアーじゃないけど、もっと地に足が着いたというか、泥臭いというか。そういった活動を。いまはライヴのメンバーで制作もしようって流れになってて、状態的にはすごく恵まれてる。だからこそ、3人のバンドとしても底上げがないと、バンドの体力として持たなくなる気がする。概して言うとバンドのベースアップ。それができれば、このライヴ編成ですごく良いものを作り出せると思います。

Turntable Filmsの過去作はこちら

Turntable Films / Yellow Yesterday

Turntable Films待望の1stフル・アルバム完成! 新世代アメリカーナ・サウンドを基調とした多彩な曲調とリズムに、全編に渡ってのグッドメロディが胸を突く大傑作! Predawnもゲスト参加!

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Second Royal Records Archives

LIVE INFORMATION

2013年7月6日(土)@京都みなみ会館
2013年7月13日(土)@渋谷CLUB QUATTRO
2013年7月15日(月)@アンスティチュ・フランセ東京(旧東京日仏学院)
2013年8月22日(木)、23日(金)、24日(土)@京都・二条GLOWLY(いずれかの出演になります)
2013年9月14日(土)、15日(日) @岡山県 瀬戸内市 黒島

PROFILE

Turntable Films

井上陽介(Gu.)、谷健人(Ba.)、田村夏季(Dr.)による3人組バンド。2010年2月にデビュー・ミニ・アルバム『Parables of Fe-Fum』、12年4月ファースト・フル・アルバム『Yellow Yesterday』をリリース。「京都大作戦 」「ボロフェスタ」といった地元京都の大型フェスにも多数出演 、2013年4月には"くるり"との共催イベント「WHOLE LOVE KYOTO」を京都 KBS ホールで開催した。

>>Turntable Films Official HP
>>Second Royal Records Official HP

[ライヴレポート] Turntable Films

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