2008年に、デンマークはコペンハーゲンで結成された、全員がまだ20代前半という4人組、Iceage（アイスエイジ）。ポスト・パンク、ハードコア、ガレージ・ロックなどの要素を余すことなく取り込んだサウンドと、圧倒的なパフォーマンスが、耳の早いリスナーの間で瞬く間に評判に。アメリカの名門レーベルMATADORからのリリースとなる今作は、熱量はそのままに、より生々しく衝動的な快作です。
Iceage / You're Nothing
【販売価格】
mp3、WAV共に 単曲 200円 / アルバム 1,500円
【TRACK LIST】
01. ECSTASY / 02. COALITION / 03. INTERLUDE / 04. BURNING HAND / 05. IN HAZE / 06. MORALS / 07. EVERYTHING DRIFTS / 08. WOUNDED HEARTS / 09. IT MIGHT HIT FIRST / 10. RODFAESTET / 11. AWAKE / 12. YOU'RE NOTHING
成熟することを拒否した、怒涛のハードコア・パンク
デビュー作『New Brigade』で初期DCハードコアを想起させる攻撃性とジョイ・ディヴィジョンなどのポスト・パンクにあった冷徹なミニマリズムを独自のソング・ライティングで昇華し、“コペンハーゲンの恐るべき子供達”とうたわれ、10代にして世界を震撼させたアイスエイジ。それから約2年を経てのニュー・アルバム『You’re Nothing』で20歳を越えた彼ら4人組は成熟したのだろうか。私はそうは思わない。彼らがこのアルバムで鳴らす凶暴なまでのハードコア・パンクは、頑固なまでに成熟することを拒否し、退廃という名の快楽の世界へ逃避しているように聴こえる。一体彼らはどんな環境で音楽を作っているのだろう。錆びれた廃墟なのか。ジュニア・シニアやミューを輩出したコペンハーゲンという街は一体どんな街なのだろうか。妄想せずにはいられない。
コペンハーゲンはヨーロッパでも有数のハードコア・シーンが息づく街であるという。近年ではSexdromeやDeath Tokenなどのブラック・メタルの漆黒さを下敷きにし、より鋭利にハードコアを追求するバンドが現れているようだ（アイスエイジは地元でDeath Tokenと共演している）。そう考えると、アイスエイジがコペンハーゲンから出た突然変異のバンドではないということがわかる。
そのような歴史的文脈の中から登場した彼らであるが、紛れもなく一筋縄ではいかない魅力を潜めている。それはこのアルバムのタイトル『You’re Nothing』からも想像がつくと思うが、成熟拒否、あるいは社会を拒否する姿勢である。そのアルバム・タイトル曲で、苛烈なハードコア・パンクが疾風怒濤のごとく吹き荒れる中、「You’re Nothing」という怒りの咆哮を聴いた瞬間、それがわかるに違いない。また、重心の低いミドル・テンポのリズムから、一気にエモーショナルなノイズ・パンクに凶暴化する「Morals」は、どことなく悲しさや切なさといった感情を揺さぶられる。これは、デビュー・アルバムにはなかった彼らの姿である。このような曲を書けるようになった彼らは、音楽性では明らかに成長しているように思う。
大人になるのを拒み続けながら、音楽性での成長を遂げたアイスエイジ。現時点では間違いなく、この背反する二面性が彼らの武器である。果たして彼らは今後どうなるか私にははっきりとは想像つかない。だが、彼らは我々の描いた夢物語を破壊し、想像もつかないようなことをやってくれる気がする。私はこの『You’re Nothing』を爆音で鳴らしながら、そう思わずにはいられないのだ。（text by 坂本哲哉）
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PROFILE
Iceage(アイスエイジ)
2008年にデンマークはコペンハーゲンで結成された4人組ポストパンク・バンド。2011年のデビュー・アルバム『ニュー・ブリゲイド』がピッチフォークでベスト・ニュー・ミュージック（8.4点）を獲得、多数の年間ベストに選出され、衝撃のデビューを飾った。2012年には単独公演とサマーソニック出演で2度の来日を果たした。
