2013/01/07 00:00

郊外で生まれたローカル・シティ・ポップ

the winey bean project / Winey beans EP

1. 雲の上から / 2. 朝方 / 3. ニュータウン(オブ サウス) / 4. ワイニー・ビーンズ

販売形式 : mp3 / wav
販売価格 : 500円

札幌出身の白崎徹率いるソロ・プロジェクト、the winey bean project。ヴォーカル、ベース、キーボードを一手に請け負う白崎を中心に、”とんねるほりーず”というバンドで共に活動している大沼卓也(ギター&コーラス)、白戸皓平(ギター)、そしてドラマー小林諒の4名によって構成されたユニットから、初音源作品『winey bean EP』が届いた。2012年夏結成と、まだ結成して間もない彼らだが、「直感で宅録し続ける」という手法から生まれたという楽曲は、思い浮かんだアイデアの熱を逃すこと無く突き詰められ、奔放で実験的だ。

マイナー調のメロディーに抑揚のついたリズム隊、浮遊するヴォーカルがサイケデリックな一面をみせる「雲の上から」で幕を開け、続く「朝方」では、夢の中を進んでいくような歌詞が印象的な前半から、後半のポスト・ロック的なインストゥルメンタル・サウンドへと繋げて、物語性を際立てている。「New Town(of South)」は、幼い頃遊んだ空き地、公園やコンクリート・ロードの回想と今現在の心情を重ね合わせた、ノスタルジックなミドル・ナンバー。合間に電車のアナウンス音声が盛り込まれており、淡々としたリズムと相俟って"ここではないどこか"へ向かわせるような、旅情に近い思いを抱かずにはいられない。爽やかなギター・リフとベースライン、軽快なハンド・クラップから始まる「Winey Beans」は、高揚感に満ちている。地に足の着いた力強さと祝祭感は、oono yuukiにも通ずるものがある。全編を通して、宅禄ならではのノスタルジックな音作りと柔らかく通りの良いヴォーカルが心地良い。

音楽と時代は、意識せずとも結びつきが生まれるものだけれど、それは地域性においても同じことが言える。例えば東京なら、情報に溢れ、何かが起こったり新しいものが生まれていくスピードが非常に速い。日夜、人が行き交い、あらゆるところで音楽が鳴り、切磋琢磨することによって多様なシーンが勃興している。一方、the winey bean projectの音楽は牧歌的だ。その朴納さや叙情性の中には、北国ならではの凍てつく寒さと澄んだ空気、広大な土地の中での暮らしによって育まれた芯がある。ただ、彼らは何も壮大なことを歌っているわけではない。日常のちょっとした時間と、そこから派生した非日常のノスタルジーを、ただひたすらに紡いでいる。音数が少なくなるほど、張り詰めた空気が露になる。

〈温もりと緊張感が混じった不思議なタウン〉と歌われる、彼らの活動拠点である札幌とその近郊のベット・タウン。訪れたことも見たこともない場所なのにも関わらず、あたかも以前から知っていたかのようにその街の情景が見えてくるのは、場所は違えど誰にとっても普遍的な「街での暮らし」から生まれた歌だからだろう。ローカル・シティで奏でられたポップスを、あなたの暮らす街の風景に重ねながら聴いてみてほしい。(text by 井上沙織)


LIVE SCHEDULE

2013/01/27(日)@札幌BOC2
YOU SAID SOMETHING x YOUMY 共同企画「POP UNDERGROUND」
open 18:00 / start 18:30
¥1000(学割あり/学生証提示で¥500引き!)
w / REVOLVER AHOSTAR / two people soup on / sono me / YOUMY / YOU SAID SOMETHING
DJ castles(indie rock、pop、dance)
出店 ocean depths distro(CD、レコード販売) / トトノワールズ(アクセサリー販売)

2013/02/13(水)@札幌SOUND CRUE
w / タカハシヒョウリ(オワリカラ,from TOKYO) / よしむらひらく (from TOKYO) and more…

2013/02/26(火) @札幌SOUND CRUE
w / 酒井泰明(moools,from TOKYO) and more….

