2011/07/15 00:00

DyyPRIDE from SIMI LABの人生観が詰まった1st Album。

人は見かけだけの情報で、対象の人を判断しがちだ。服装、髪型、顔、肌の色… 等々。実際に話してみないと、その人の実態は分からない。僕がDyyPRIDEを初めて「WALKMAN」のミュージック・ビデオで見た時も、黒人という情報が真っ先に飛び込んできた。そしてその時点から、彼はきっと外国人特有のグル―ヴをもつ、流暢な英語でラップするミュージシャンなのだと思った

SIMI LABという集団が徐々にその姿を現して1年近くが経ち、その実態は様々な要素を持ったラッパーやトラック・メイカーで成り立っていることがわかってきた。その中のワン・ピースであるDyyPRIDEは、中でも特別な存在感を醸し出している。本作『In The Dyyp Shadow』では、黒人の血を引く彼が味わってきた音楽への葛藤、生活で感じる苦痛が切実な日本語で綴られている。素直で実直な彼の口から出て来る言葉に嘘偽りは一切無い。22年間、自身の人格にひたすら向き合ってきた彼の吐き出すリリックを、じっくりと聞いてほしい。

インタビュー&文 : 和田 隆嗣

SIMI LABからの刺客DyyPRIDEが1st Albumをリリース

DyyPRIDE from SIMI LAB / In The Dyyp Shadow

1年前にベールの脱いだヒップ・ホップ・グループSIMI LABから、新たな刺客がデビュー。独特の歌詞の世界観でリスナーの意識に問いかける。その大半のトラックをプロデュースしているのは先日『Mud Day』を発表したEarth No Mad。その他には、福岡GO GO BrothersのYUU、RINAが参加している。

DyyPRIDE INTERVIEW

——制作期間はどの位だったんですか?
DyyPRIDE(以下、D) : 大体8ヶ月位です。でも、どうだろうな? QN(SIMI LAB)が先にソロで『The Shell』を出して、「DyyPRIDEも出せるかもよ」って話を聞いていたんですよ。そこから「やります! 」って言って始まったので1年位かもしれないですね。

——SIMI LABに正式加入した時期は、いつ位ですか?
D : 正式に入ったのは、一昨年の10月位ですかね。

——きっかけを教えていただいてもいいですか?
D : 最初はmixiでしたね。プロフィールに黒人のmixでラップしてるって書いてあって。「そんなやついるのかよ」って思って、コンタクトをとったらOMSB'Eatsだったんです。すぐにOMSB'Eatsに会って、そのままQNの家に行ったんです。それが2人との最初の出会いです。その時の自分は神経衰弱だったので、うまが合わなかったですね(笑)。それから全然会わなかったけど、一昨年の夏に「俺もがっつりラップやってこうかな」って伝えて、また始まった感じですね。

——ラップをやり始めたきっかけっていうのは?
D : 10代の頃はずっと西海岸のG rapを聞いていて、純粋にヒップ・ホップが好きで、必然的に自分もかっこいいラップがしたいという思いが強いですね。

——リリックを書き始めた時から、ラップは日本語でやられてたんですか?
D : もともと日本語しか使えませんからね。こういう見た目なんで、色んな奴に見掛け倒しだとか言われて、笑われて、すげえむかついてたんですよ。悔しくて、本をよく読むようになって、それがリリックにも反映されて今にいたる感じです。

——今の住まいは相模なんですか?
D : 横浜ですね。

—-(たまたまその場に居合わせた)RAU DEF君と出会ったのはいつ頃ですか?
RAU DEF(以下、R) : 一番最初は去年の夏の「超・ライブ」でしたね。あっ! それよりも前にスペース・シャワーTVの「会議室」のインタビューの時に会ってたね。最初はギャングかと思いましたよ(笑)。

——RAU君はDyyPRIDE君のラップを聞いた時にどんな印象を受けましたか?
R : いやー、SIMI LABのビック・フット来たなって感じでしたね(笑)。ディープにライドして行くぜっていう勢いが感じられましたね(笑)。「DREAM SKY」ならぬ「横浜SKY」って感じです!
D : 調子いいな(笑)。

——作る上で意識することはありましたか?
D : 作ってる時は自分の詩を音に乗せて届けるっていう意識が強かったような気がします。

——それはRAU君やQN君のようなグルーヴや、リズムを意識したヒップ・ホップとは違いますよね?
D : 違いますね。詩の意味にかなり意識を置いてやっています。だから、もしヒップ・ホップが無いような時代だったら詩人とかフォーク・シンガーになっていたと思います(笑)。

