今年で9年目を迎える京都ボロフェスタ。主催者の一人である飯田仁一郎は、ボロボロの体になりながらも、京都に根付いたこのインディー・フェスを続けることに喜びを見いだしている。対して、今年初めて行われた下北沢インディー・ファンクラブ主催の一人である角張渉。レーベル、カクバリズムを率いながらも、一人のインディー・ファンとしてライヴ・ハウスで盛り上がりまくることも多い。インディペンデントな活動をしてきた二人が、対談をすることが決定した。テーマは、「カクバリズムVSボロフェスタ」。レーベルとイベントの対決? と思いながらも、話は白熱。あっという間に1時間半が過ぎてしまった。止まることなく話し続ける角張に対し、飯田が気圧されそうな場面もあったもののうまく切り返し、話は盛り上がりを見せ、最終的に「同世代、お互い頑張ろうぜ! 」と言って終了した。

インディーズとは何ぞや? 二人が共通してもっているものとは? そして、なぜキセルが今年の大トリなのか? この対談を読めば、それがわかる(はず)! ボロフェスタに、そして全国のライヴ・ハウスに足を運べ!!

インタビュー&文 : 西澤裕郎

インディーズって、自分たちで自分たちのことをやりすぎちゃうとダメなんですよ

—まず最初にお聞きしたいのですが、下北沢インディー・ファンクラブを来年も開催する予定はあるんですか?

角張 : 正直、来年はやらないつもりでいたんですよ。でも、この前飲んでいたら、曽我部(恵一)さんに勇気づけられたんです。好きな街で好きな音楽が鳴っていて、人がいっぱい集まってくれるのは最高だって。毎月やってよっていわれました(笑)。

飯田 : 絶対やらないけませんよ、カクバリさん! ほんまに。全ての人に、一回やり始めたら、やり続けないといけないって言いたい。

—東京ボアダムのメンバーにも、「やらないかん」ってゴリ押ししてましたよね(笑)。

角張 : 東京ボアダム、すごくいい評判ばっかでしたよね。

—そうですね。ただ、そのときototoyで行った対談の内容があまりに赤裸裸な内容だったので、いくつかのミュージシャンから意見をもらったんですよ。

飯田 : えっ、なに?

—インディー・バンドが「過小評価されている」って件があったじゃないですか。それに対して、周りがどう思うかじゃなくて、自分たちが納得できるかが全てなんじゃないかって。

角張 : なるほどね(笑)。ただ、昔LESS THAN TVのイベントとかにも人が入らなかったんですよ。でも、来たお客さんたちはもっとみんな(他人)に見てもらいたいと思って、ブログとかで紹介したりしてたんです。インディーって、自分たちで自分たちのことをやりすぎちゃうとダメなんですよ。例えば、自分のことを人に話すのってサムいじゃないですか。「おれスキーめっちゃうまいんすよ! 」とか言われても「そうですか…」としか言えないでしょ? 自慢的な感じだと。

—「・・・はい」

(一同笑)

角張 : 自分のことがうまく伝わるのは、そこに他人が介在してないと距離が遠いんですよ。インディペンデントって、他の人がフォローし合うってことも含まれていると思っているんだけど、カクバリズムが続いているのも、いい音楽を第三者が介在して、違う人に届けようとする作業があるからだと思うの。今はレーベルとかレコード屋がなくてもいいと思っているバンドやアーティストもいるだろうけど、それは自分の音楽を直接伝えられる自信があるからだと思うのね。直接繋がるためには、自分から自分のことを言わなきゃいけない。でも、自分から自分のことをいいっていうのは、日本人は苦手だと思うんですよ。

飯田 : 僕とカクバリさんの共通点って、そこだと思うんですよ。お互い、レコ屋は必要だと思ってるじゃないですか。つまり、間にレーベルやお店が必要だと思っている。アーティストとお客さんが直で繋がるだけでは発展しないと思ってる。

—ワン・クッションあったほうがいいってことですか?