2013/03/22(金)@札幌HALL SPIRITUAL LOUNGE
w / LOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS (from TOKYO) / comix and more…

2013/03/27(水)@札幌SOUND CRUE
w / ゆーきゃん (from KYOTO) / was and more…

RECOMMEND

oono yuuki / TEMPESTAS

ファースト・アルバムのレコーディングを機にバンド編成でのライヴ活動を本格化し、現在は総勢9名の大所帯バンドとして活動するoono yuuki。今作もそのメンバーにより、前作同様GOK SOUNDの近藤祥昭氏をエンジニアに迎えレコーディングが行なわれた。生楽器のミニマルなアンサンブルと、エレキギターの轟音が同時に鳴る様子はまるで、部屋の外に追い出された室内楽団が嵐の中でやけくそになって演奏しているよう。トランペットやスチールパン、ユーフォニウムなどが新たに加わった今作は、数多くの楽器を大部屋で同時に録音することで、全体的にクリアでそれぞれの音が粒だった印象を受ける前作よりも、個々の音が混然一体となって一つの大きなうねりを感じさせるものに仕上がっている。

>>oono yuuki インタビュ―

peno / Nebula

話題の八丁堀のアート・スペース七針が主催するレーベル鳥獣虫魚から、水谷貴次が中心となって様々なシーンで活動するメンバーが集結したバンド「peno」。トクマルシューゴ、mmm、oono yuuki、王舟といった七針界隈から、ARTLESS NOTE、the mornings、kuruucrewといったオルタナ・シーンで活動するメンバー等が在籍するフォーキー・ポップ・バンド。朴訥な歌いまわし、メランコリックなサックスのメロディー、それらを優しく包み込むバンド・アンサンブル。メロディーと即興性のゆらぎから産まれるハーモニーは、幼い頃に聴いた子守唄のようにも聴こえる暖かみのあるサウンド。メロディーと即興性のゆらぎから産まれるハーモニーは、Maher Shalal Hash BazやTenniscoatsの影響も。マスタリングは中村宗一郎が手掛けている。

>>peno インタビュ―

ROTH BART BARON / 化け物山と合唱団

2010年に自主制作による1st EP『ROTH BART BARON』をセルフ・リリース。ギター、バンジョー、マンドリン、ピアノ、和太鼓やフィドルなど多種多様な楽器を使い、壮大なサウンド・スケープと美しいメロディ、剥き出しの感情と生命力に満ちあふれた歌詞が作り出す圧倒的な世界観は、日本の音楽シーンだけに留まらず、SoundCloudをはじめとする音楽系SNSサイトから多くの賞賛コメントを受けるなど、海外での評価も高い。そんな彼らの2年ぶりとなるEPをHQD(24bit/48kHzのwav)でリリース!!

>>ROTH BART BARON インタビュ―

PROFILE

生まれも育ちも札幌出身の白崎徹(ba,vo,key, ex-とんねるほりーず)が率いるソロ・プロジェクト、the winey bean project。 結成は2012年夏から。現在メンバーは大沼卓也(gt,cho, ex-とんねるほりーず)、白戸皓平(gt, YOUMY、ex-とんねるほりーず)、小林諒(dr,cho)の4人で、日常の空いた時間の隙に、行き当たりばったりなアイデアを、直感で宅録し続けるという手法で活動中。優し目な歌声やソフトタッチで細かな音色、そして本拠地である札幌(およびその近郊)のベットタウンの情景が見えてくるような曲風が特徴的で、それを自らローカル・シティ・ポップ(?)と呼んでいる。バンド名は白崎の好きな珈琲の銘柄に由来している。

>>the winey bean project OFFICIAL HP

この記事の筆者

[レヴュー] the winey bean project

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