suzumokuインタビュー

ポップなメロディとコード展開を持った曲を、わずかなリズムとハープとアコースティック・ギターで奏でるsuzumoku。シンプルでありながらも、ロック、フォーク、ブルースやジャズの音楽的ルーツを持ち、強烈なインパクトを残すうたで多くの人々の心を打ち続けている彼が、新作『ベランダの煙草』を完成させた! ライヴでおなじみのナンバーであるタイトル曲「ベランダの煙草」のほか、「アイス缶珈琲」「ホープ」「フォーカス」といったシングル曲を含む全8曲を収録。高音質USTREAM LIVE、ライヴ音源のリリースや本作リリース後の全国ツアーなど、精力的な活動を続ける彼の今後の展開に大注目です!

suzumoku / ベランダの煙草
【TRACK】
1. 身から出せ錆 / 2. アイス缶珈琲
3. フォーカス / 4. 放課後スリーフィンガー
5. 甘いアルコール / 6.モダンタイムス
7. ホープ / 8. ベランダの煙草

販売形式 : mp3 / WAV(16bit/44.1kHz)

何かに挑戦する意思と、逆に逃げる意思

——『素晴らしい世界』から本作までの間にリリースされたシングル3曲が収められていますが、他の曲もそのシングルを出していた間に作っていたものですか?

基本的にはそうですね。でも最近出来た曲から、昔に作った曲まで色々入っています。「甘いアルコール」などは、専門学校に通っていた時代に作った曲なので、5年以上前に出来た曲。シングルが3曲入っているとはいえ、「フォーカス」みたいな優しい曲から「モダンタイムス」みたいなガツンといく曲まで、その他も個性的な曲が揃ったので、全体としては、それぞれの曲の個性が強く出ているアルバムになったと思います。

——となると、制作期間としては半年ぐらい?

今年は色々なところにツアーに行っていたので、その合間を縫って1曲ずつレコーディングしていたので、気付いたら出来てた(笑) みたいな感じです。1曲1曲の個性が強いのは、そのせいもあるのかもしれないですね。

——今回、5年以上前に出来た「甘いアルコール」を入れようと思ったのは何故?

甘いアルコール」を作った当時は、自分の持ち曲が5曲ぐらいしかなくて、それをずっと歌っていたんです。そのころから思い入れのある曲だったので、昔から作品として出したいとは思っていたんですが、シングルで出すような曲でもないし、中々タイミングがなかったんです。だから今回、満を持しての登場です(笑)。

——suzumokuの新機軸となるようなアレンジでした。

元々は弾き語りで、ギター1本で演奏していた曲なんですが、今回のアレンジで歌の主人公をどんどん酔わせていくような感じが出せたと思っています。僕の場合はどの曲でも同じなんですが、まず弾き語りで歌える曲を作るんです。そこからアレンジャーさんに入ってもらって仕上げるんですが、その時に自分以外の第三者の方の目線、視点に意外な発見が多いんですよね。もちろん自分の中での基準というのもありますが、それ以上に発見がとてもあるので、作品として出す場合には、そういう自分以外の視点というものを大事にしたいなと。

——なるほど。では改めて本作『ベランダの煙草』のテーマについて教えて下さい。

まず前作の『素晴らしい世界』と対比するようなものを作ろうというのがありました。『素晴らしい世界』が陽だとすれば、この『ベランダの煙草』は陰です。ジャケットも『素晴らしい世界』はカラーで、今回はモノクロ。『素晴らしい世界』からのリリースって、爽やかで、ゆったりしていたり、ポジティブな曲、明るい曲、優しい曲が続いていて、歌っていると、その裏で影の部分もどんどん大きくなってくるんですよね。日常生活でフラストレーションというか、テレビを見ていて、「この番組のどこが面白いんだろう?」 みたいな、そういう些細な疑問がどんどん重なっていって、それを歌として消化していくんです。そうやって、"ゴリっ"としたものを出していくと、今度はまた優しい曲が出来たり。結局、その繰り返しなんですよね。そういう中で今回は男っぽさ、男らしさ、泥臭い部分を出せたのかなと思っています。楽曲のタイトルの並びをみても、タバコ、アルコール、酒、コーヒー、ですから(笑)。中でも「フォーカス」の存在は大きいですね。

——大きいというのは?