——ヒップ・ホップに限らず、歌うことに関してはジャンルを問いませんよね。たまたま、ヒップ・ホップという表現方法があったからラップという形になったのでしょうか?
D : そうですね。自分にとって自然な表現だったんだと思います。

思考を書き留めるのが癖

——プロフィールに映画の製作にも興味があると書いてありましたよね?
D : そうですね。多分音楽よりも先に映画の方が好きでしたね。俺が風景を見ている意識が、映画を見ている感覚に近いんです。なので、幼少期から自然に親しんでいたんです。製作に関わりたいですね。

——考え深い性格だと、大勢の友達と一緒にいても、頭の中で整理してから話したりしてませんか?
D : それはあるかもしれないです。自分は人と話すことが好きなんですけど、大勢で何かをやるっていうのが得意じゃないんですよね。でもSIMI LABのメンバーは、一緒にいても唯一普通でいれる。全く無理をすることなく、居られるんですよね。

——どんな場所でもコミュニティの一員として、生きていかなければならないと思うんですけど、苦しい時はないんですか?
D : 自分が不自然な生き物とか、機械とかに思える時です。

——その葛藤は作品には反映されますか?
D : はい。

——リリックを書き留めるのは癖なんですね?
D : 全ての思考を書き溜めるのが癖で、それをしないとバグります。

——(こちらもたまたま別件打ち合わせで、遊びに来ていたOMSB'Eatsに質問。)OMSB'Eats君(SIMI LAB))からも『In The DyyP Shadow』へのコメントを貰ってもいいですか?
OMSB'Eats(以下、O) : 名盤です!
D : 聞いたのかよ!
O : 聞いた! 聞いたよ! なめないでもらいたい(笑)。QNん家で録ってたんですけど、DyyPRIDEがトラウマ等の考えていたことが全部詰まっていて、ファーストでしか出ないって言う位濃い内容になってますね。
D : 恐いな(笑)。

——トラウマを抱えたいた時期もOMSB'Eats君は知っているんですか?
D : 全然知っていますね。でも、19歳の時に知り合ってしばらく距離を置いてたんでね。でも、その頃と比べたら別人だねって言われました(笑)。

——「斃れて後已むNigga(たおれてのちやむNigga)」っていうタイトルが凄い印象的だったんですけど、どういった意味があるんですか?
D : 日本語って周りくどいじゃないですか? 外国語程シンプルじゃないんです。「斃れて後已む」っていう意味が、殺されたりした時に初めて諦めるっていう意味なんです。だから、最後の最後の状況までいかないと諦めないっていうことなんですけど、その回りくどさが好きでした。
O&R : なるほど。ふけぇー!
D : たまたま見つけたんですけど、かっこいいなって思ったんですよね。ことわざとかも好きで、その類いの本を読んだりしているんです。日本語しか話せないの? ってバカにされるけど、お前より日本語知っているんだぜっていう心意気ですね。

——そこの部分で言うと、好きな日本語のアーティストは居たりします?
D : 最初に言葉に魂を感じたアーティストはNANJAMANです、それからTOKONA-X、鬼さん、MCの漢さん、O2さんを聞いて日本語ラップに魅力を感じました。

——そういえば、なんで「ダン」って言われているんですか?
D : 名前が暖なんです。暖房の暖ですね。イントロでも言っているんですけど、a.k.a 勘ぐり屋の暖吉って言うんですよ。これは自分で言っているんですけどね(笑)。最近はあんまり無いんですけど、昔は勘ぐりが半端じゃなかったんです。

——遊んでいる時も、心の何処かで「なんか違うな」って思う時はあったんですか?
D : むしろそれしか無かったです。

——じゃあ、本当にヒップ・ホップに救われたっていう感覚が強いですか?
D : それもあるかもしれないですね。今言葉をリリックとして吐き出していなかったと考えると、多分、炸裂して宇宙の藻屑と化してたでしょうね。

初めて生きる価値を見い出せた

——でもSIMI LABの面々に初めて会った時なんかも、ピースな人柄を強く感じましたね。JUMA君(J.T.F=QN、OMSB'Eats、JUMA))も本当にナイス・ガイでしたね。
D : 嬉しいですね。あいつなんかは元気だけが取り柄ですから(笑)。

——メンバーにもハーフの仲間が多くて、タイトルにも使われているNiggaっていう部分は昔から意識している?
D : たぶんアメリカなんかだと、もっとハッキリと態度に出すんですけど、日本だと口では言わないで目で言ってくるんです。産まれた瞬間から意識してたので、こんなふうになっちゃったんでしょうね。

