2012/06/26 00:00

ワンマン・ライヴ直前!! 虚弱。1年半振り全メンバー・インタビュー!

つくづく目が離せないバンドだ。『孤高の画壇』を経て、またしても“虚弱。”は変化の時期を迎えようとしている。何をおいても、いまの彼女達はライヴ・アクトとしての進化が目覚しいし、そこから新しい挑戦への意欲がまたふつふつと湧きだしているのが伺えて、とにかくスリリングなのだ。

そこで今回はメンバー全員にお集まり頂き、この4人が生み出すケミストリーの深部に迫ってみることにした。来たるべき渋谷WWWでのワンマン公演は、『孤高の画壇』リリース後の彼女たちにとって、ひとつの到達点となるだけでなく、次のステージへと駆け上がる大きなステップにもなるだろう。

インタビュー&文 : 渡辺裕也
写真 : yukitaka amemiya

disk union限定CD-R & 7"アナログを7月4日に発売決定!!

ガールズ・ロックの極北。今年3月にリリースしたデビュー・アルバム『孤高の画壇』が未だヒットし続けている4人組インスト・ロック・バンド“虚弱。”が、早くも7″アナログ盤『-affection』と、disk union限定ニュー・シングル『独裁者の孤独』をリリース。

【disk union限定シングルCD-R詳細】
disk union限定シングル『独裁者の孤独』CD-R 500枚限定
価格 : ¥500(税込)
トラック : 1. 独裁者の孤独 / 2. contraception
リード・トラックでもある「独裁者の孤独」はライヴでも人気の楽曲であり初の音源化となる楽曲。これぞ虚弱。とも言えるような攻撃的かつ病的なキラー・チューン。「contraception」はライヴでも未発表の新曲。美しく繊細でありながら感情に訴えかけてくる虚弱。節全快な良曲。

【7"アナログ盤詳細】
7"アナログ『affection』
価格 : ¥1,050(税込)
トラック : 1. affection / 2. affection(サオリリス Remix)
7″アナログ盤「affection」は、デビュー作『孤高の画壇』にも収録されている「affection」の7インチ・アナログ盤限定シングル。初音ミクをフィーチャーしたこの楽曲は、邦インディーロック界と初音ミク界との架け橋的な存在にもなり多くの話題となっている。B面にはアニメキャラのコスチュームでフロアを沸かすカリスマアニソンDJ、サオリリスのリミックスを収録。

7月11日@渋谷WWWにて、ワンマン・ライヴを開催!
【日程】
2012年7月11日(水)@渋谷WWW
OPEN : 19:00 / START : 19:30

【チケット】
前売り : 2,500円(+1D) / 当日 : 3,000円(+1D)
チケットぴあ : 【Pコード : 168-876】] / http://t.pia.jp/ / 0570-02-9999
ローソンチケット : 【Lコード : 76198】/ http://l-tike.com/
イープラス : http://eplus.jp/

★虚弱。ワンマン・ライヴへ2組4名様をご招待!
件名に「虚弱。ワンマン・ライヴ 招待希望」、本文に氏名、住所、電話番号をご記入の上、「info(at)ototoy.jp」までメールをお送りください。当選者の方には追ってメールにてご連絡します。
応募締切 : 2012年7月9日24時まで
※あらかじめ info(at)ototoy.jp からのメールを受信できるよう設定してください。
※当日、ドリンク代のみ頂戴いたします。

ファースト・アルバムを高音質音源で配信中!

虚弱。 / 孤高の画壇
【価格】
HQD(24bit/48kHzのWAV) : 単曲 200円 / アルバム 1500円
MP3、WAV(16bit/44.1kHz) : 単曲 150円 / アルバム 1300円

それぞれが別の方向性を守ってくれている(壷内)

——先日みなさんがステージに並んでいる姿を久々に見て、改めて不思議なバランスのバンドだなと思ったんです。単純に、この4人がひとつのクラスにいたとしたら、とても同じグループになるとは思えないというか。

まにょ : まあ、ありえないよね。
新井深雪(以下.新井) : そうだね。確かにクラスメイトだったら間違いなく海ちゃんと仲良くなろうとは思わなかったわ。
海野稀美(以下、海野) : えー! ひどい!
新井 : だって見た目も派手だしさ。まにょもまにょでなんか怖いし、壷内は何言ってるかよくわかんないし。
壷内佳奈(以下、壷内) : ひどいな(笑)。

左から壷内佳奈(ギター)、新井深雪(ベース)、海野稀美(キーボード)、まにょ(ドラム)

