2009/08/05 00:00

世界水準の日本人女性アーティスト

海外を中心に活動する日本人アーティストが珍しくなくなったことは、単純にグローバル化が進み、移動や通信が簡単になったからだけではない。世界で通用するレヴェルの日本人アーティストが確実に増えているからだ。
それでも言葉も文化も全く違う土地で、自分の音楽だけを武器に世界水準のアーティストと肩を並べて演奏することは、それほど簡単じゃない。自分の音楽に対する並々ならぬ自信と、どんな状況でも楽しめるバイタリティが必要だ。ベルリン発信のテクノ・レーベル onpa)))))に所属するは、坂本龍一、ラスター・ノートンのフランク・ブレットシュナイダー、フランスのDigikiことアントナン・ゴルチェ、Minutemen / The Stooges のマイク・ワット、モーマスなどの、なみいるビッグ・ネームと共演しても全く臆することは無く、むしろその度に共演者の度肝を抜く楽曲を披露している。
今回のニュー・アルバムは彼女の本領がもっとも発揮されるライヴがそのままパッケージ化された。大胆かつ繊細なその音楽を目当てに500人もの観客が集まったという伝説のライヴを聴けば、の音楽には、自信と愛情がたっぷり詰まっていることがわかるはずだ。

インタビュー & 文 : 池田義文

photo: ©2009 Sylvia Steinhaeuser

INTERVIEW

—今回ライヴ・アルバムを発売しようと思ったのは、何故ですか?

私はCDとライヴではどうしても曲の作り方が変わってきてしまうのですが、ライヴにまだいらしたことがない方にも、ライヴ用に作っている曲を聞いてもらいたかったので。

—ライヴ盤とスタジオ盤にはどのような違いがありますか?

スタジオ盤は、あくまでどんなシチュエーションや再生機器にも耐えうるように、「技術的にきれいに仕上げることが最優先なのかなぁ」と最近思うのです。でも、ライヴ盤はあくまでライヴ盤なので・・・荒削りでもノリやテンションやらを優先する方が、技術よりも大事です。と言い切っても、「きっと許されるな」というところが違いかなぁと思います。とはいえ、今回はやはり、配信用にかなりの部分の低音や空気感をぎりぎりまで削らざるを得なかったのも現実でした。作業しながら、ちょっと音域を削るのは寂しかったですが・・・でも、『配信には少々粗すぎると人に思われてもいいや! 仕方ないし! 』という気持ちで、ライヴになるべく近い形でパッケージするように頑張りました。

—カットアップ/コラージュ的で実験的な部分とポップな楽曲が見事に融合していると思います。曲作りの際に気をつけている事があれば教えてください。

制作途中、とにかく常に聞き込んで聞き込んで、たまに間をあけた後に他人のふりをして聞いてみたりして、自分の中から自然に出てくる展開や音質なんかにたいする正直な欲求や思いつきにこまめに答えるようにしています。その繰り返しの作業で、ひたすら自分のアドレナリンに相談している。と言っていいと思います。

—1st Album『ufunfunfufu』、2nd『2Ufunfunfufu』。今回のライヴ音源までハイ・ペースでのリリースが続いています。忙しい日常生活の中で、どのような時に楽曲を制作していますか?

基本的に制作作業が一番好きなので常に作っています。放っておかれたら、「起きるー作業ーご飯ー作業ーお茶ー作業ー寝る」というくらい不健康に暮らしてしまうので、最近、逆に作業にこもりすぎてしまわないように気をつけています。あとアーティスト友達から見ても、どうやら私は作業が猛烈に早いことが、最近になってわかってきたので、なおさら休憩をこまめにとるように心がけています。

とはいえ例えば2、3日何も音楽制作が出来ていないと、ちょっとそわそわしてきます。なので、やはり結局基本的にいつも楽曲制作をしています。

photo: ©2009 Sylvia Steinhaeuser

—海外で日本人アーティストと共演をする機会はありますか? また、海外で音楽活動を続けるために必要な事はどんなことですか?

基本的に日本人ばかりを集めるイベントよりも多国籍なライン・ナップでやってくれるイベントが好きなので、あまり日本人の方とブッキングされた記憶がありません。国や地域やイベントにもよりますが、どんな日本人アーティストさんも、とりわけ日本人にずっと出会わないで過ごすことは非常に多いのが現実だと思います。

海外で音楽活動を続けるために必要なことは、自分自身の好みを正直に把握できる能力を見失わないことと、人に思いやりをもつことと、あと、ここぞという時にだけ勢いをだせる力でしょうか・・・たぶん。

—ベルリンにいて日本のテクノ、エレクトロニック・ミュージックの動向が伝わってくる事はありますか?

普通すぎるかもしれませんが、ミクシーやブログで知人の日記を読んでいるときが、一番リアルに伝わってきているかもです。広告や宣伝みたいに操作されていない、生の声なだけになおさら「なるほどー」ってなります。

—またベルリンでは日本のエレクトロニック・ミュージック・シーンはどのように映りますか?

