2012/09/05 00:00

実に、前作『ZAZEN BOYS 4』から4年ぶりとなる、ZAZEN BOYSのニュー・アルバム『すとーりーず』が完成。2011年の初頭にデモ制作を開始し、メンバーによる永遠に終わらないマツリ・セッションを経て、2012年初頭より本格的レコーディングを開始したという本作は、これまで以上に研ぎ澄まされた作品へ昇華。作詞作曲、録音、ミックス、ジャケット、PV撮影編集など、マスタリングを除く全ての制作作業を向井秀徳がマツリスタジオにて行い、 70年代より数々の名作を手がけたUKの巨匠エンジニア、Kevin Metcalfe(The soundmasters)が、マスタリングおよびアナログ・カッティングを担当。ZAZEN BOYSの新たな名作がここに誕生!!

ZAZEN BOYS / すとーりーず

1. サイボーグのオバケ / 2. ポテトサラダ / 3. はあとぶれいく / 4. 破裂音の朝 / 5. 電球 / 6. 気がつけばミッドナイト / 7. 暗黒屋 / 8. サンドペーパーざらざら / 9. 泥沼 / 10. すとーりーず / 11. 天狗

【配信形式】 mp3
【価格】 単曲 150円 / アルバム 1,500円

すとーりー性の解禁

実に4年ぶり! 待ちに待ったZAZEN BOYSの新作である。4年という期間は長いようで短かった。ライヴの度に即興を含めた新曲を次々と披露し、向井秀徳はKIMONOSとしても活動。また日比谷野音では向井秀徳が出演しっぱなしの『THE MATSURI SESSION』——所謂"向井フェス"を開催したりと、彼らの活動は止まっていたわけではなかった。ZAZEN BOYS、ソロ、KIMONOSと、いくつもの活動を続けながら、駆け抜けた4年間。その集大成がこの『すとーりーず』である。いつもなら「TENGU」と、ローマ字で書いていたであろう曲名たちも、今回は何故か漢字表記。前作『ZAZEN BOYS 4』にあるように、アルバム順に振られた数字も今回はない。心機一転か、彼らのリスペクトするレッド・ツェッペリンをなぞったのか。 ZAZEN BOYS史上初めての感覚に、「どうしたんだ向井!? 」とファンは驚きと期待感でいっぱいになったはず。もちろん期待は裏切らない作品となっている。

1曲目にして、彼の十八番である<繰り返される諸行無常>のフレーズで、高らかに"復活"を宣言した「サイボーグのオバケ」から始まり、表題曲「すとーりーず」では、鋭角でキレッキレのギター・リフを披露。いつものZAZEN BOYS、向井節が炸裂していることには変わりがないが、前作に比べて、よりバンドらしさを前面に引き出したサウンド作りが伺える。 『ZAZEN BOYSⅢ』から彼らが挑戦してきたシンセ・サウンドとバンドの融合。その完成がここにきてついに実現したように思える。骨太になったグルーヴは、タイトさを増したドラムや、より鍛錬されたベース・サウンドが進化を遂げた証拠である。 しかし、それだけではない。今回のアルバムにおいて、最も歩み寄ったのはシンセサイザーなどの電子音である。打・弦楽器の生音との違いを違和感として感じさせず、ビートにぴったりと寄り添っているのだ。 生音と電子音をバランスよく見事に共存させた「天狗」はZAZEN BOYS至上最も完成されたひとつの形である。 "ロック上級編"と謳われることの多い彼らが、今回新たにバンド・サウンドとしてのZAZEN BOYSを全面に押しつくすことで、これまでで一番聴きやすく、分かりやすい物語を紡いでいる。

ところでこの『すとーりーず』というタイトルやジャケットだが、初めて公表された際には“噺家”のことではないかと感じていた。2009年9月に立川志らくと「マツリセッション独演会」を行ったこともあり、ZAZEN BOYSと落語の関係は密接に思えるからだ。しかし、音源を聴いて感じた本当の『すとーりーず』とは、"すとーりー性の解禁"であった。ほぼ単語の羅列であったり、1節ごとに分断されたりと、セリフのように歌われていることもあったリリック。今作はこれまでとは違い、はっきりとした文脈と、流れをもったメロディアスさも披露されているのである。特に「はあとぶれいく」は「kimochi」や「黒い下着」に次ぐ 、ナンバーガールの焦燥感を踏襲したメロディアス・ソングである。さらに、心機一転の宣言がなされた「電球」など、日本語ロックの噺家・向井の力強い“すとーりー性”が今まで以上に伝わってくるのだ。

