2010/10/05 00:00

DE DE MOUSEをはじめ、数多くの著名ミュージシャンのサポートとして活躍するキーボーディスト、渡辺シュンスケが満を持して自身のソロ・プロジェクト、Schroeder-Headzを始動させた。自身のピアノにベース、ドラムを加えたトリオによるアンサンブルで、ありとあらゆる音楽を生の演奏へ翻訳することに挑戦するSchroeder-Headzの1stアルバム『newdays』をオトトイでは24bit/48kHzのHQDで配信。同時に渡辺シュンスケ本人にインタビューして、なぜいまSchroeder-Headzというプロジェクトをスタートさせたのか? そしてなぜピアノ・トリオだったのかを聞いた。

朋友DE DE MOUSEも大絶賛!! 超絶ピアノ・トリオSchroeder-Headzが1stアルバムをHQDで配信開始!

Schroeder-Headz / newdays

「疾走する郊外の街並と夏の記憶。
きらびやかに色褪せる秋の歩道。
痛い程肌に染みていく澄み渡る冬の空気。
舞い踊り水たまりに落ちていく花びらと春の雨。
今までもこれからも繰り返されるであろう四季とそれを彩るSchroeder-Headz。」(DE DE MOUSE)
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INTERVIEW

インタビューを終えてますます謎が深まった。リリースされたSchroeder-Headzのアルバム『newdays』を最初に耳にした時、バラエティに富んだ楽曲たちに感じた音楽的背景の幅広さに、彼がどういう音楽を聞いてきたのかを直接聞いてみたいと思った。けれど話を聞けば聞くほど、その音楽的なルーツ以上に、渡辺シュンスケという人間の奥底が見えなくなっていった。その中で、一つだけ間違いないんじゃないかと思えたことは、彼が全てに対してフラットであるということ。幅広いルーツに裏付けされながら、「今」と「今から半歩先」の時代の感覚を捉えたサウンドは、彼のその姿勢がなくしては生まれなかったものだ。古いから良いとか新しいから良いということではなく、ジャズだからクラシックだからということでもない。これはきっとオリジネイターと呼ばれてきた人たちに共通する部分であり、渡辺シュンスケという新たなオリジネイターがまた一人、ここに誕生したのだ。

インタビュー&文 : みのしまこうじ

ピアノ・トリオという括りの中で、どこまで自由にできるか

——まずはSchroeder-Headzとして活動を始めたキッカケを教えて下さい。

渡辺シュンスケ(以下渡辺) : もともと音楽を始めたのはピアノが最初。ピアノが大好きだったので、いつかピアノ・トリオをちゃんとやりたいと思っていたんです。ピアノ・トリオっていうとジャズとかのイメージがあるんですが、そういうのがない自由なピアノ・トリオをやりたくて、それをようやく実現できたのかなという感じです。なぜトリオなのかというと、アンサンブルが一番ミニマルでシンプル。余計なものが何もないので、演奏面での個々のスキルだったり個性が見えて面白いんじゃないのかなと思ったからですね。

——Schroeder-Headzという名前の由来は?

渡辺 : シュローダーくんていう、アメリカの「ピーナッツ」、日本では「スヌーピー」で有名ですが、そのアニメに登場するモテモテのピアノ弾きの男の子からとりました。アイコンとしてピアノを弾く男の子というイメージが可愛くもあるし、知的な感じもあってイメージとしていいなと思ったんです。ジャズっぽくもあるし、クラシックもあるし、しかもちょっと今っぽい感じを想像してもらえたらいいなと思ってつけました。

——たしかに特定のジャンルを感じさせない名前ですよね。

渡辺 : 渡辺シュンスケ・トリオだとちょっと硬派な感じになっちゃいますよね(笑)。

——(笑)その名前通りというか、音楽的な幅広さ、バラエティ感が今回の作品からはとても感じられました。楽曲は渡辺さんが作曲をされたんですか?

渡辺 : そうですね。基本的には全曲、僕が作曲してます。今回のアルバムはベースとドラムのリズム隊はメンバーを固定して録音したんですが、曲作りの段階では色んなベースやドラムの人とやると面白いかなということをイメージして作っていました。また、スタジオに入って生で演奏をあわせてみて、その中で「こういうベースはどうですか? 」とかアイデアが出てきたり、バンドっぽいやり取りもしましたね。

——自分の音楽的な幅の広さって、どこで培われてきたんだと思いますか?

