2012/07/14 00:00

驚異のロング・セールス『スクーターズ/コンプリート・コレクション』から8年。 作家陣は橋本淳、筒美京平コンビをはじめ小西康陽、宇崎竜童、伊集院幸希、志磨遼平 (ドレスコーズ ex毛皮のマリーズ)と個性あふれるメンバーを集結させ新作『女は何度も勝負する』を完成させたスクーターズ。30年振りの新作をリリース。

スクーターズの復活アルバムに小西康陽、志磨遼平らが曲を提供!

スクーターズ / 女は何度も勝負する

【配信形態】
mp3 単曲 : 150円 / アルバム : 1500円
WAV 単曲 : 200円 / アルバム : 2200円

30年を経過して大人になった今を表現する

1978年、パーティ・バンドとして結成されたスクーターズ。発表したアルバムは、82年リリースの『娘ごころはスクーターズ』のみ。そのリイシュー盤である『GIRLS TALK』が91年にリリースされている。『GIRLS TALK』LPの帯には「こういうバンドがやりたかったんだ! いつ聴いてもそう思っちゃう、スクーターズは僕が知っている最高のパーティー・バンド です。by 小西康陽氏」と絶賛のコメントが寄せられ、「東京ディスコナイト」を始め、その楽曲は、今もダンス・フロアでプレイされ続けている伝説的なバンド… だったので、この新作リリースという「奇跡」にはまず単純に驚きながら、歓喜しているわけですが。

バンド・リーダー信藤三雄を中心に、幾度かのメンバー・チェンジもあったようだが、ブラック・ミュージックを愛する彼らは、自らを東京モータウンサウンドと称し、シュープリームス、ヴァンデラス、ロネッツ… 60年代のガールズ・グループやモータウン・サウンドのキュートで切ないあの音楽を東京でしかできない形で再現してみせた。パンク・ニューウェーヴ全盛の時代にあって、ある意味そのスタイルは最先端であり、ニューウェーヴそのものだったのかもしれないとも思うが、要は趣味嗜好全開の愛すべきエンターテイメントであり、最高のパーティ・バンドだったのだ。もちろん、僕は当時を知らないし、その楽曲からただただ想いを馳せるだけの若輩者ですけれど。

『女は何度も勝負する』と題されたこの30年ぶりのニュー・アルバム。最大の魅力であるロニーの胸を締め付けられるような歌とコーラス・ワークも健在で、涙腺緩みっぱなしである。いきなりの「Tight'n Up」ビートに、2010年に逝去されたキーボードの中西保子作詞・作曲の未レコーディング曲「神様お願い」、その中西保子にささえられた小西康陽が書き下ろし楽曲「かなしいうわさ」、「L.O.V.E」の躍動感あふれるカヴァー。その他にも、橋本淳&筒美京平による「Hey girl」、志磨遼平(ドレスコーズ、ex.毛皮のマリーズ)作曲「Loveless」、宇崎竜童作曲「スクーターズのテーマ」など、楽曲提供者にもニヤリとさせられる。

それにしても、これはまさに、30年後の東京モータウン・サウンドだ。そのサウンドや楽曲だけでなく、当時を再現するのではなく、30年という時間が経過して大人になった今を表現する歌詞。だけど、結局何も変わらない気分がそこにあるという事実。ECDのリリックを借りれば、「やりきれないことばっかりだから、レコードを聴いている、今日も」というあの刹那的な気分。パーティは朝が来れば終わるし、年齢を重ねれば、様々なしがらみも増え、何もないようで様々な出来事がやってきては過ぎていく。考え方も生活も変わり、無邪気なだけではいられない。それでも、楽しい時、悲しい時には、何歳になってもパーティで踊りたくなるものだろう。パーティは、30年前も今も、変わらず優しく、切ない。「Hey Girl」を聴きながら、こんな分かったようなことを書いてみて、ふとその凄さに気付いた気分。何なんだ、今も変わらず、最高のパーティ・バンドじゃないか。

蛇足だけど、シュプリームス、ロネッツ、ヴァンデラスに、スリードッグナイト、「Tight'n Up」といったモータウンを軸に、ブラック・ミュージックをスクーターズ流儀で解釈したポップ・ソングが連なる中、「REMEMBER 〜あの頃 夢に生きて〜」はTHE FLAMING RIPS「Race For The Pride」を想起させられてとても興味深いのだけど、どうだろう? いや、「REMEMBER 〜あの頃 夢に生きて〜」は、とんでもなくかっこいいし、とんでもなく切なく愛おしい楽曲だから、どちらでもいいのだけど。ああ、本当に蛇足だ。そんなこといいや。もうちょっと蛇足なことを書こうかと思ったけど、そんなことどうでもいいや。これから、クラブのダンス・フロアでもレコード屋でもライヴ・ハウスの転換でもスクーターズがたくさん流れ、たくさんの人々がスクーターズの曲に合わせて踊り、泣き、恋をする。

1981年のように、皆がスクーターズを愛する季節の始まりだ。(text by 佐々木健治)

記事初出時、アルバム・タイトルが間違って表記されていたので、訂正致しました。この場をかりてお詫び申し上げます。

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PROFILE

カリスマ・アートディレクターの信藤三雄がギタリスト兼リーダーを務めていたことで知られるスクーターズは、ロネッツやシュープリームスといったガールズ・グループをひな形に、モータウン・テイストも注ぎ込んだ伝説のバンド。1980年代初頭に1枚のアルバムと1枚の7インチシングルのみを残し、わずか2年の活動で解散している。小西康陽がリスペクトを表明し、1992年には小泉今日子が「東京ディスコナイト」をカヴァーしたことなどで後の世代にも知られるようになった。2003年には初CD化された音源を含むアルバム『スクーターズ/コンプリート・コレクション』が発売され、驚異のロング・セールスを記録している。

この記事の筆者
佐々木 健治

新宿ROLLINGSTONEレジデントDJ。 現在、毎週木曜日tutti fruttiをはじめ、平日週末問わず、プレイ中。 新宿を根城とするロックパーティ『Lamp session』主宰(現在、活動休止中)。 音楽に関する文章を書いてます。 ROCKが主食の雑食主義者。FUNKでPUNK。年代、ジャンルを縦横斜めに駆け巡り、GROOVEを生み出す。 日々、勉強。日々、ほろ酔い。

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