Title | Duration | Price | |
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I Won't Turn Off My Radio alac,flac,wav,aac,mp3: 16bit/44.1kHz | 03:35 | N/A |
いよいよ始まったKen Bandの新ターム。ワインディング・ロードから始まり、いくつものカーブを駆け抜けてきたKen Yokoyamaの前に、いま、どこまでもまっすぐな走路が広がっているようだ。 ハイ・スタンダードで金ピカのトロフィーを手にしたあと、ソロとして再出発したKen Yokoyamaのキャリアは、実にさまざまなものと闘ってきた軋轢の記録でもあった。楽曲は相変わらずポップで、本人もことさら陽気なキャラクターを打ち出していたが、熱心なファンはとうに気づいている。空中分解してしまったかつてのバンドへの苦い想い。今も超えられないハイスタという幻想。さらにはリアルに降りかかってきた音楽不況。CDは売れずバンドはおしなべて伸び悩み、自由が失われるばかりのロックシーンがある。それらと本気で闘い、時に笑いながらケツをまくり「うるせぇ、何があっても俺は俺を信じるんだ」と突っ張ってきたのが横山だった。 そして前作『Best Wishes』。東日本大震災を受けて主張をガラリと変えた横山は、共に闘おうと仲間を奮い立たせ、力強い愛を謳うようになる。ステージでは日の丸を掲げ、そこを降りてもなお発信を止めることはない。迷える素の表情、これまでの人生観を収めた映画や書籍が次々と発表されたのも偶然ではないだろう。もはやオレひとりの闘いじゃない。考えるべきは音楽云々ではなくこの国の未来なんだ。そういった意思の強さは、『横山健〜疾風勁草編〜』のDVDに収められた新曲「Stop The World」にも感じられた。もっとも、これは横山本人が「次のアルバムに向かう段階で、この曲だけトーンが違うように感じられた」と語った異色ナンバーでもあるのだが。 では「次のアルバムに向かうトーン」とは何か。それをわかりやすく伝えるのが今回のシングル『I Won’t Turn Off My Radio』である。攻撃性よりも楽しさが勝り、ほんの少しの切なさも含みながら駆け抜けていくパンクロック。ビーチ・ボーイズ好きな横山のセンスが光る、豪快ながらもスパイスの効いたコーラスやアレンジ。震災というシリアスなテーマを超えて、また快活でポップなKen Yokoyamaが戻ってきた。一聴する限りはそんなふうにも感じられる。 だがこれは間違いなく『Best Wishes』以降の音である。そして45歳という年齢を自覚した表現者の音である。迷いのない歌詞が迷いのないメロディに乗って心を穿つ。まったく楽しげなナンバーだが、これは遊びでは決してないという覚悟の強さばかりが胸に残るのだ。 もしかすると横山健は、もうむやみに闘っていないのかもしれない。今の彼は何かに対抗するためではなく、「いつか消えていく自分が残せるもの」を全力で伝えるために音を鳴らしているように見える。やるべき仕事が完璧にわかっている。それは表現者にとってなんと幸せなことだろうか。視界は良好。目の前の道を遮るものは何もない。ゴー・ストレイト。邁進あるのみだ。
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