2012/01/20 00:00


CONFLICT / YELLOW BEAT
ビート・メイカー・デュオ CONFLICTがオリジナル・レーベルBEATBAKAYALOWより、5年振りの新作ミニ・アルバム『YELLOW BEAT』をリリース。さらに今回、環ROYの『BREAK BOY』に収録された「CREATION」をピアノ・ネタとラディカルなビートでセルフ・リミックスした「CREATION(裏Ver)feat.環ROY」を収録。巷に溢れるものとは一線を画す渾身のビート・ミュージック。

【TRACK LIST】
01. Spacesuit / 02. Tooon / 03. Shimokita / 04. Dororo Beats / 05. YBSG / 06. Let's Get Down / 07. Dororo Beat(Himuro Yoshiteru Remix) / 08. Shimokita(RLP Remix) / 09. Specesuite(BUN Remix) / 10. Creation(裏Ver)feat. 環ROY

※アルバム購入者には、デジタル・ブックレットが同梱されます。

シンプルかつ躍動的なビート・ミュージック

KABEYAH&SHIROの2人によるビート・メイカーからなるCONFLICTが、2011年に発足させた自らのレーベルBEATBAKAYALOWから満を持して放つ、5年振りの新作『YELLOW BEAT』。今作はレーベル発足第一弾としてリリースされた12インチ『YELLOW BEAT E.P』に収録された6曲に、新曲、Remixを加えたミニ・アルバムという形態としてリリースされる。

だが、ミニ・アルバムだからといって侮ってはならない。この『YELLOW BEAT』では、自らの出自であるヒップ・ホップの枠組みを基調としつつ、その外部にある、ポスト・ダブステップ、ポスト・チルウェイヴ以降のベース・ミュージック、シンセ・サウンドに接続することで、新たなビート・ミュージックの可能性を提示しているといっても大袈裟ではないだろう。それほどまでに、彼らの打ち鳴らすビートには底知れぬ魅力が潜んでいるのだ。

CONFLICTのトラックにおける80~90くらいのBPMを刻むロー・ファイなビートは、Jay DeeやMadlibの影響下にあることは想像に難くない。だが、先行12インチにも収録された「SPACESUIT」や「Dororobeats」における極太のベース・ラインにまるで図ったかのように施されている深いダブ処理には、現在進行形のベース・ミュージックを自らの鋭敏な皮膚感覚で解釈し、再構築した彼らのユーモアが浮かび上がってくる。また、国内屈指のトラック・メイカーであるBUNを起用した、「SPACESUIT(BUN Remix)」では、グリッチ・ノイズのような音の粒子の狭間から立ち現われては消えるビートによって繊細な音響空間が作り上げられている。このように、リミキサーの人選にも彼らの音楽的背景の豊穣さを感じ取れる。これらはまるで、昨年11月に突如リリースされたベスト盤『INFINITE IN ALL DIRECTIONS』において、LAのLow End Theoryの主宰であるDaddy Kevによって過去の楽曲が新たにマスタリングし直され、そのヒップ・ホップからダブ、エレクトロニカを縦横無尽に行き交う音響世界が再び呼吸し始めた、INDOPEPSYCHICSのトラックと図らずしも共振しているようでもある。

2006年にリリースされた前作『Confirmation+Departure』は、インスト・ヒップ・ホップにおける実験性とエレクトロニカ、アンビエントにおける快楽性と互いに国境を越える瞬間が幾度なく訪れる、新世代ブレイク・ビーツの幕開けを予感させるような破壊力抜群の作品であった。だが、今作を前にしては、前作は彼らにとって通過点に過ぎなかったことが手に取るように感じられる。それはすなわち、この『YELLOW BEAT』は彼らの創造するシンプルかつ躍動的なビート・ミュージックのさらなる更新に他ならないということだ。癒しばかりを追い求め、インストのビートがヒーリング・ミュージックとして機能してしまっているこの日本において、この『YELLOW BEAT』がそれに抗う鏑矢となってほしいと切に願う。まだ、日本のビート・ミュージックは終わっていない。(Text by 坂本哲哉)

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この記事の筆者
坂本 哲哉

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[レヴュー] CONFLICT

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