——(笑)。なので、一人一人が、どういう接点をもってつながって、このバンドにつながっているのかを今日は改めて教えてもらいたいと思って。

まにょ : あ、それなら私、言えると思う。まず新井ちゃんは飲み友だよね。
新井 : ああ、確かに。
まにょ : 壷内とは何気に付き合いが古いから、普通に友達。音楽の趣味が合うっていうのも元々あったしね。で、海ちゃんはガールズ・トーク。服とか化粧品とかね。
新井 : そうだね。でもまにょと私は、はじめはお互いにこいつは無理だと思ってたよね(笑)。お互いに怖いやつだと思ってた。だけどしゃべってみたら意外と仲良くなっちゃって。良くあるじゃないですか? ギャルとイモくさいやつが実際は仲良かったりすることって。

——別に新井さんがイモくさいとは思わないけど(笑)。

新井 : まあ、普通の方っていうか。
壷内 : 新井ちゃんは普通とは違うよ。普通は私でしょ。目立たないもん。
新井 : 確かにワル目立ちするタイプなのかも。ボケーっとしているだけなのに、なぜか怖がられて友達が出来なかったりね。で、私と海ちゃんの関係っていうと、私は海ちゃんからいろんなことを勉強しているっていうところがあって。
海野 : あ、なんか褒められてるっぽいな(笑)。
新井 : 褒めてるよ。それこそオシャレのこととか。私とはまったく違う考え方を持っているから、すべてが新鮮に感じるんですよね。例えばこの4人を感情的な人から理論的な人の順番で横並びにしたら、私と海ちゃんが端っこになる感じだよね。
海野 : あぁ、前もそんなことを言ってたね。性格が合わないわけではないんだよね。私は、そうだな。壷内さんに関してはなぁ。特にないというか。壷内さんは普通にみんなと仲良くなれる人なんですよ。
壷内 : そうだね。昔から特定の人とつるむっていうことがなくて。広く浅くなのかな。目立たないけど、なぜか顔だけはみんなに知られているというか。ただ、変に真面目すぎるところが自分にはあるんですよね。バンドを組んだばかりの頃は、その性格が悪く作用して、いわゆるバンド周りの世界とうまく折り合いが付けられないところがあったんですけど、その付き合い方をメンバーのみんなから教えてもらったところはあると思う。変に生真面目だった自分をうまく周囲になじませてくれたのがみんなだな。だから、このバンドって確かに個性はバラバラですけど、それぞれが別の方向性を守ってくれているというか、頼れるポイントがひとりひとり明確にあるんです。私が苦手なところを3人のうちの誰かが必ず担ってくれている。
新井 : そうだね。事務的な能力は海ちゃんが高くて、コミュニケーション能力はまにょ、みたいな感じで。

——どうしてもみなさんって、まずは「女性バンド」として見られることが多いですよね。そのことについては率直にどう感じていますか。

まにょ : あんまり気にならなくなったよね。
新井 : それこそ今ってギャルバンが多いし、しかもクオリティの高いものを出せている人たちがたくさんいるから、そこに自分たちも混ざっているように感じてもらえているなら、それはそれでいいと思ってます。
壷内 : その波に自分たちも乗りたいっていう気持ちは常にあります。若手女性バンドがたくさんいるなかで、自分たちにもアピールできるものがあればいいかなって。
新井 : ただ、いわゆる女の子っぽさみたいなところで押していけるようなバンドじゃないですよね。仮にそういうことができたとしても、「それって何歳までやれるの? 」って思っちゃうし。
海野 : みんなの話を聞いてて思ったんだけど、私たちってバラバラなようで、みんな女の子っぽくはないんだよね。干渉し合わないし、むしろひとりで勝手に動き回っちゃうしさ。
まにょ : もしかすると、そのいわゆる女の子っぽい人たちにはあまり馴染めない4人なのかもしれないね(笑)。
新井 : 例えば、女の子って「だよねー」って言い合っていくうちに仲良しが決まっていく感じがありますよね。この4人に関してはそれはなくて。「それ、ちがくない? 」って思うことがあっても全然OKっていうか。
壷内 : そうだね。お互いに合わせないね。スタジオに入っている時とかも、まにょと海ちゃんはけっこうおとなしくて、私と新井ちゃんばっかりずっとしゃべってるし(笑)。しかも私が話すことってホントどうでもいいことばっかりだし。
新井 : 私がそれを拾っていく感じだよね(笑)。

——なんかそれも壷内さんっぽいですね。なにか自分のなかで思うことがあると吐き出さずにいられないのかな。

壷内 : あぁ、そうかもしれない。溜めておけないんですよね。必ずしも音楽の話ではないんですけど、自分のなかで面白いと思うネタがあったら、みんなに言いたくなるし、内に秘めておけないんです。練習で集まるたびに話したくなることがたくさんたまっちゃってて。もちろん曲のイメージについて長い時間を割いて話すこともありますし。

