2008/12/29 00:00

稀代のポップマエストロ、Jason Falknerによる7年振りのビートルズ・トリビュート!

ビートルズ・トリビュートというキーワードで音源を探したならば、その数の多さに呆然となる。

世にあるトリビュート盤の中で最も数多くトリビュートされているといっても過言ではないアーティストがビートルズだし、その作品群の中でもストレートに敬意を表現するもの・変化球で表現するものなど愛情表現は様々だ。既発のものでもオーケストラアレンジのビートルズだとか、HR/HMのビートルズ、TROJANのビートルズ・レゲエBOXなんてのも面白かったし、他にもJAZZでビートルズ、ボサノバでビートルズ等など…挙げればきりがない。今回はフジロック’08でのステージも話題のJason Falknerが、盟友くるりNOISE McCARTNEYからリリースした作品だ。

2005年にリリースされた鈴木惣一郎氏監修「りんごの子守唄」が話題になり、僕も当時聴きこんだ一人なのだけど、その企画の走りとなったのが「Bedtime With The Beatles」(2001年)であり、今作はそんなコンセプチュアルなアルバムの第二弾である。

 前作から比べると音色が多く華やかな印象もあるが、そこはBedtime〜というだけあって「イエロー・サブマリン」のジャケよろしく深く海底へ連れて行ってくれるような、ベッドサイド・ミュージック。何も足さない、何も引かない形でのトリビュート、これが幼少からビートルズに親しんできたJasonの愛情表現であるらしい。

ビートルズのアルバムを持っていなくたって、歌詞を読んだことがなくたって、ついつい口ずさんでしまえるほどの楽曲ばかりで、ビートルズ初心者〜LP・EPなんでもござれのビートルズ狂まで存分に納得でき、楽しめる内容となっている。

The Three O' clock〜ジェリーフィッシュ〜The Graysとバンドをわたり、AIR(エール)のツアーやBECK、TRAVIS、Paul McCartneyのレコーディングにも参加という華々しい実績を積みながらも、そんな肩書きが邪魔になるほど純粋で、素直にビートルズの楽曲を楽しみ、音楽への尊敬に満ちた演奏の今作。そんな作品に対する姿勢が、マニアを唸らせるためだけの音楽ではなく、色んな人のベッドタイムのための音楽になるのかもしれない。Paul McCartneyの推薦文から察するに、当の本人だって、この作品をベッドサイドに置いているんじゃないだろうか。こんなに素直で気持ちのいいアルバムの前には、マニアだって、ビギナーだって、ビートルズ本人だって関係ないはず。

ビートルズ・チルドレンが作った今作は、リアルタイム世代のリスナーから、その子供の、そのまた孫の世代まで受け継がれる、サウンドトラックなのかもしれない。(text by 南日久志)


I'm OK… You're OK

99年に、Nigel Godrich(RADIO HEAD ”OK COMPUTER”)をプロデューサーに迎え制作された”can you still feel? ”以来となる、3rdアルバム。

今作は、1stアルバム”Jason Falkner Presents Author Unknown”同様、プロデュース〜各演奏など全てJason自身が行った渾身の意欲作となっており、期待を裏切らない、卓越したメロディー・メイクから生み出される、豊潤でカラフルなハイ・クオリティー・ポップ・ソングスが満載!! まさに、「貫禄! 」メロディーの洪水が僕らを飲み込む! 更に、TV EYESを経験し、前2作には見られない新たな才能も魅せており、ヴァラエティに富んだ作品となっている。

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1968年LA生まれ。音楽好きの家族の影響で、ドラムやギターを幼少の頃から触り始める。 高校卒業後、ギター・バンド【The Three O'clock】なるバンドに参加、88年にPrinceのレーベルであるPaisley Park Recordsよりメジャー・デビュー・アルバム”Vermillion”を発表。リリース後、直ぐに解散。

その後、ギタリスト募集広告により知り合ったRoger Manningから【JELLYFISH】という新しいバンドに誘われ加入。(日本で『90年代ポップの金字塔』と最高の賛美を受ける)そこで、 Jasonはギターとベースを担当する。90年に発表した1stアルバム”Bellybutton”リリース後、JasonはJELLYFISHを離れる。

93年、セッション・ミュージシャンとして、数々のバンドで活動する。その中で、マルチ・プレイヤーJon Brionに誘われ【The Grays】というバンドに加入。

94年に、”Ro Sham Bo”をSony/Epic Recordsよりリリース。音楽性の違いにより一枚のアルバムを残し解散。

96 年にJasonは自身初となるアルバム”Jason Falkner Presents Author Unknown”をElektra Entertainmentよりリリースする。このアルバムは、Jasonが全曲をプロデュースからそれぞれの楽器の演奏まで全てを担当した。

99 年、Jasonは2作目となるアルバム”Can you still feel?”をElektra Entertainmentよりリリースした。今回は共同プロデューサーとして、Nigel Godrich(RADIO HEAD ”OK COMPUTER”などを担当)を迎えた。

2001年、Roger Manning、Brian Reitzellらと組み、80’sフレイバー漂うエレクトロ・ポップ・バンド【TV EYES】としてのレコーディングも開始する。

02年夏、再びAirのベーシストとしてヨーロッパをツアーする。Beck、Aimee Mann、Travisらのアルバム制作へ貢献した。TV EYESとして、03年5月にLos Angelesにて2度ライブを行った。 6月から、Jasonは3rdアルバムの制作に取り掛かり始めた。並行して、AirのTlkie WalkieやBeckの次回作の制作も手伝う。

04年1月〜2月には、Travisのオープニング・アクトとして12箇所を周る。その間、5曲新曲を収録したEP ”Bliss Descending”(WRECKCHORD RECORDS)を発表。

2005年には、PAUL McCARTNEYのソロ・アルバム”Chaos and Creation in the Backyard”へ2曲ギターで参加。

06年には、Beckの”The Information”で数曲参加しつつ、自身のアルバム制作を進める。 10月TV EYES ”s/t”をくるり主宰NMRより発売。 そして、07年4月に8年振り待望の3rdアルバム”I'm OK... You're OK”を日本先行で発売となる。

08年、FUJI ROCK FESTIVAL '08へ出演することが決定! 更に、7/28に東京にて待望の1マン・ライブを行う。

Peace Tree

V.A.

¥ 1,572

この記事の筆者

[レヴュー] Jason Falkner

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