——その逆境心が強く表れている曲はありますか?
D : 人間の証明」かなぁ。曲中でも言っているんですけど、高校の時も先生に「パーマかけただろ。なんだその髪の毛は? 」って、ただ髪を伸ばしていただけでしつこく言われてたんですよ。その時は、どうしてやろうかと思ったんですけど、ある意味では、そのクソみたいな先生に感謝していますね。「ありがとう」って言いに行きたい位ですね。1曲出来たよって(笑)。

左からDyyPRIDE、RAU DEF

——前にインタビューを行った鬼さんも、様々な過去がありながらも言葉にすることでやりたいことを貫いて来た人でした。
D : そうなんですね。誰でもそうかもしれないですけど、同じ匂いがする人を好きになりますよね。いつか機会があればお話したいですね。

——トラウマやネガティブな要素が好機になったのは、まさにエネルギーの転換ですね。
D : そうですね。俺はネガティブの固まりだったんですよ。そうすると、ネガティブなことしか起らないし、悪いことを運んで来ちゃうんですよね。でも、そこで思ったんです。これだけネガティブなモノを運ぶ力があるのなら、一転ポジティブに考えた時に良いことも運び込めるし、思いのままだなって。俺が今生きているのも、良いイメージをいかに具現化するかっていう試みなんです。

——でも、家に閉じこもってPCばっかり開いては、悪口の掃き溜めばかりするような人にならなくて良かったですね。
D : でも、俺は7年間位病んでましたよ。

——7年間!?
D : 中学とかちゃんといけなくて。いつ死のうかとか、悪く言ったやつをどうしてやろうかって毎日考えてましたね(笑)。だから母親には悲しい思いをさせたと思いますね。申し訳なかったです。

——今作をリリース出来たことは、1つの恩返しになったんじゃないですか?
D : まだまだ足りないですね。

——7年間引きこもった分、まだまだラップ出来ますね(笑)。
D : (笑)。一生出来るんじゃないですかね(笑)。

——トラックの担当はQN君ですか?
D : 12曲のうち、1曲がgogo brothersのyuu君。後の11曲はQNですね(笑)。俺、西海岸のラップとレゲエが好きなんですけど、作れるかな? って言ったら、その場で作ってくれたりして。彼は病気ですね(笑)。家に泊まりに来て映画でも見ながら酒でも飲もうかって言ってたら、友達に借りてるMPCを見て「ちょっと、ビート作っていいかな? 」って言って作り始めましたからね。毎日作らなければ気が済まないんじゃないですかね?

左からDyyPRIDE、RAU DEF、OMSB'Eats

——SIMI LABのアルバムがリリースされるとの話を聞きましたが、自身の今後の展望はありますか?
D : 俺は、もの凄い金持ちになりたいんです。でも、俺のなりたい、金持ちのスケールなんて、広い庭と好きなバイクと車、後は女の子(笑)? がいてくれればいい程度でその先に一番やりたいことがあって、貧しい国に学校や孤児院を建てることなんです。俺が生きている目的はそこにありますね。人間の欲望なんて果てしないし、ただ自分の為の欲を満たして死んでいっても、虚しいだけだと思うんです。だから子供達の為に何か出来たらいいなって思います。物心ついた時から、人の為に何かしたいなって思うようになっていました。でも、今思えば当分の間(他の)人どころでは無くなっていましたけどね(笑)。

——アルバムもその役割を手伝ってくれればいいですね?
D : 1人でも多くの人が聞いてくれて、顔を売って作った金で貧しい国の子供達に何か出来たらいいですね。この目的を見つけた時に、初めて生きる価値を見い出せたんですよ。

——とても温かく嬉しい気持ちになりました。応援しています。ありがとうございました。
D : ありがとうございます。

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INFORMATION

SUMMIT Presents. AVALANCHE
2011年07月24日(日)@新代田FEVER
OPEN : 18:30 / START : 19:00
TICKET : 2,800円(※高校生以下は、学生証提示で来場時に500円キャッシュ・バック有 / 3歳以上有料。)
Live : PSG、RAU DEF、SIMI LAB、MC KOMICKLINICK
DJ : MOODMAN (HIPHOP SET)、PUNPEE(PSG)

PROFILE

DyyPRIDE from SIMI LAB
1989年、黒人の父親と日本人の母親の元、横浜に産まれる。
2008年、自分の社会的地位から成るトラウマを拭い去るべく作詞を始める。
2009年、本格的に活動を始める。
ルーツ・レゲエとウェスト・コースト・カルチャーをこよなく愛し、幼少期から盛んに映画を鑑賞、将来は映画界への進出も狙ってる。2011年、1st Album『In The Dyyp Shadow』をリリース。

この記事の筆者
和田 隆嗣 (Wakf)

DJとかやってます。 和田隆嗣です。 ototoyを盛り上げながら、音楽を楽しんで行きます!!

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