RAU DEF話題の新作が到着
RAU DEF / CARNAGE
衝撃のデビューから9ヶ月、早くもRAU DEFの新作が完成。磨きを増したフロウ、彼の武器であるリアルで生々しい言葉、そして幅広いプロデューサー達による世界照準のサウンド・プロダクション等々、全てがアップデートされている。
【参加アーティスト】
YMG、PUNPEE、PuB KEN、JASHWON、S.l.a.c.k.、DJ KENSAW、GOICHI
感覚的なスタイルを分解しない
昨年、多才にして奇才PSGのPUNPEEプロデュースにより彗星の如く現れたヤング・ガン、RAU DEF。ファースト・アルバム『ESCALATE』で「注目の若手」として名声を独り占めした彼は、その後「不定職者 Remix」でSEEDAと共演。「24BARS TO KILL "Amebreak" REMIX」ではHUNGER(GAGLE)やサイプレス上野、MEGA-Gといったメンバーと共演を果たすまでに名前を上げ、遂にはオリコン・チャート上位にも登場するラッパーKEN THE390のアルバムに参加するにまで至った。そして、そんなRAU DEFの活動の中でも、彼を高く評価していたヴェテラン・ラッパーZEEBRAに対して、自らビーフを仕掛けたことは記憶に新しい。彼のZEEBRAディスは賛否が別れるものの、ZEEBRAのアンサーに対して「ラフにしかけた罠。まんまとハマった! 」と返した「TRAP OR DIE」で彼のライムとスキルに興奮し、今作を待ち焦がれた人も多いのではなかろうか。しかし、最初に言わせて欲しい。今作『CARNAGE』は先日のZEEBRAとのビーフを意識しすぎずに聴いた方が良い。あまり深読みしすぎると勘繰りのドツボにハマり、せっかくの彼の音楽を楽しめなくなってしまうだろう。
実際、RAU DEFは、「新世代のリーダー」を自称するだけあって、若いだけでなく日本語ラップにおいて音楽として革新的なスタイルを持っている。普通ならもてはやされるような、重みのある世界観、日々の努力が伝わる知識量、それらに裏打ちされた表現の巧みさなどを、彼は自分の武器としない。彼のラップは、そんな既成の日本語ラップの定型に従わず、USヒップ・ホップの影響を受けて育ってきた感性によって塗り替えることで作り上げられたものだ。RAU DEFは英語のラップでなければできないようなフロウを、日本語で無理なく実現させているのだ。1曲の中に「耳に刺さる言葉がワン・バースに1つあれば、それで充分」という前回のインタビューでのRAU DEF自身の言葉からも読み取れるように、彼にとってリリックやメッセージよりも、ノリやヴァイブスが重要なのだ。
今作『CARNAGE』でもRAU DEFのそんな超感覚的なスタイルが濃縮されている。まず、前作で好評だった「DOGGG RACE」のプロデュースを手掛けたJASHWONによる「DYNA MIC」では、テンポを落として重く響かせるビートに密着するようなフロウで応じている。そこに日頃の鬱憤が感じられる言葉をのせ、フレッシュでありつつ堂々としたラップを聞かせる。また、この曲ではRAU DEFが散文的に表現した感情を、PUNPEEがフックでスムースに整え、前作の「DREAM SKY」以上に2人が一体感を高めているところもポイントだ。そして、もう一つピック・アップしたい曲が、PUNPEEがトラックをプロデュースしている「TOKYO ROXTA」。前作で感じられたエネルギッシュな意気込みから、若くしてシーンに対して勝負に出たRAU DEFなりの覚悟がラップから伝わってくる。PUNPEEらしい奇抜なビートの打ち込みとベーシックなサンプリングとが生み出すバウンス感溢れるトラックも必聴だ。もちろん、今作ではこれら以外のどの曲でもRAU DEFのラップは冴え渡っている。一聴しただけで、フロウを粘着質にすることでラップの中毒性を上げていることに気が付くだろう。語尾を短く切り、タイトなライミングをテンポよく踏み続けた前作から、語尾を伸ばしてルーズな韻の踏み方へとスタイルを変化させている点も大きい。個人的な印象ではあるが、USシーンではT.I.やLil Wayneといった後に大成功を収める事になる若手ラッパーが同じ変化を辿っている事も興味深い。彼等の影響が、今RAU DEFに起きているのかもしれない。
RAU DEF感性を単純に音として楽しむのも良し。リリックからRAU DEFの視点を探るも良し。前作と聴き比べてみるのも楽しい。アルバムはリスナーが楽しめる要素を多くの含んだ娯楽性の高いものになっている。彼について行けばもっとシーンは楽しくなりそうだ! (Text by 斎井直史)
RAU DEFのデビュー作!
RAU DEF / ESCALTE
アルバムの中心はPUNPEE(PSG)が様々なスタイルのビートで彩る。中でもリード曲の「DREAM SKY」はドラマティックなネタ使いに、タイトなドラム・ブレイクが確実にB-BOY必殺の一曲。他にもプレイヤーとして安定しない憂いを歌った赤裸々シットの「とりまえず」や、HISTORICと競演したフロアバンガー「RAC BANG」などをプロデュースし、新境地を開拓している。またKREVA氏によるトラック・メイカーの一般募集企画で最終選考まで残ったビート・メイカーPuB KENや、その他ZAKKやSTUTSといった新進気鋭のビート・メイカーが参加。
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PROFILE
RAU DEF
ヤバいヤツがまた現れた。一体今までどれだけのラッパーが新世代と呼ばれて来ただろう。小難しい理屈はどうでもいい、これぞ超感覚的ヒップ・ホップ。ラウデフ、ラウ、ラウ君、ラウちゃん、DEFEEZY、デフデフ君など、様々なあだ名があるがとにかくRAU DEFがフロウすると、誰もがその気持ち良さに身を任せる。フレッシュでいて普遍的、フリーキーかつスタンダードなスタイルを既に確立し、今後最も注目を集める存在となるだろう。09年に発表されたSEEDA & DJ ISSO「CONCRETE GREEN 9」や、PSGの特典音源「M.O.S.I Remix」等でその才能を遺憾なく発揮し、2010年9月にデビュー・アルバム「ESCALATE」を発表。休む事なく驚異的なスピードで楽曲を量産し、2011年6月には既に話題のミニ・アルバムをリリース。また、盟友HISTORICと共にRAC A SET(ラッカセット)としても活動しており、そちらの動きにも注目。