渡辺 : 音楽は雑多に色々好きで、どれが好きみたいなことを聞かれると困ってしまうんですが... ジャズやクラシックも好きだし、ダンス・ミュージックにポップスも好きです。普段、演奏の仕事で唄ものの現場が多いので、色々なところで美味しいとこどりをしているのかもしれないです(笑)。

——アルバムとしてバラエティに富んでいるのと反対に、1曲ごとの世界観はとても完成されていると思ったんですが、曲作りの段階でその最終形のイメージが頭の中に描かれていたりするんですか?

渡辺 : そうですね。1枚目ということもあるんですけど、わりと頭で考えて色んなパターンを用意して試しながら録音していったんです。いわゆるジャズ的なフォーマットではないものを作りたかったというか、フォーマットというよりは音楽の構造をイメージしてつくりました。ピアノ・トリオという括りの中で、どこまで自由にできるかな、という感じですかね。

——逆にサウンド面では統一感があって、それがバラエティに富んだアルバム全体としての統一感に繋がっているのかなと思いました。ローファイな雰囲気のピアノにシンセが入ってきたりして、今の時代の音としてSchroeder-Headzとしての音が確立されているというか...

渡辺 : 3人だけで完成させた曲もあるんですけど、レコーディングした後に、持って帰って聞いてみて物足りなくてポスト・エディットしたり、新たな音を足した曲もあります。色々探りながらだったんですが、最終的にはいい仕上がりになったんじゃないかなと。

——個人的には「boobies-hi」に無条件に引き込まれてしまいました。今回のアルバムの中では特に他とは雰囲気が違いますよね。

渡辺 : 頭デッカチになるのもいやだなと思って、ノリでイエーイみたいな感じで。実は一番なにも考えていない曲なんですけど。でもだから逆に一番ライヴに近いのかもしれないですね。

——タイトル曲である「newdays」という曲は、まさにSchroeder-Headzのハイブリッドな部分を象徴している曲だと思いました。資料では4つ打ちに坂本龍一さんの「戦場のメリー・クリスマス」をのせる気持ちで、とありますが?

渡辺 : たくさんの人に聞いてもらう形というか、この時代にあった感じのビートとピアノ・トリオっていう形で、ピアノ曲なんだけどすごい良い曲っていうアウトプットの仕方を思いついたときに、すごくいいなと思ったんですよね。

——なるほど。でも反対にご自身のmyspaceにアップされているデモ曲の「sky」はピアノだけでとても広がりのある曲ですよね。

渡辺 : あれはほとんど即興演奏なんですけど、実はああいうのはアルバム2枚分ぐらい録りためてあるんですよ。そのデモにメロディをちゃんとつけたりとか、シェイプ・アップしていったのが今回の作品『newdays』なんだと思います。

——今回の作品を構想してから完成までの期間はどのぐらいですか?

渡辺 : 実際に動き始めてからは1〜2年ぐらいですかね。

——楽曲のアイデアを思いつくのはどういう時ですか?

渡辺 : 曲にもよりますけど、TVを見ている時に浮かんだりすることもあれば、人の音に触発されることも多いですかね。基本はピアノを弾いている時にこれをこのトリオでやったら面白いかなというのが最初に浮かんだら形にしていく感じですかね。機会があれば、リズム隊を全曲色んな人でやるアルバムとか作ってみたいですけどね。ドラムにクロマティとか(笑)。

——ピアノを弾いているときは、常にアイデアがどんどん湧いてくるんですね?

渡辺 : レコーダーをまわしたままピアノで30分弾き続けようって録音したものが、2〜3時間分ぐらいあるんです。それを後で聴き直してみて「あ、この部分いいな」とか、そこから曲にしていこうと思ったりもするんですけど、面倒くさくてやってないです(笑)。ほかには例えば今だったらアコースティック・ピアノにディレイ・マシンをかけたりして、その場でダブみたいにしながらっていう曲もやってみたいですね。

僕自身は自分で何かを作りたい人間

——今回のアルバムには入りきらなかった曲というのもたくさんありそうですね。

渡辺 : まだまだ色々やりたいことはたくさんありますね。ライヴでもどんどん曲も変わっていくと思いますし。そういえばこの間、大阪のライヴでグランド・ピアノの中に靴を脱いで入れたらすごい怒られましたね(笑)。怒られたっていうか、お店の人から「ヒヤヒヤしたよ」って言われたんですけど(笑)。エルメート・パスコアールがやってて、ああいう人が好きなんですよね(笑)。お客さんは逆にすごい喜んでくれましたけど。

——それはスゴい(笑)。ライヴでは自由に演奏して毎回曲が変化していくということですか?