今まではラヴ・ソングって敬遠していた部分があったんですが、曲を作る時の気持ちの引き出しの種類に、ラヴ・ソングという新たな引き出しができたということです。「ベランダの煙草」みたいに、失恋の歌はこれまでにもいっぱいあったんですけどね(笑)。でも恋愛というより、愛というものについての引き出しはなかったので、この曲はいいキッカケになったと思います。「フォーカス」と「モダンタイムス」が入っていることで、このアルバム全体としての輪郭が際立ったのかもしれません。

——「モダンタイムス」は、ストレートに言い切る歌詞が強烈でした。

僕の偏見も入っているかもしれないけれど、僕なりの警鐘を鳴らす曲という位置づけですね。

——言い切ってしまうのって、相当な覚悟が必要じゃないですか?

でも、言いたいことを歌う、というのがストリートの頃に培ったコアな部分なんですよね。ストリートで出会った仲間達は、みんな遠慮なく言いたいことを歌ってますからね。普段、街中や公共の場所で、「モダンタイムス」で歌っていることをただ言うだけだったら、それこそ変態扱いされますよね(笑)。でも、そういった普段言えないことも、歌だからこそ言える部分があると思うんですよね。だから、ギターという武器を持って、メロディに合わせて言わなきゃ駄目だなと思います。それを歌うことによって、責任も持たなきゃいけないんですけど、それが怖くて保守的な曲ばっかり作っていても意味がないですから。「モダンタイムス」のように極端な曲というのは、批判もあると思うので、それに応えられるだけの意思が必要だなと思っています。曲にした限りは責任感をもたなければ、というか。

——普段からそういう思いを歌詞として書きためておくんですか?

いや、歌詞を書きためておくようなことはないですね。というのは、歌詞になるような気になった言葉をメモしておいても、その瞬間に曲にしないと言葉としての鮮度が落ちるというか。曲を作りたくなる衝動に駆られる時があって、その時の気持ちはやっぱり新鮮なんです。だから書きためたことを後々見ても、「この時は何を思ってこの言葉を書いたんだっけ?」となってしまって、違和感を感じちゃうんですよね。

——曲はどうやって出来上がるんでしょう?

普段、練習している時に、「あ、これ面白いな」みたいなフレーズをまず覚えておくんです。それで曲を作りたいなという強い思いが生まれたり、経験をした時にそのフレーズを引っ張り出してきて、歌詞と合わせてみたりします。

——では曲のアイデアのストックは割とある、ということですか?

そうですね。でも作っていく中で、色々変わっていきますけど。

——「モダンタイムス」のような曲がある一方で、「ベランダの煙草」には歌詞でも「オレのせいだ」というフレーズがあって、この辺りがあくまで等身大のsuzumokuらしいバランス感覚ですよね。

何かに挑戦する意思と、逆に逃げる意思というものも表現するべきではないかと思うんです。例えば「ベランダの煙草」の「オレのせいだ」という歌詞は、ある種の逃げなのかもしれないですよね。何か問題があった時に「オレのせいだ」と言うのが、実は一番簡単なんですよね。それは潔いとも思えるし、でも逆に逃げかもしれない。そういう情けない部分も出していかないとなと思っています。

——「ベランダの煙草」でのヴィンテージっぽいサウンドのイメージは最初からあったんですか?

そうですね。キレイすぎないというか(笑)。楽器のまんまの音を出そうと思えば、今の技術があればすごい綺麗に出せるんと思うんですけどね。「ベランダの煙草」っていうタイトルで、すごいポップなサウンドも違うだろって(笑)。たとえば「放課後スリーフィンガーズ」のギターの音色も綺麗すぎず、少しヴィンテージ風のサウンドにしてます。LIVEでの弾き語りギターの音というのは、その場所でしか聴けない音である一方、作品でしか表現できないギターの音というのもあると思うんですよね。だから作品として出すのであれば、曲に合った音色を柔軟に選んでいけたらいいと思いますね。

自分の意見の中で生まれた感情を強く打ち出せた

——来年は大規模なツアーも控えています。

suzumokuとしてこれだけの場所を回るのは初めてなので、本当に体力的にも今から鍛えとかないといけないと思ってます(笑)。基本はバンド編成で回りますけど、弾き語りのスタイルも見せたいので、弾き語りコーナーを設けようとは思っています。たぶん昔の曲も取り入れつつだと思います。

——昔の曲もいまLIVEで演奏すると、当時とは伝わり方が違うんじゃないでしょうか?

