2012/01/13 00:00

2009年、デビュー・アルバム『A Brief History of Love』をUK老舗レーベル4ADよりリリースし、瞬く間に世界の音楽シーンに躍り出た2人組のロック・バンド、The Big Pink。彼らの代表曲ともいえるシングル『Domino』は英音楽誌「New Musical Express」主催のNMEアワードで最優秀トラックを獲得。同年夏にはSUMMER SONICに出演し初来日を果たし、昨年12月には代官山UNITでの来日公演を成功させた彼らが、この度セカンド・アルバムとなる『Future This』を再び4ADより発表! 本当の快進撃はこれから。The Big Pinkの第2章が幕をあける!

The Big Pink / Future This
【トラック・リスト】
01. Stay Gold / 02. Hit The Ground (Superman) / 03. Give It Up / 04. The Palace / 05. 1313 / 06. Rubbernecking / 07. Jump Music / 08. Lose Your Mind / 09. Future This / 10. 77 / 11. The Captain / 12. Stay Gold (araabMUZIK remix feat. Danny Brown) / 13. Stay Gold (araabMUZIK remix) (Instrumental) (M-11はアルバム購入者のみのボーナス・トラック)

【配信形態/価格】
MP3、WAV共に単曲150円。アルバム購入1500円。

The Big Pinkが思い描く未来とは?

「恋の映画なんて見飽きてたんだった。老いて平和なんて目指してないんだった。」と歌ったのは日本のロック・バンド、スーパーカー(「My Girl」/『Jump Up』収録)。The Big Pinkの新譜『Future This』を聴いてこのフレーズが頭をよぎったのは、この作品が前作の『A Brief History Of Love』から続く、一つの物語になっているからではないだろうか。

The Big Pinkはロンドンを拠点に活動する、ロビー・ファーズとマイロ・コーデルの2人組のバンドだ。2009年にUK老舗レーベルである4ADより『A Brief History Of Love』でアルバム・デビューを果たした。2009年8月にはSUMMER SONICに出演。昨年12月には一夜限りの来日公演を成功させ、My Bloody Valentineに通ずる轟音ギターと小気味よいブレイク・ビーツで観客をダンスの渦に巻き込んだこともまだ記憶に新しい。彼らの音には、シューゲイザー、エレクトロニカ、そしてシンセ・ポップと、含まれているジャンルの要素は多い。小刻みなリズムで全体的にフロアを意識したサウンド・ワークとなっており、自然に体が音に合わせて揺れていく。

今作は、未来を語ったアルバムだ。タイトルの変化に注目すればそのことがよく分かる。「愛に関する略史」と題された前作から一転、今回命名された名は『Future This』だ。文法的にはおかしいのだが、誰にでも分かる「未来」「これ」という簡潔な2単語をどんと並べることで、「このアルバムは僕らが思い描く未来そのものだ! 」と主張しているのではないか。曲のタイトルも「Love In Vain」や「Too Young To Love」と恋愛に関する言葉がつけられていることが多かった前作を踏襲することなく、「Stay Gold」「Jump Music」と明るくポップなものとなった。中身をのぞいてみると、これまたダークなトーンに包まれていた前作に比べ圧倒的にポジティヴ。特に中盤の流れが素晴らしい。代表曲「Domino」(『A Brief History Of Love』収録)を彷彿とさせるアンセミックな「Rubbernecking」(M-6)から、アッパーでダンサンブルな「Jump Music」(M-7)へ、清々しい程に自信満々な音を奏でていく。そんな彼らが思い描く未来とは何なのだろう。恋愛成就? 末永く続く平和? それらは特に求められていない。「とにかく前へ進め! 道は開ける! 」。そんな力強いメッセージが今作からは聴こえてくるのだ。

恋愛に対する主張から、その先にある光を見据えたThe Big Pink。過去を振り切った彼らの、未来への希望に満ちた自信作だ。

(text by 碇 真李江)


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The Big Pink PROFILE

2007年に結成された、ロンドンを拠点に活動するロビー・ファーズ(Vo, G)とマイロ・コーデル(Key, Synth, Vo)によるエレクトロ/ポスト・パンク・ユニット。08年にリリースしたリミテッド・シングルが話題を呼び、ロンドンの音楽シーンで熱い注目を浴びる。09年、UK老舗レーベル4ADと世界契約を結ぶと、アルバム・リリース前からUK最重要音楽誌NME誌の「最も期待される新人」に与えられるRADAR賞を受賞するなど、その期待度の高さを見せつけた。同年8月にはSUMMER SONIC 09へ出演し、初来日を果たしている。9月、デビュー・アルバム『A Brief History of Love』をリリースすると、そのメランコリックでダークなポスト・パンク・サウンドが絶賛を浴びる。アルバム収録シングル『Domino』は翌年のNMEアウォードで最優秀トラックを受賞。2012年1月、約2年ぶりとなる待望のセカンド・アルバムをリリースする。マイロはクラクソンズやザ・ホラーズなどの初期シングルをリリースした先鋭レーベル、Merok Recordの主宰者でもあり、ロンドンの音楽シーンに深く関わっていることでも知られている。

>>>The Big Pink Official Website

この記事の筆者

[レヴュー] The Big Pink

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