渡辺 : 基本的にライヴで曲を再現するというようなことは考えていないですからね。メンバーもどんどん変わっていったら面白いなと思いますし。トリオというミニマルなアンサンブルのせいもあって、メンバーによって本当に変化するから面白いんです。

——ご自身のことについて伺いたいんですが、音大を出られているんですよね?

渡辺 : 子供に音楽を教えるリトミック学科でした。ピアノを習い始めたのは遅くて高校3年生から。坂本龍一さんに憧れて、受験の時に普通の大学とか行く気は全くなくて、猛勉強しましたね。

——ピアノを始めるまでは、他に楽器をやっていたんですか?

渡辺 : バンドでキーボードを弾いていたんです。最初にバンドを始めたのは中学3年生だったんですけど、当時はイカ天が全盛でまさにバンド・ブームの真っただ中でした。そこから音楽大学に通って、ここに来るまでいろんな道のりがありましたね(笑)。でもやっぱりピアノが好きだったんですよね。まぁ、ジャズとクラシックの2つが自分にとって大元にあるのかなって思います。それはイコール坂本龍一さんの影響だと思うんですけどね。

——ソロでやる時とトリオでやる時の意識の差というのはありますか?

渡辺 : cafelonという別のバンドでは唄ったりもしているんですけど、インストだけでしっかり音楽をやるというのは初めてなんです。特にトリオになるとリズム隊以外のメロディやハーモニーは自分で全部やっていかないといけないので、そういう弾き方になりますよね。単純に唄ってバッキングするということではなくて、ピアノで曲を作るということはどういうことなんだろう、ということをもの凄く考えましたね。さっき言ったような音楽の構造ということだと思うんですけど。ジャズでもフォーマットが出来ていく過程っていうのが時代とともにあって、いまはもうフォーマットとしてすごい完成されているから、そこから逃れるのは難しいんですけど。いま普通に聴かれている打ち込みの音楽にも、ちゃんと構造が存在していて、それはPC、いわゆる機械の中のプログラミングで成り立っていたりするんですが、逆にそれを人が演奏するほうに意識的に戻して出来ないかなと思ったんです。そうしたらハッとする面白い発見が出来ないかな、って。

——なるほど。

渡辺 : THE BAD PLUSっていうジャズ・バンドがいて、ピアノ・トリオなんですけど、Aphex Twinとかをカバーするんです。それがスゴいかっこいいんです。ドラムが生でDrill 'n bassみたいなのをやって、ピアノがシーケンスっぽいことをしてるんですけど、それがコードとして成り立っていてすごい美しかったんです。それを観た時にこれかな、と思ったんですよね。一応、THE BAD PLUSはジャズなんです。でもきっとジャズって、いまスタンダードと言われているものも、単純に当時のポピュラー・ソングなんで、もともと自由なものだと思うんですよ。当時はそれを崩して自由にアドリブで弾くみたいな。それがいまは楽器も変わってきて、PA環境も変わってきて、エフェクターも自分がライヴで面白い使い方を自由にできるようになってきてる。それを自由にライヴでやるのが、健康的なことなんじゃないかと思ってて。古いジャズを「ジャズってこうだぜ」ってやるのも良いんですけど、新しいものも古いものも上手く使って健康的に自由にやれたらいいなと思いますよね。

——その自由さからきているんだと思うんですが、『newdays』というタイトル通り、まさに2010年という印象を受けました。

渡辺 : ホントですか!? そんなに音楽に詳しくないような普通の子に「かっこいい」とかって言ってもらえたら嬉しいですよね。

——最近ではDE DE MOUSEでの活動でも知られていますが、その活動からSchroeder-Headzへフィード・バックするものはあるんでしょうか?

渡辺 : ありますね。僕はDE DEくんと比べると圧倒的に演奏家なんです。それに対して彼は、作曲からミックスまで含めて全部自分でやっている人ですから。演奏って筋肉の快感というのがあるけど、それって実は聴いている人から一番遠いみたいな面があると思うんです。聴いている人は耳だけで聴いているわけだから、演奏している側は、なかなか冷静に聴きづらいというか。そこをDE DEくんは耳で構築していって、細かいボリュームとか定位とかを含めて意識的に作曲していて、もの凄い緻密な作業をしているんですよね。だからそういうのを見ると、いま楽器が便利だから誰でも何でも出来るみたいに思われてますけど、全然そうじゃないなって思いますよね。相当、才能がないと出来ないと思いますよ。センスっていったらそれまでなんですけど、そういのは刺激になりますよね。細かい作業とかってバンドだとパッとできてしまうし、元はみんなそうやってパッとやっていたから、無意識でやっていたんだと思うんですけど、ああいうDE DEくんがやっていることって、その無意識でやっていた部分を意識的に自分で全部作っていかなきゃいけないわけだから、やっぱりすごいなと。だから逆に今度は生で演奏する時に、その細かいことを意識的にやれたらカッコイイんじゃないかと思います。

——ほかにも色々な方のサポートで活躍されている中で、このトリオでの活動というのは渡辺さんにとってどういう位置づけなんでしょう?