飯田 : そう。広める人とか、頭下げる人とかは必要。

角張 : 口コミで広がる可能性が大きくなっているから、個々の関係が出来るんじゃないかと思っちゃってるんだよね。だけど、余程かっこよかったり、ライブがおもしろくないと、簡単じゃない。それに直接のサポート感は強いんだけど、狭いものになっちゃう気もするんだよね。だから、俺がインディーでやり続けてるのも、個人じゃできないことをやってあげたいし、やらせてもらいたい。他のレーベルが出来ない事ややれない事を楽しくやろう! とするのがうちの強みだし、そうじゃないといけないと思う。

—例えば、どういう考え方なのでしょう?

角張 : これはカクバリズムの運営方法の一つなんだけど、入り口を大きくしたり、出口を大きくしてあげたい。2004年にYOUR SONG IS GOODの1stを出したときに、それまでシェルターでやっていたライヴをクアトロにしてみたんですよ。いま思うと普通なんだけど(笑)。タワレコとかで結構な展開をして、バウンスの表紙とかにもなったから、それでレコ発がシェルターだと初めて聴いた人が入りづらいと思ったの。正直シェルターが一番って思っていたし、いまも思っていたりするんだけど。シェルターが売り切れるって感覚があの時はかけていたってのもあるんだけど(笑)。せっかく広げたのに、また狭くなっちゃうなって。マニアックな人しか入れないドアと、一般の人も入れるドアがあったら、後者のほうがかっこいいからさ。

飯田 : どうポップに見せるかってのも、共通してますよね。

角張 : レコ屋で働いていたってのは共通点として大きいかもね。

自分のものを売るって本当にしんどい

—ボロフェスタの話をしましょうか。カクバリさんは、ボロフェスタにどのような印象をお持ちですか?

角張 : 2005年の二回目に初めて行ったんだけど、それがおもしろくて。

飯田 : おもしろかったですよね。

角張 : 西部講堂って伝説の場所だから、超楽しみにして行ったら、俺ら外のステージだったんですよ(笑)。

飯田 : そうそう(笑)。

角張 : 当時連絡があんまり来なくて、「サイトウ("JxJx"ジュン)さん、外にステージありますねー」なんて言いながら歩いてたら「俺ら外ですね…」って。当日わかるって事件があって(笑)。

(一同笑)

飯田 : でかいステージでしょ?

角張 : そう、でかいステージ。ユアソンが夜走りできたのを伝えたら部屋ありますって言われて、西部講堂の中をついて行ったら、人の住んでる部屋があったの。汚いこたつとか布団が敷きっ放しでさ。「えっ、ここ? 」って思ってたら、そこにジャック(FLUID)が寝てて(笑)。当時、俺らもそういうのに対応できるノリでいたかったから「全然平気ですよ」とか言いながら、結局誰も寝なかった(笑)。おもしろかったなあ。

飯田 : それからカクバリズムを呼ばなかった年はないですよ!

角張 : ボロフェスタ、好きなんですよ。でも若干歳をとってきてるのも感じるでしょ? 売り上げも考えないといけないし、若いバンドも呼んであげたいし、お客さんも若返らせたい。でも同世代にも満足してほしい。そういう欲が増えてるんですよ、昔に比べて。業ですよ業。

飯田 : それはカクバリさんもありますよね?

角張 : ありますあります。

飯田 : そこがポイントですよね。

角張 : 若い子にも聞いてほしいんですよ。ドキドキしてもらいたい。それは自分がそうだったから。谷さん(谷口順/LESS THAN TV)とかもそうだし、ゆら帝とかコーネリアスとか先輩たちの音楽もグッとくるわけじゃないですか。それを我々も自然に提案できればいいなと思うんです。

—飯田さんは、Limited Express (has gone?)と、ototoy、ボロフェスタとやっていますが、今はどの立場が一番強いと思いますか?