そうですね。でも逆にその時の気持ちに立ち返るかもしれませんしね。初期の曲はかなり衝動的に書いているものが多いので印象が強いんですよ。「週末」という曲はまさにそうで、その時の気分や気持ちって忘れないものですよね。

——それは歌いながら思い出すものなんでしょうか?

歌いながら思い出す情景は、今も昔も共通しているというか、その当時、自分が感じた時のものと変わらないですね。

——どの曲にも自分のリアルな物語や思いがあるから?

僕自身、サラリーマンを経験したことは無いですけど、例えば「アイス缶珈琲」で歌っているようなサボりたくなる気持ちみたいなものは、誰でも感じることだろうなと思いますよね。経験としては僕の一例というか、suzumokuという人間の出来事の一例を歌っているわけですが、それと似ている経験をしている人はいると思うし、その時の情景をしっかり描ければ、聴いている人も思い浮かべやすいんじゃないかなと。

——情景描写は、かなり意識している?

やっぱりそうですね。サボりたくなる瞬間であるとか、感情であるとかを、ただ「サボりたい、サボりたい」とだけ歌っていても意味が分からないですよね。だから、なぜサボりたくなったのかを僕の経験を一例として描くことで伝わりやすくなるんではないかと。嬉しい時も、なんで嬉しいのかを自分の経験を描くことで、聴いている人も思い浮かべやすくなるというか。

——なるほど。

やっぱり、その時の本当に思ったことを書きたいし、むしろそうでなければいけないと思うんですよね。何十年後かは分からないですけど、後になって振り返った時に、作った時の偽りのない感情というものがちゃんとあれば、その曲はいつでも自信を持って歌えるだろうし。ギターを始めたばっかりの頃に作った曲は、もうほとんど覚えていないけれど、やっぱり何かの真似だったと思うんですよ。自分の気持ちに正直になるというよりは、見た目や聴きざわりばっかり気にしていた時期だったので、もし覚えていたとしても、いま歌いたくはないんじゃないかな(笑)。

——1stや2ndの頃と違うと感じたのは、「放課後スリーフィンガー」のようなフィンガー・ピッキングの曲を聴いていても、ギターのテクニックだけに意識が持っていかれないで、まずsuzumokuの歌として消化しているという点です。

ギターのテクニックに走るんであれば、ずっとインストをやっていればいいし、歌っていることに伝えたいこともないのなら、1人で部屋の中で歌っていればいいわけです。でも、人前で歌いたくなるというのは、やっぱり自己表現したいという気持ちが根源にあるので、歌詞の中にもそういう気持ちが強ければ、自然と自分の意志が入ってくると思うんですよね。初期の1st『コンセント』、2nd『プロペラ』というのは自己表現というか、「僕はこういう人間なんだ、僕はこう思う」っていうのを伝えたかった曲が多いんです。3rd『素晴らしい世界』では、そこから一歩踏み出して、友人を応援するような曲も入っていたり、自分の意思で誰かにしっかり伝えるということに重点を置いた。そして今回は自分の意見の中で生まれた感情を強く打ち出せたのかなと思います。

——1stと2ndは、自分のパーソナルな部分について歌っていて、3rd『素晴らしい世界』は、とにかく外の世界に伝えられるように意識したもの。今回の『ベランダの煙草』は外の世界に出たところで見せるsuzumokuの姿というイメージ?