渡辺 : 今回アルバムを作ってみて、僕自身は自分で何かを作りたい人間なんだなということを改めて思いました。人のサポートをするのも好きだし楽しいんですけど、自分で何かを作っている上で、そういうサポートもしていけたらと思いますね。

——最後に直近でこんなことしたいみたいとか、今後どうなっていきたいということがあれば教えて下さい。

渡辺 : カバーとかもいいなと思っています。それこそDE DE MOUSEくんの曲とか、Royk Soppとかはたまにライヴで演奏するので、そういうのも録音して作品にできたら面白いなと思います。逆にどうやるんだろうと思うような曲をピアノ・トリオでカバーするのも、やりがいがあるかなって思います。原曲を知らずにカバーを聴いてくれた人が原曲を聴きたいなと思ってくれるようなことが出来たらいいですよね。デジタルというかうち込みで出来たサウンドを、ものすごい生のシンプルなピアノ・トリオというアンサンブルで翻訳して成功したらすごいかっこいいかなとも。頭で考えるとできるんですけど実際にやろうとすると本当に難しくて中々上手くいかないんですけどね(笑)。

自由なアウトプットで音楽を様々な形に翻訳する者達


L.E.D. / GAIA DANCE

佐藤元彦(JacksonVibe)、加藤雄一郎(MEGALEV/NATSUMEN/Calm)、オータコージ(曽我部恵一BAND/The sun calls stars)ら、様々なバンドやフィールドで経験を重ねてきた7人で構成されたバンド。自主制作で2003年に発売された前作『LightEmittingDiode』以来、実に6年ぶりの本作は、ジャズ、アンビエント、ミニマルやエレクトロニカなどの要素を含んだサウンドと、メンバーがそれぞれ持ち寄ったフィールド・レコーディングによる音の断片がサウンド・スケープを作り出しています。


sighboat / marvel

内田也哉子、渡邊琢磨(COMBOPIANO)、鈴木正人(LITTLE CREATURES)による、奇跡のユニット「sighboat(サイボート)。3人の温かなヴァイヴの躍動感溢れる新作「marvel(マーヴェル)」が完成! 1stアルバムから約5年ぶりのリリースとなる今作『marvel』は、約3年の時期をかけて制作〜熟成された、sighboatが提案する2010年型ロック・アルバム。渡邊と鈴木が書き下ろしたメロディアスな楽曲、内田の「marvel」の歌詞と柔らかな歌声が融合した、ポップでキャッチーな、入魂の全10曲を収録。


ときめき☆ジャンボジャンボ / ECLAT

時には「プログレッシブ・ロックである」とも、そして時には「ポップ・ミュージックである」とも言われ、老若男女問わず聴く者全てをその世界観へと引きずり込んでゆく。音の向こう側に見えるのは、いつも私たちがはじめて出会う、でもどこかノスタルジックな物語。

INFORMATION

『Schroeder-Headz & VALRAVN Double Release Party』
日時 : 2010年12月10日(金)
会場 : 西麻布SUPER DELUXE
出演 : Schroeder-Headz、VALRAVN、DE DE MOUSE

PROFILE

数多くの著名ミュージシャン(DE DE MOUSE、CHEMISTRY、PUFFY、佐野元春、堂島孝平、スネオヘアー、キリンジ、カーネーション、BONNIE PINKなど)のサポートとして活躍するキーボーディスト、渡辺シュンスケによるソロ・プロジェクトにして、ピアノとベース、 ドラムスによるインストゥルメンタル・トリオ。その名前はアメリカのアニメ "PEANUTS"(日本名:スヌーピー)に登場するトイピアノを弾く男の子、Schroeder(シュローダー)君に由っている。クラシック、ジャズ、ダンスミュージック、エレクトロニカなどを通過した現代の耳を持つ、リリカルな男子の脳内イメージ、そして同アニメの音楽を担当したビンス・ガラルディ・トリオへの敬愛の意も込めて。

Schroeder-Headz official myspace

この記事の筆者

[インタヴュー] Schroeder-Headz

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