お手紙できてうれしいです。
2005年に、あなたがタラ・ジェーン・オニールとトクマルシューゴと一緒にツアーで京都へいらっしゃったとき、ぼくも共演させていただきました。
あなたのライブをすごく素敵だと思ったのですが、そのときは(どうしたわけか)すこし気恥ずかしくて、お話したいこともあったのに、できずじまいでした。

今日あなたにお伺いするのは、ひとりのリスナーとして、そして別の国に住んで、別の言葉をつかって、しかも同じように「うた」を歌っているものとして、ぜひ聞いてみたいと思っていることです。
どうぞよろしくおねがいします。   

THE RESPONSES


—いつだったか、あなたがジャズ・バンドのシンガーだったと聞いたことがあります。ミラーの魅力のひとつには、古きよきアメリカン・ミュージックの要素と、ロウでミニマルな、現代のオルタナティブ・ミュージックを象徴するようなソング・ライティングの手法が同居していることがあると思うのですが、最近の2枚のアルバム(と)で、あなたの世界がぐっと広がってきたような気がします。トラッド、アフリカン、中南米の音楽など、インターナショナルな要素が強くなりましたね。あなたを、そういったワールド・ミュージックに接近させる機会や動機はなんだったのでしょうか?

音楽性がひろがったね、と最近よく言われるし、質問もされるのだけど、不思議なことに、わたしにとってその質問は、そもそもの「音楽的なインスピレーション」に関することと大差がないように思うわ。

大きくて、いつも腹ペコな"music body"を持っていて、最近になって、目の前の食卓にたくさんの美味しい"music food"が乗るようになった。周囲に、すばらしいミュージシャンがいることに気づいたの。それは本当に幸運なことで、いま、彼らとの宴を楽しんでいるのよ。

音楽をつくるとは、ひろがってゆくこと。いくつかのアイディアをもって、まずはギター一本で歌を紡ぎ、少しづつ育てていく。だんだんと大きくなって、最終的には広大で、奇想天外で、ひとつの音楽的な世界が完成する。
その過程のなかで、たくさんのひとと出会い、彼らのすばらしい助けを借りるでしょう。多くのひとびとと一緒に音楽を生み出すという体験へわたしを導く、その動機であり機会であるものはまさにこの「みんなとの出会い」そのものだと思うのです。


—を一聴してまず、その交響楽的なオーケストラの使い方に驚かされました。あなたの曲や声とぴったり調和していましたし、使われている多種多様な楽器の響きが、あなたの音楽から本当に国境を取り払ってしまったかのようでした。このアレンジは、はじめから意図したものだったのでしょうか? あなたの、剥き出しの歌がどのようにしてシンフォニーをまとっていったのか教えていただけますか?

使った楽器のチョイスについては、とくに意識したことはないわ。たくさんの音楽仲間がだんだんと集まってきて、いまも増え続けている。アルバム制作やツアーごとにたくさんの友人ができるのよ。

たとえば、まず朝ベッドに体を横たえながら、大きな夢をみる。それでもその日は、とても小さなことしかできないかもしれない。けれど、次の日にはどうしたらもっと大きくできるかを考えるのよ。そして、わたしの夢みる物事についてよく知っている人に会いに行くの。すると彼らが、さらに大きくする手助けをしてくれるのよ。

このアルバムはそんなふうにしてできたわ。完璧な計画もなかったけれど、完全に予期しなかったわけでもないのよね。

—歌詞について質問します。あなたの歌は、"所有"について歌っているように思えました。つまり、与えること、失うこと、叶えられなかった欲望など、英語の歌詞を読む能力に乏しいのがとても残念で申し訳ないのですが、そんなぼくでも、あなたの歌のテーマのようなものは垣間見た気がします。けれど、同時に、そこで歌われているのは「覚醒」なのか「悲嘆」なのか、「人間らしく生きることへの励まし」なのか、どれなのだろうと思いました。において、あなたの詩がとっている姿勢について教えていただけますか?

日本の人と、歌の内容についてお話できるのは嬉しいわ。翻訳してあげられたらいいのだけど…生まれ変わったらきっと日本語をマスターするわ。それからでも、このお話はする価値があるでしょう。

さて、あなたの言うとおり、歌詞の中には、喪失や悲嘆がたくさん散りばめられている。でも、同じように、希望もあるのよ。歌詞には、できるだけ多くのテーマを込めようと思ってね。

私たちが種としての知恵を失っていっていることについて、個人的な喪失について、そして誰かとの関係を通じて、なくした物に気がつくということ。
それから、悪化する地球環境や、いまも尾を引き連鎖を繰り返している歴史的な軋轢、肉体的な生はいつか終わるけれど、ここにいるあいだは愛し合うことも気づかい合うこともできるという単純な真実。
私は、そういった「人間の道」について歌ったつもりよ。

—最後の質問です。ずばり、今回の""というタイトルが意味するのは、どういうことなのでしょうか?

"aspera"は、ラテン語で「困難」「荒地」「荒涼」を意味するの。そして"spera"は「希望」。

希望が困難の中にぴったりとくっついている、この単語はもともと好きな言葉なのだけれど、今回のタイトルとアート・ワークは1977年に打ち上げられたNASAの惑星間探索機、ボイジャーに関係しているの。
そこには「GOLDEN RECORD」(訳注:ボイジャー探索機に搭載された、地球外生命体に地球の生命や文化の存在を教えるための金製のレコード。115枚の画像と波、風、雷、鳥や鯨など動物の鳴き声などの多くの自然音を集めた。さらに様々な文化や時代の音楽、55種類の言語のあいさつ、米大統領と国連事務総長からのメッセージ文なども加えられた)が積まれていた。

私には、昔、ラテン語の時代に作られた"aspera""spera"という二つの単語が、時代を超えていま、この世界にとってとても意味深く重要な意味を持っているように思えるのです。

ありがとうございました。

下手な英語のせいで、ぶしつけな質問になってしまっていたたら、どうぞ許してください。日本にはまたいらっしゃらないのですか? お会いできるのを楽しみにしています。

ゆーきゃん

ありがとう、ゆーきゃん。

日本には今年、行けたらいいなと思っています。そのときにね。
LOVE ミラー












DISCOGRAGHY





フィル・エルヴラム(ザ・マイクロフォンズ)との共同プロデュースによる『You Think It's like This But It's Really Like This』、『アドヴァイサリ・コミッティ』の2枚のアルバムは、K新世代の中でもスバ抜けた高評価と支持を獲得している。アメリカン・ルーツ・ミュージック色濃厚なプロジェクト『Songs from the Black Mountain Music Project』を挟んで、2年振りとなるオリジナル3rdアルバム。






クレツマー、映画音楽、サンバ、エレクトロ、多様なジャンルのエッセンスをナチュラルに消化したサウンド。「フィル・エルヴラム (ザ・マイクロフォンズ)のベスト・プロデュース作」と賞されるアルバム。

LINK

Mirah MySpace  http://www.myspace.com/cmonmirah

レーベル 7e.p website http://www.7ep.net/

レーベル K website http://www.krecs.com/html/artists/disco.php?interest=25

Mirah

“K”のトップ・セリング・アーティストであり、Chara、モデスト・マウス、+/-、二階堂和美ら多くのアーティストから絶賛を浴びる、近年のUS北西部シーンが産んだ最高の女性アーティスト。コケティッシュ&キュートな歌声と、ジャズ&フォークの香り漂う絶品のソング・ライティングが魅力。

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