『すとーりーず』によって、パズルのピースが埋まったような、これまでの4年間がひと段落した感覚を覚えた。これから行われるツアーで、このサウンドたちがどう鍛え上げられ、こねくり回され、新しいセッションへと変化していくのか。作り上げられたサウンドをぶち壊しては再構築を続ける、芸術性の高いライヴを早く堪能したい。そんな気持ちになること間違いなし。新たなZAZEN BOYSの“すとーりー”が、今から始まろうとしている。(text by 梶原綾乃)

RECOMMEND

toe / The Future Is Now EP

2年半振りとなるtoeの新作。昨年震災チャリティとして発表された「Ordinary Days」やゲストボーカルにACOを迎えた楽曲など、現在の様々な環境、状況を一歩踏み越えた力に溢れる珠玉の4曲。

toe、インタビューはこちら

SuiseiNoboAz / SuiseiNoboAz

高田馬場を拠点に活動する3ピース・ロック・バンド・SuiseiNoboAzのデビュー・アルバム。向井秀徳がエンジニア&プロデューサーとして参加しており、向井らしさあふれる音作りをしつつも、彼らのロックな魅力をたっぷりと引き出している。

SuiseiNoboAz、インタビューはこちら

tricot / 小学生と宇宙

ルックスからは想像もつかない自由奔放な爆裂ライヴで話題沸騰。ゆとりが生んだ最終兵器、tricot!! 変拍子を多用しながらもあくまでポップな楽曲群。ライヴでの勢いをそのままパッケージしたかのようなソリッドなバンド・サウンドと、中嶋イッキュウの繊細ながらも力強い歌声が胸に突き刺さる全6曲入りミニ・アルバム!!

tricot、インタビューはこちらら

LIVE SCHEDULE

ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION 2012

2012年9月20日(木)@梅田 CLUB QUATTRO
2012年9月25日(火)@恵比寿LIQUIDROOM
2012年9月28日(金)@青森Quarter
2012年9月29日(土)@盛岡Club Change WAVE
2012年9月30日(日)@仙台CLUB JUNK BOX
2012年10月7日(日)@米子laughs
2012年10月8日(月祝)@高松DIME
2012年10月10日(水)@神戸WYNTERLAND
2012年10月12日(金)@金沢AZ
2012年10月13日(土)@岐阜CLUB ROOTS
2012年10月14日(日)@静岡Sunash
2012年11月3日(土)@高崎club FLEEZ
2012年11月4日(日)@水戸LIGHT HOUSE
2012年11月9日(金)@長野LIVE HOUSE J
2012年11月10日(土)@新潟CLUB RIVERST
2012年11月11日(日)@熊谷HEAVEN'S ROCK
2012年11月16日(金)@岡山IMAGE
2012年11月17日(土)@徳島club GRIND HOUSE
2012年11月18日(日)@松山サロンキティ
2012年11月20日(火)@大分DRUM Be-0
2012年11月21日(水)@長崎DRUM Be-7
2012年11月23日(金祝)@鹿児島SR HALL
2012年11月24日(土)@熊本DRUM Be-9
2012年11月30日(金)@札幌PENNY LANE 24
2012年12月8日(土)@広島CLUB QUATTRO
2012年12月9日(日)@福岡DRUM LOGOS
2012年12月19日(水)@渋谷AX
2012年12月24日(月祝)@名古屋CLUB QUATTRO

各公演の詳細はこちら→ ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION 2012

PROFILE

向井秀徳(Vo,G,Key)を中心に活動するニューウェイブ/ギター・ロック・バンド。ナンバーガール解散後の2003年から本格的に始動し、同年8月に行われた夏フェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL」で初ライヴを行う。2004年1月には1stアルバム「ZAZEN BOYS」を発表。向井を中心にアバンギャルドかつ即興性の強い、複雑なバンド・アンサンブルで大きな注目を集める。2004年末でドラムのアヒト・イナザワが脱退し、松下敦が加入。2007年2月にはベースの日向秀和が脱退し、現在は向井、松下、吉兼聡(Gu)に吉田一郎(Ba)を加えた4名で活動している。

>>ZAZEN BOYS WEB

この記事の筆者

[レヴュー] ZAZEN BOYS

TOP