——では、『孤高の画壇』というアルバムをつくるにあたっては、メンバー間でどんなイメージの共有があったんでしょうか。

壷内 : とにかく“虚弱。”が世に出す初めての作品になるので、これが“虚弱。”ってこういうバンドなんだと思われてもいいと言えるものにしたいと話していましたね。
新井 : 音の好みに関して言ったら、4人それぞれ違うもんね。
海野 : そもそも私たちって、インスト・バンドをやりたくて集まった4人っていうわけじゃないから、歌を取り入れることにも抵抗はないし、それこそ今までもそういう話があったからこそ、今回のボーカロイドなんかもあって。
新井 : 思いついたことをやっているだけで、別に突飛なことをやろうっていう意識もないしね。

——あの曲は、もともとゲスト・ヴォーカルを入れるっていう案から派生して、ボーカロイドに行き着いたっていう話だったけど、それはバンドに合う声がなかったというより、この4人に入り込めるようなキャラクターがあまりいないんだろうなと、あとになって思ったんですが。

新井 : それは確かにそうですね。すごい人はたくさんいるけど、この人が入ってくれたら完璧だって思える人はなかな浮かばなかった。でもミクさんだったら、こっちから歩み寄ることも、逆に近づいてきてもらうこともできちゃうから。

——一年半前にみなさんとお話した時点だと、僕は“虚弱。”ってもっと耽美なバンドなのかと思っていたんです。目指しているところに向かってどんどん完成度を高めていくタイプなんじゃないかなって。でも『孤高の画壇』を聴いてその印象は変わったんですよね。とにかく雑多だし、なにを目指しているのかが、なかなか見えてこないところに面白さがあるバンドだと思った。どの曲も、ひとつのなかに数曲分のアイデアを詰め込んでいるような感じだし。

新井 : 要はみんな欲張りなんですよ。とにかく「あれもこれもしたい! 」っていう人たちの集まりだから。その割にみんな先のことを考えてないし。それがまた女の子らしくないんだろうね。
海野 : もしかすると来年はこの4人の中で誰かが歌ってたりね(笑)。

かっこよくなきゃ男でも女でもだめだと思う(新井)

——みなさんの活動はこの1年で一気に加速した印象があるんですが、そうしたなかでシンパシーを感じられるようなミュージシャンとの出会いはありましたか。

壷内 : あぁ、そういうことはあまり考えてなかったなぁ。でも、「この人たちは、もしかして私たちと同じようなことをやろうとしているのかな」って思うときはあるかも。
まにょ : さっきの話に戻っちゃいますけど、いまはギャルバンみたいな言い方をされても抵抗はないけど、昔はやっぱりとんがりたかった時もあったんですよね。「女だからってバカにしないでよ! 」みたいな。
新井 : あったね。反骨精神的なやつ。
まにょ : 壷内も私も演奏が終わったあとにステージで機材を倒してそのまま倒れ込んでたり。
海野 : それを私が最後に直していくっていう(笑)。
まにょ : だから、たまに女の子のバンドを見ていてその時の自分を見ている気分になる時が最近はありますね。特にドラムって体格的な意味でも男の人と比べられることが多いから、性別を強く意識している女の子の気持ちは理解できるような気がします。増えているとは言っても、やっぱり女の子ってバンドをやっている人たちのなかではマイノリティだし。
新井 : それはベースだってそうだよ。女の子なのに激しくベース弾いているやつがかっこいいみたいな見られ方ってすごくいやだった。女だからかっこいいんじゃなくて、かっこよくなきゃ男でも女でもだめだと思うから。そこで判断が甘くなる人もけっこういるような気もしてて。

——女性バンドっていうレッテルを貼ることで思考停止してしまう聞き手も確かにいると思う。でも、同時に“虚弱。”にはフェミニンな魅力もあると思うんですよ。

新井 : どんなにとんがっても性別ばかりは抗えないものだし、そこに抗ってもしょうがないと思ったんですよね。それに、聴く人が聴けば、男にはできないものを自分たちがやっているってことはわかるんですよね。

——アルバムを出したことで自分たちへの周りからの理解度は高まったと思いますか。

壷内 : それは思います。
新井 : 初音ミクの曲に関して批判的なことを言う人もいたみたいですけど、それも表層だけを見た人の意見だと思うし、なにより自分たちは自信をもってやったことだったから。
壷内 : それ以上に私たちの曲を通して初音ミクに興味を持ったっていう人の話もたくさん聞けて、それはすごく嬉しかったですね。単純にやってよかったと思えました。
新井 : 逆に初音ミクを好んで聴く人たちにとっても、インスト音楽への架け橋になってくれたら嬉しいよね。