そうですね。一歩外の世界へ自分の扉を開いた曲を書いた上で、さらに自分の意見というのも出すという、そういうアルバムになったと思います。

——ジャケットに使われていた東京タワーの写真も印象的でした。

これは本当に偶然見つけた場所なんですけど(笑)。今の時代を象徴していて良いなと思ったんですよね。アナログからデジタルに移行している過渡期で、東京タワーももうすぐその役目を終えてしまうわけですけど、そのアナログのシンボルじゃないですか。あとは景色的に「ベランダの煙草」の雰囲気ともぴったり合うなっていうのもありました。

——東京のシンボルとしてというよりは、アナログのシンボルだと?

アナログというよりかは、僕の中でアナログという言葉に対して、人と人が繋がり合っているイメージがあるんですよね。例えば写真にしても、デジタルじゃなくてフィルムの場合は、現像するにしても誰かにフィルムを渡して、その人が現像してくれて戻ってくるわけですよね。人と人との繋がりを表す言葉なんじゃないかなと思うんです。今後、デジタルな世界になっていく中で、そういうことこそ大切になっていくと思うんです。人と人が面と向かって話をしていたことも、次第にメールですませてしまったり、情報にしても自分でその場所、現場に行って調べるよりはインターネットで調べてしまう。身を以て知るということが少なくなってきているのかなと。そもそもアナログという言葉自体もデジタルが出てきて認知されてきたのかもしれない。だからこの東京タワーの写真は、そういう意味合いも訴えられるんじゃないかなと思ったんです。このジャケットの写真をスカイツリーにしてしまったら、全然違っちゃいますもん(笑)。

(インタビュー&文 : みのしま こうじ)

suzumokuの初期作品を高音質で

デビューと同時にそのクオリティの高い完成度と幅広い音楽性を呑込んだオリジナリティで衝撃を与えたsuzumoku。そのデビュー作『コンセント』と2ndアルバム『プロペラ』がCDを超える高音質フォーマットHQDで登場! マスタリング・エンジニアには高橋健太郎を迎え、ここ最近のsuzumoku作品のクリアな魅力とはまた違った、初期の荒けずりな息遣いが聞こえてきそうな新たなサウンドに蘇っている。
★アルバムで購入いただくと、特典としてデジタル・ブックレットが付いてきます!

初の全国TOUR開催!! aim into the sun 〜panoramic view〜

  • 2011/2/26(土)@渋谷o-nest
  • 2011/3/4(金)@大阪Shangri-La
  • 2011/3/5(土)@福岡ROOMS
  • 2011/3/6(日)@福岡ROOMS
  • 2011/3/11(金)@仙台LIVE HOUSE enn 3rd
  • 2011/3/12(土)@仙台LIVE HOUSE enn 3rd
  • 2011/3/15(火)@富山SoulPower
  • 2011/3/16(水)@金沢vanvan V4
  • 2011/3/18(金)@広島ナミキジャンクション
  • 2011/3/19(土)@名古屋アポロシアター
  • 2011/3/20(日)@浜松メスカリンドライブ
  • 2011/3/26(土)@札幌COLONY
  • 2011/3/27(日)@札幌COLONY
  • 2011/4/23(土)@下北沢GARDEN

PROFILE

中学2年でギターを持ち、同時に作詞・作曲も始め、地元静岡のストリートで歌い始める。様々なジャンルの音楽を聴き漁り、音楽性を模索する日々。高校卒業後、楽器製作の専門学校に入学し、ギターやベースの製作に明け暮れる。音楽は完全に趣味にしようと決め、岐阜にある国産手工ギター工場に就職。音楽活動を一旦休止するも再開。ギター職人の道とミュージシャンの道、どちらが本当に進むべき道なのか真剣に考え、06 年夏、プロ・ミュージシャンになることを決意。07年1 月に上京し、10月にアルバム『コンセント』でデビュー。都内を中心にライブ活動を続ける中、08 年からインスト・ジャズ・バンドPE'Zとの合体ユニットpe'zmoku を結成。ギター&ヴォーカル担当として大抜擢。多くの経験を積み重ね、2010年ソロ活動を本格的に始動。アルバム『素晴らしい世界』、シングル『アイス缶珈琲』、『ホープ』と積極的にリリース。独自の「まるでその場の空気を感じる様な情景描写」、決して押しつける事なく、「聞く者自らに感じ取らせるメッセージ性」が支持を得ている。

この記事の筆者
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