VOL.12
1年前の約束を果たしに大牟田へ行ってきた。
「大牟田ナイト」
昨年の「大牟田ナイト」はボギーが仕掛け、福岡で開催したが、今回の「大牟田ナイト」は大牟田勢が仕掛け、大牟田での開催。イベントタイトルは同じでも、意味がまるで違う。そこにnontroppoとして乗り込むのは結構なプレッシャーだった。
木刀一本握りしめて暴走族の集団に殴り込みに行く心境で向かった(笑)。 ちなみに、昨年の「大牟田ナイト」の模様がこれだ。
大牟田へ到着、夕暮れの町をぶらりと歩く。通行人はほとんど居ない。潰れたスナックやパブ、錆びたシャッターがしまったままの呑み屋が並ぶ、遠くに見える大きな煙突からはもくもくと黒い煙が出てる。昭和で時が止まっているような風景にノスタルジーが広がる。
今夜の戦場となる大牟田club Fujiへ行くと、揃って大牟田ナイトTシャツを着た大牟田勢たちが迎えてくれた。
Fujiは20年くらい前に閉店したキャバレーである。強烈にインパクトある内装、絨毯、シャンデリア、最高だ! トイレなんかは4つあるうち3つが使用禁止である。 この朽ち果てる寸前の建物の中で今夜ロックができると思うとぶるぶると武者震いが止まらない。
お客さんがどんどん集まってくる、どんどんどんどん。福岡からも来てくれてるお客さんいっぱいいた。期待度の高さを物語る。
不思議な緊張感が漂う中、オープニングアクト、michiさんの1曲弾き語りが始まった。とても緊張してるのが分かる。歌詞が飛んで頭真っ白になってるのが分かる。
でも叫んだーーーー!!!! なんて不器用な始まり方(笑)、しかしとても“らしい”気がした。
大牟田ナイト開始だーーーー!!
ステージに亡くなった三隅健くんの漫画の1コマが映し出される。どぶ川に水がドドドドドドドドドッと溢れ出す絵が。翌日に高校の入学式を控えた一銭めしや村里さんの娘、あんちゃんがドラムを叩き出す!ドドドドドドドドドッ!!! 絵と音が一体化し、ドドドドドドドドドッ!と我々に襲いかかってくる!!!
これはほんとにブルッとくるほど素晴らしい始まり方だった。電子たくあんの演奏も鬼気迫るものがあり、今後のあんちゃんのさらなる進化(バケモノ化)を期待させる。
続いてゴールデンブラザーズ。
身を削って祈りを捧げてるような剥き出しの演奏と叫び! 何度見ても新鮮な感動を覚えるバンドだ。
ここで会場内に警察官が3人登場! 音が大きいとの苦情だ、しかしここではいつもの光景らしい。 主催の電卓くんたちがテキトーに「ハイ、すいません」と謝る。警察も「我々も仕事なんで、市民の苦情だから一応警告はするからね〜」って感じの対応にみえる。さっさと警察は帰り、音の大きさもそのままだった。警察とうまく付き合うのもこの町でロックするには必要なことなのだ。
何事も無かったかのように続いて2907831。ゆっくり見れなかったがとても良い演奏。俺は次が出番のため落ち着きなくフロアと楽屋と便所を何往復もしながらテンションをあげていた。
そして、nontroppoいざ本番!!! うおおおーっと上がる歓声の中、1曲目のタイトルを叫んだ瞬間....
まさかの停電!!!!!
真っ暗闇に包まれたFujiにみんなの雄叫びが響く!! しかしなかなか復旧しないまま数分...徐々に緊張感が走る。 誰かが「これはサイバーテロだ!」と叫び笑いがおこる、「今ドラムソロのチャンス!」の叫びにchangさんがドラムソロを始める。生音のドラムソロが鳴り響く。
電気が来た!!!!
そのドラムソロのまま予定に無かった「Smile」に突入!!! 停電前より遥かにヤバいテンションで演奏開始!!!!!! 神の仕業か? 悪魔の悪戯か? どちらにせよ、この停電があのタイミングであったからこそ、空気が、流れが、一気に沸騰したのだ。ハプニングが演出に変わるのもライブの醍醐味である! 停電バンザイ(笑)!!
踊り狂うみんなの姿が、どんどん溶けてバターになる感覚。Fujiの高い天井を見上げ、宙を舞うような気分で俺は演奏してた。ロックの神様ってよく言うけど、たぶん今見えてるのはロックの悪魔。こいつに会いたくて何度も何度もライブをやるんだと思う。やめられないんだと思う。
最後は一銭めしやだ!
会場全体が何かに取り憑かれたような雰囲気だった。ドドドドドドドドドドドドッ!!!! 堤防が壊れ、溢れ出すように感情を爆発させ踊る人々。その光景をア然と見つめる人々。いろんな人の感情がドドドドドドドドドドドドッ!!!!と渦を巻いた。男も女もステージもフロアも上も下も無いような状態で、人と人が汗だくでぐちゃぐちゃに溶けながら、昇り竜のようにどこまでも天に昇って行った!! 俺もその渦の中にいたが、最後の方でちょっとだけ後ろに下がり、その光景を眺めてみた。頭の中で小田和正の歌「♪ラララ〜ララ〜ラ〜....言...葉に....できない....」が流れた(笑)。
熱狂の中「大牟田ナイト」終了。
もう終電の時間もすぎてたので、最後まで残れなかった人もたくさんいたが最後に残ってたみんな集めて写真撮影。この撮影のあと、nontroppoのCD買ってくれた小学生の男の子が「今夜はきっと伝説になります!」と言ってくれた(笑)。うん、そうやね。「大牟田ナイト」がこれから「大・大牟田ナイト」になるための第一歩やね。
主催の電卓くんはじめ大牟田のバンドの皆さん、ありがとう、お疲れさまでした。これからもどうぞよろしく、刺激し合って行きましょう! 打ち上げは焼き肉!! 深夜に焼き肉どか食い!これが大牟田のパワーの源なのだろう。
PROFILE
ボギー。ダンス仕様のライブ・バンドとして高評価を得ているnontroppoのボーカル&ギター。ニュー・ウェイヴ、レゲエ、ダブ、ジャズ、プログレ、サンバやトランス・ミュージック等あらゆる音楽的要素を内包したカラフルで不思議なサウンドに、無国籍なダンス・ビートが絡み、聴く者全てを狂喜の「祭」、もしくはありもしない架空のリゾート地へといざなうちょっぴり危険なトロピカル・アヴァン・ダンス・ミュージックを奏でる。
artist page https://ototoy.jp/them/index.php/ARTIST/1829
blog ”ボギーの悪趣味音楽作法” http://www3.to/yokotin/