2012/04/05 00:00

平賀さち枝、新作ミニ・アルバムが完成

デビュー作から1年。SSW平賀さち枝から届いた最新ミニ・アルバムは、「誰もが口ずさめるような曲を」という本人の言葉通り、より訴求性を持ったメロディと言葉、それに寄り添うように奏でられる色とりどりのバンド・サウンドが、彼女の新たな側面を開示させることに成功している快作。録音には、田中馨(ショピン、ex-SAKEROCK)、野村卓史(グッドラックヘイワ、NATSUMEN、WUJA BIN BIN)、内田武瑠(ショピン)等が参加、録音/編集は注目の若手エンジニア葛西敏彦が担当しています。新しい季節の始まり、平賀さち枝の第二章がはじまります!

平賀さち枝 / 23歳

1. 今は帰らない
2. 江の島
3. 目黒川
4. No Music, No Life
5. 春が来そうでさびしいだけ
6. パレード

新しい季節を彩る、みずみずしい歌声

野に咲く花のように可憐な歌声と、春風のようにやわらかいギターの音色。都内を中心に活動する平賀さち枝は、そのあどけない雰囲気と、何気ない日常の風景を色鮮やかに描き出す鋭い感性のギャップが印象的な、気鋭のシンガー・ソングライターだ。

彼女は2011年にデビュー・アルバム『さっちゃん』を発表。同作は高い注目を集め、各地でロング・ヒットになっている。また、奇妙礼太郎や住所不定無職とともにジャックス・カードの音楽キャンペーン「あなたの夢に応援歌」に起用され、FM802主催の音楽フェスティバル「ミナミホイール2011」や映画「恋はパレードのように」に出演するなど、活躍の場を全国に広げている。

今回発表された『23歳』は、『さっちゃん』以来1年ぶりのリリースとなるミニ・アルバム。前作では彼女の弾き語りが中心だったが、本作ではショピンの田中馨(ベース)と内田武瑠(ドラム)、グッドラックヘイワの野村卓史(ピアノ)をゲストに迎え、ポップなバンド・サウンドにも挑戦している。

オープニングを飾る「今は帰らない」は、上述のジャックス・カードのキャンペーンで発表された、叙情感溢れるアップ・ナンバー。同キャンペーンの映像では力強い弾き語りを披露していた彼女が、本作ではバンド・メンバーの個性を活かした、矢野顕子を彷彿させるジャジーでコケティッシュなサウンドを披露している。続く「江ノ島」は、初夏の空気を閉じ込めたような清涼感のあるメロディと、荒井由美や太田裕美を思い起こさせるレトロなサウンドが魅力のアップ・ナンバー。彼女のキュートな姿を存分に楽しめるプロモーション・ビデオも公開されているので、ぜひ見てほしい。

「目黒川」はライヴでもお馴染みのしっとりとしたバラード。一音一音を丁寧に鳴らしたギターの上で、青葉市子や小野リサのようなみずみずしい歌声を響かせている。初夏の鮮やかな光景が目に浮かぶ歌詞にも注目。また、「No Music No Life」も弾き語りだが、こちらは爽やかなメロディのミディアム・バラード。「誰もが口ずさめるような曲を」という本作の方向性が、もっともわかりやすく表れているのはこの曲だろう。それに続く「春が来そうでさびしいだけ」はわずか1分の間にひとつの物語を盛り込んだ異色の楽曲。「目黒川」や「No Music No Life」にも当てはまることだが、本作の彼女はそれまでに比べ、歌声はより伸びやかに、演奏はより研ぎ澄まされ、洗練されてきている。

アルバムの最後を飾る「パレード」は、明るく華やかなアップ・ナンバー。ジャクソン5やシュープリームスを彷彿させる、軽快でリズミカルな3人の伴奏をバックに、これまであまり見られなかった陽気ではつらつとした歌を披露している。完成されたポップスの様式が、荒削りな彼女を都会的な女性に成長させたのだと思う。

純朴さの残る少女は、1年のときを経て高いレベルのシンガー・ソングライターに成長した。洗練されたアコースティック・サウンドと、軽快なポップ・ナンバー。全く異なる二つの面をゆっくりと楽しんでほしい。(text by 高野裕介)

RECOMMEND

mmm / ほーひ

前作に引き続き、下田温泉(ドラム)、千葉広樹(ベース)、宇波拓(エンジニア、ギター他)を基本メンバーに、さらに多数のゲストを迎えた演奏の記録。心に染み渡るビタースイートな歌声、思わず顔がほころぶユーモア。和やかなフォーク・ポップや、GS調のアップテンポなガレージ・ロック、黒人音楽の雰囲気を感じさせるスローなバラードまで、すっと肩の力を抜かせてくれるようなあたたかな歌、全12曲。

麓健一 / コロニー

中村宗一郎氏をエンジニアに迎え、初のバンド編成でのスタジオ・レコーディングを敢行。スッパマイクロパンチョップによる予測不能で遊び心溢れるドラミング、それを支える緻密でふくよかな旋律の端子のベース、お転婆でありながら流れるようなホソマリのピアノが加わり、瑞々しい躍動感が生まれ、新たな側面を提示することに成功している。一方で自宅録音されたシンプルなアコースティックナンバーは言葉とメロディの魅力をストレートに伝えている。

PROFILE

1987年生まれ。岩手県出身。2009年に作詞、作曲、ギターをはじめる。ギターが弾けずアカペラなどでライブ活動を開始。数ヵ月後にはギターを弾きながら歌うようになる。2010年、高円寺無力無善寺で毎月定例ライブを行う。都内各所で活動。ファースト・アルバム『さっちゃん』を2011年4月にkitiよりリリース。2011年7月にはJACCSカードの「あなたの夢に応援歌」に参加、10月にはFM802主催の「ミナミホイール 2011」出演。アルバム『さっちゃん』は各所で2011年のベスト・アルバムに選ばれるなど、現在もロングセラーを続けている。

>>平賀さち枝 WEB

この記事の筆者
高野 裕介 (Yusuke Takano)

東京都在住の音楽好き。 中学生のときに、電気グルーヴにはまって以来、 マリリン・マンソンにTLC、カーティス・メイフィールドにジミー・スミスと、次々に音楽の趣味を広げて今に至る。 俺の明日はどっちだ!?

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