突如SIMI LAB脱退を発表したQN、YouTubeを使って激しいアプローチを繰り返したRAU DEFが、遂に動き出す! RAUDEF、N.A.R.E(a.k.a QN)、RICK(X&TRICKS)の3人からなる突然変異型グループ、MUTANTANERS(ミュータンテイナーズ)。その全貌を現す1stアルバムがついに完成! 3人のこれまでのキャリアや資質が混ざり合い、突然変異的に生まれたフリーキーな作品だ。
MUTANTANERS / MYND OF MUTANT 突然変異的反抗期
【販売価格】
mp3 : 単曲 200円 / アルバム 2,000円
WAV : 単曲 250円 / アルバム 2,750円
【TRACK LIST】
01. 燃えよ、ミュータン / 02. Speak Jobs / 03. Fuck About / 04. Level 5 / 05. 専門ドロップアウト / 06. -Skit- Young Segare Freestyle / 07. Hard Bird / 08. Jedi Song / 09. ぶちかましHOLIDAYYN featuring Hey Sweet / 10. ユニク口 featuring G.O(ICE DYNASTY) / 11. -Bounus Track- %
反社会ではなく脱社会的なクルーというポジション
昨年からAKLOやKLOOZなどインターネット上で評価を得てきたMCの最初のフィジカル・リリースが続き、益々盛り上がりを見せる日本語ラップ・シーン。しかし、ソロMCによるシビアなヒップ・ホップ・ゲームがある一方で、クルーとしての活動をベースに置き、そうした人間関係がキャラクターや作品に魅力を与えていることも多い。『B級映画のように2』が各所で高評価を得ていた田我流も山形のクルーstillichimiyaに所属している。stillichimiyaではメンバーがそれぞれラップをこなし、なおかつトラックやPVの撮影・出演、ナンセンスなコントまで作ってしまう仲の良さとそれを楽しんでやっていることが質の高さは見ていて気持ちがいい。そして、その田我流にも作品上で客演し合っている神奈川のSIMI LABも今のシーンを代表するクルーの1つだ。彼らも自分たちで制作したPVで名を上げ、ツアー中にはしゃぎまわっている様子を撮影した動画や雑談のようなフリー・スタイルの音源などをアップし、クルーとしての魅力を振りまいている。だが、SIMI LABに関しては、昨年、中心的な役割を担っていたQNが脱退するという大きな出来事があった。しかも、QNは同じクルーのOMSBや神奈川のヒップ・ホップ・シーンの先輩格であるNORIKIYOをDISした曲を発表し、NORIKIYOとはBeefを繰り広げることになった。そして、彼はPunpeeも在籍し、2010年代の日本語ラップのある面を代表するようなレーベルのSummitも、RAU DEFとともに抜けてしまう。
MUTANTANERSはそんなQNとRAU DEFに、RAU DEFの曲に客演もしていた渋谷のクルーX&TRICKS所属のRICK(もしくはMARVIRICK)を加えた3人を中心にしたグループだ。ちなみにMCネームを変えたのか、変名のひとつなのかは定かではないか、資料や楽曲中ではQNがN.A.R.E、RAU DEFがCAPOと名乗っている。彼らの活動は2012年5月に「Real Soon Freestyle」、2013年2月にLYNUS&CAPOとして「FUCK ABOUT」をYouTubeにアップしているのみだったが、今回、1stアルバム『MYND OF MUTANT 突然変異的反抗期』でついにその姿を現した。
アルバムはウータン・クランをパロディにしたタイトル「燃えよ、ミュータン」から始まる。そして、この曲の出だしのQNのリリックは<戦いは終わりじゃなくて始まり / 忘れたとは言わせないぜ皆様方 / Who's Back / 俺だ、なあRemeber Me / 正気じゃない / 負った大きな代償 / 早々に来ちゃったこのシチュエーション / ウィスキー片手にラジオ体操 / 天邪鬼未だ平然を装う>というこれまでの経緯を踏まえ、さらに新たなキャリアのはじまりを宣言をしているようなものだ。次曲「Speak Jobs」では与えられた仕事を従順にこなす人たちを皮肉り、だが、5曲目の「専門ドロップアウト」では学校を中退したらしき時期の心境が綴られれ、続く「-skit- Young Segare Freestyle」に顕著な仲間内の悪ふざけのようなノリが含まれている。当たり前の道を外れ、自由になることに不安と楽しさの両方を感じるが、自分たちの道を歩き続けるということが全体を通したテーマになっているようだ。トラックも80年代的なシンセやチープな電子音、サイケデリックな質感のものが多く、OFWGKTAやグリーン・オーヴァ・アンダーグラウンズなどを思わせるところがある。また、今作ではRAU DEFが特徴的なラップに加えて歌を担当している。トラックはアンダーグラウンドながら、彼の歌うメロディはUSヒップ・ホップのメジャーな曲と同じく親しみやすい。『MYND OF MUTANT 突然変異的反抗期』は名前の通り、各人の資質が混ざり合って妙な化学反応を起こしたフリーキーな音楽だ。
ヒップ・ホップのクルーはしばしばマイノリティが集団を作り、社会に反抗するというケースが多い。SIMI LABの表現の核のひとつに、黒人や白人と黄色人種との混血であることから受けるストレスをがあることを思い浮かべてもらうとわかりやすいだろう。また、stillichimiyaのように地縁というケースもわかりやすい。しかし、MUTANTANERSはそのマイノリティの集団にも地域にも適応しなかった人間の集まりだ。つまり、彼らは反社会ではなく脱社会的なクルーというポジションを、現行の日本語ラップ・シーンの中で新たに得たのだ。そして、それはQNが昨年のソロ・アルバム『New Country』で「新しい国を見つける」とラップしていたことと地続きだろう。しかし、新しい国はどこにあるのだろうか。それは音楽の中かもしれない。(text by 滝沢時朗)
記事初出時、事実と異なる表現が表記されていたので、訂正致しました。この場をかりてお詫び申し上げます。
QN、RAUDEFの過去作もチェック
>>>RAUDEFのインタビュー特集はこちら
>>>QNのインタビュー特集はこちら
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PROFILE
MUTANTANERS
彼等はこの際、止む終えずフォースの暗黒面に触れる事にした。 RAU DEF、N.A.R.E、Marvirick、出身からスタイルまで異なる三人がここに手を組む。ユニットMUTANTANERS、突然変異的反抗期!