飯田 : 僕は売りたい側ですよ。バンドはひとつの軌道に乗ったんですよ。もちろん20代のころは売れるってとこを目指していたんだけど、ベース(YUKARI)に子どもが出来たし、売れるってことだけを目指していたら辞めるってとこしかなかった。

角張 : それ、何かで言ってたよね。

飯田 : そう。それで谷さんとかレスザン周りの人たちに出会って、音楽って自分のやりたいことを追求するものなんだって思った。そうなった時に、バンドをやることが欲じゃなくなったんだよね。音楽をすることは売れる欲に向かってやるんじゃなくて、いい音楽を作るところに向かってやるってことに気がついた。そうなると、それまで欲だったバイタリティは、他のバンドの音楽を売ってあげたいって欲に変わっていったんだよね。

角張 : それって、すごくレーベル的だよね。

飯田 : 俺らは最初、ジョン・ゾーンのところから出して、結局1回も宣伝をしてもらえなかったのね。それはTZADIKってレーベルのやりかたなんだけど、俺らは1stアルバムからいきなり自分たちで宣伝をしたんですよ。関西に住んでいたから東京に実費で訪ねて、色んなとこを叩いてよくわからん顔されたり、聞いてもらえないことも山ほどあって、それがあまりにも悔しかった。そういう意味でも、自分たちがおもしろいと思うバンドがいたら力になってあげたい。

角張 : 人それぞれだけど、谷さんはアフター・ファイヴ・レーベル、つまり5時からがレーベルだと俺に言ってた。でも俺はそうじゃなくて、仕事をレーベルにしたからこそ、アフター・ファイヴ・レーベルにはできないことを人一倍しなきゃいけないと思ってやっているんです。働いているバンドが何を出来ないかというと、宣伝や営業ができない、自分たちでフライヤーを撒きに行けない。じゃあ全部やりましょうって。もちろん音楽を仕事にしてしまうかっこ悪さっていうのも知っている。逆に、仕事としていい作品を出させてもらうかっこよさもわかっているから、その二面性ゆえに努力して自分たちの立ち位置をしっかりブレないようにしている。だからこそ、飯田くんの立ち位置が3つあるのは大変だなと思う。

飯田 : 大変ですよ。

角張 : 俺もバンドをやっていたけど、最近やらなくなったのはそういうことで、カクバリズムというレーベルを主幹にして、どれだけみんなをサポートして楽しめて、音楽と繋がって行けるかと考えるようになった。

飯田 : なるほど。

角張 : アナログを出したり、配信にダウンロード・チップつけたり、やり方やアクションに評価が向いているけど、実は音楽の内容がかっこいいかだけでいいと思うんだよね。

飯田 : そうですね。同時に、七尾(旅人)くんみたいに音源もライヴもかっこいいし、プラスおもしろいことをやっている人もいますよね。

角張 : そうだよね。旅人くんの行動はいまみんな注目しているよね。この夏〜秋にフェスで数回一緒だったんだけど、凄い注目だよね。でもブレずに旅人くんの世界をずこーんと構築していて、すごかったなー。DIY STARでもなにかやりましょう! って話してるんです、うちも。

—最近、森くん(neco眠る)とDODDODO、石井モタコさん(オシリペンペンズ)の3人が、こんがりおんがくというレーベルを立ち上げました。それは、どう思いますか?

角張 : うん、森君から色々聞いていたから、僕は良いね! と思って。森君、あの二人の事愛しているよね。それが形になっていくってのはシンプルで伝わりやすいですよね。なぜリリースしているのか、わかる。あの3人がお互いでお互いの音を聞きたいからでしょう? あとレーベル名が良いですよね。

—例えば、オシリペンペンズのが音源を出す時はペンペンズは音源に専念して、他の二人が協力するって形なんですって。それは何でかっていうと、アーティスト性と商売が一緒くたになるのを避けてるからだと思うんです。

角張 : 俺と一緒じゃん(笑)。

飯田 : たしかに。去年『LTD』をリリースするときに、僕以外の人に頼みましたもん。俺にはLimited Ex.のことは出来ないから何かしてって。

角張 : それがいいよね。

飯田 : ボロフェスタとか谷さんのサポートとかは何でもできるけど、自分のことは難しい。

角張 : できないよ。だって、あのライヴを客観的に客席で観たことなんかないでしょ? 観たことのないやつがライヴ評なんてできないですから。自分のステージングがどういうものかって自分ではわからないよ。

飯田 : そう。自分のものを売るって本当にしんどくて、僕もまだ出来ないな。

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