きれいに完成されているような。
本当、善し悪しは別にして、日本ってありとあらゆるものの完成度が高い国だと思います。
ものすごいことだと思います。

photo: ©2009 Sylvia Steinhaeuser

—ここ数年日本では、大小様々なエレクトロニック・ミュージックのフェスティバルが各地で開催されています。現在のベルリンのエレクトロニック・ミュージックのシーンでは、どのような事が起きていますか?

わー、そうなんですか!
いいですね! 楽しいの好きです。楽しそう。楽しいですか?
そもそもベルリンってシーンがあるのでしょうか? シーンがないのがシーンなのかな? とも、思うような。シーンという程気張っている人が少ないのかも。シーンで音楽を作るというよりは好きにつくっていたら、ベルリン以外にいる人達がベルリンのシーンを分析して語っていた、という風に私には見えています。これも善し悪しはわかりませんが、「ベルリンのシーン=てんでばらばら=ほっといたら勝手にうずまいちゃった個性」という事態が毎日起こっている気がしています。違っていたらごめんなさい。

—新作のライヴ音源を聴いて、日本でのライヴを待ち望むリスナーが更に増えると思います。今後の予定やメッセージがあれば、お願いします。

実は今、頭がとっ散らかっているのですが・・・私の覚えている限りでは、とりあえずサードが無事にリリース出来るように今は最後の仕上げの段階です。あと何人かのドイツのアーティストさんのリミックスも今まさに手がけています。スペインであるコンピにも参加していて、それもリリース待ちです。あとは次回からのライヴに向けて、最近映像作りも時間を見つけてはリフレッシュもかねて制作しています。そろそろライヴ中に映像をながせるようになっておきたいなぁと思って。ちなみにわざとではなかったのですが、映像もカットアップな感じです。偶然そうなりました。次回日本でライヴが出来る機会があったら、是非見ていただきたいです。ライヴって本当にCDだけでは語り尽くせないものなので、はい、機会がございましたら、是非。

どうもありがとうございました。

photo: ©2009 Sylvia Steinhaeuser

PROFILE

2008年8月、ベルリンの主要メーカーとドイツ有数のメディア・カンパニー「ピラニア・ミュージック」等が組織する委員会「ベルリン・ミュージック・コミッション」が、ベルリンを代表するアーティストを集めたコンピレーション・アルバムを企画。ベルリン中の250組を越えるアーティストの中から、kyoka のファースト・アルバム収録の『ybe ybe 』が見事セレクトされる。それをきっかけにドイツ最大の音楽ショー・ケース『ポプコム(Popkomm )』へ招待されライヴを敢行、大成功に終わる。その後、ライヴの評価が今まで以上に高まる中、次々とイベントへの出演が期待されている。

オススメ onpa))))) catalogue

JEAN-MICHEL 『Tons Of Fun』
DEBUG誌の月間チャート1位を獲得し、ヨーロッパでの動きも順調なジャン・ミシェルのニュー・アルバム。今作はよりダンサブルでリズミカルなビートを多用していて、ブレイク・ビーツだけでなくダブ・ステップの要素までも取り入れた素晴らしい作品。シンセのメロディーがポップかつカラフルで、日本の“Sooner”に続いて、2009年エレクトロニカ・アルバム・ベスト3に入ること間違いなしの最高傑作。

sub-tle. 『pre_mary』
クラフトワーク、ノイ!、そしてラ・デュッセルドルフといえばクラウス・ディンガー。5年間、その彼と行動を共にし、現在クラウスのソロ・プロジェクト「ジャパンドルフ」に参加している2人のドイツ在住の日本人、オカモトサトシとオノウチカズユキのエレクトロ・アコースティック・ユニット、サブトレ(sub tle.)。長年のドイツ滞在歴とそこにおける元クラフトワーク/NEU !のクラウス・ディンガーとのコラボ活動から授かった電子音楽芸術、サウンドマテリアルの構築手法、音をコラージュするだけではなく「引き」の美学をも感じさせるアンビエント的作法の影響も大いに感じられる新世代のフォークトロニカ。


kashiwa daisuke 『April.#02』
onpa)))))の中で最もベスト・セラー記録更新中の作品。カシワ・ダイスケのファースト・アルバム。あまりにも叙情的でクラシカルな音源と電子音楽の見事な融合。


CLOSE UP : ロポピッチャー

CLOSE UP : クラムボン

CLOSE UP : ユピトーク

CLOSE UP : Maher Shalal Hash Baz

この記事の筆者
池田 社長 (tripxtrip)

ミュージャン、DJ、ライター、ライブ録音エンジニア、肉体労働者。あなたが望めば、何にでもなります。陰核御殿というハードコアバンドでギター弾いています。ミジンコ大好き。チャリが好きで、5月に東京から屋久島までママチャリで遊びに行きました。それだけでイイです。だふにあというダブバンドも始めました。万歳。 twitterアカウント: http://twitter.com/tripxikeda

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