——間もなくその「affection」のアナログ盤もリリースされますけど、そこにはリミックスも収録されるんですよね。

まにょ : はい。これは完全にわたしの趣味なんですけど、何年か前に〈DENPA!!!〉っていうイベントで、サオリリスさんっていうコスプレイヤーDJに衝撃を受けたんです。コスプレとDJっていう相反する二つのものの結びつきがすごく面白いなあと思って。私たちの「affection」も、バンドとボーカロイドという意外性のある二つの組み合わせですよね。そこに何か繋がるものを感じて、思い切ってサオリリスさんにリミックスをお願いしてみたらOKしてもらえたんです。

——やっぱり「affection」を作ったことはバンドの自由度を広げたんですね。

新井 : 単純に自分たちの楽曲をまったく違うものに変えられるのってすごく面白いと思って。
まにょ : やっぱり馴れ合いになるのが一番つまらないよね。どんどん自分たちの音楽を外に広げていきたいんです。
新井 : もっと認知されたいしね。賞とかもらってみたいよ(笑)。

——そこで現在控えているワンマン・ライヴは、きっと次作に向かう前の大きな節目にもなるんじゃないかと思っているんですが。

新井 : そうですね。ただ、私たちはファーストだけよくてもしょうがないと思っているから。きっと次のものを作り出したら、もう1枚目はあくまでも1枚目であって、その時に作っているもののことがきっと大事になってくると思う。だから今回のアルバムで何をやったかは、あまり次とは関係ないような気がする。その時にやりたいと思ったことをやるだけだから。私は基本的にライヴを観てほしいっていう気持ちが強いし。
まにょ : これはみんなもきっと同じなんじゃないかなと思うんですけど、私はそこまでCDへの強い思い入れがなくて。そういうと語弊があるかもしれないけど、少なくともアルバムを出すことが一番重要だとは思っていないんです。それこそ初音ミクの曲はこうして作品にも収録されたけど、元々はニコ動に上げたいっていうところから始まったアイデアでもあるから。そういうアイデアで私たちは勝負したいっていう気持ちが強いので、作品云々ではなく、とにかく面白いことを形にしていきたいんです。だから、もし2枚目を出すことがずっと先になったとしても、その間にいろんなアイデアを思いついたタイミングでどんどん実現させていくと思うから、次のアルバムについてはそこまで深刻に考えていないんです。

——とにかく興味をもったものをすぐに発信していきたいと。間もなく限定シングルも出ますけど、そこにはまた新機軸もあるのでしょうか。

まにょ : 『孤高の画壇』を作るにあたって、作品のバランスや聴きやすさを意識したことがあったんですけど、シングルではそこからまた別の新しいアプローチに移行しましたね。
壷内 : アルバムで聴けた楽曲とはかなり印象が違うと思います。あ、そういえば前に「saying his prayers」がアンサー・ソングだっていうお話をしたじゃないですか。シングルにはそれが入っているんです。出す順番が逆になっちゃったんですけど。

——「独裁者の孤独」だよね。ずいぶん前にマイスペースに上げてた曲だよね。

新井 : 構成はその時のままだけど、ピアノが変わって、ものすごくかっこよくなったよね。
海野 : あ、ホント? やった(笑)。もともとうるさい感じの曲だったから、ピアノを入れる余地が見つけられなかった曲だったんだけど、ラスボスと戦っている時のBGMみたいな感じでつけてみたらうまくハマってくれて。
壷内 : あ、ホントだ! 確かにラスボスっぽい!
海野 : 実際にすごく苦戦したしね。
まにょ : 私たちって、インストをやっているからこそ、その形態の限界を見ているところもあって。そういう意味ではけっこうみんなリアリストなんですよね。
新井 : そうそう。だって同じようなことを繰り返してるのってバカみたいじゃないですか。
海野 : もー。そうやってすぐバカとか言わないでよ!

——(笑)。既存のやり方に乗っ取ってやる必要を感じていないってことだね。

新井 : そうそう。バカっていうより、私たちはけっこう冷静なバンドなんです(笑)。
海野 : またバカって言った! いまのは4人の意見じゃないですから(笑)。

PROFILE

虚弱。
平成生まれの女子達による、病的且つどポップなインストゥルメンタル・バンド。メンバーは壷内佳奈(ギター)、新井深雪(ベース)、まにょ(ドラム)、海野稀美(キーボード)の四人組。2007年、壷内、海野と同高校のメンバーで虚弱。を結成。2008年秋、幾度かのメンバーチェンジを経て新井、まにょが加入。本格的に活動を始める。2009年に1stDemo『kabetosogy』をリリース。同年、閃光ライオット関東決勝大会に進出。2010年には2ndDemo『donguribouya』を発表。ポスト・ロックを基調としながらも、その概念を打ち破るほどポップな楽曲を特長としている。デビュー前から既にライヴでの支持層が非常に厚く、2011年にはZAZEN BOYS、the telephones、NATSUMEN、unkie、LOSTAGEらとの対バンを果たした。

虚弱。 official HP

[インタヴュー] NOKKaNa

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