聴き手に情景を喚起させる物語性の強い作風から、ダンスや演劇、映像など、ビジュアル分野とのコラボレーションも多い吉田靖。自身三枚目のアルバムとなる今作は、それぞれの楽曲が「別れの物語」をテーマに作曲されたもの。一曲毎にストーリーが展開し、最終的にはアルバム全体を通して一つの大きなストーリーを形成する壮麗なフィクションとなっている。 編成的には前作のスタイルを更に推し進め、ピアノ、チェロ、バイオリンを中心に、ギター、ベース、ドラム、フルート、トランペットなど、数多くの生楽器によるオーケストレーションで構成。室内楽的アプローチやダイナミックなオーケストラ・アンサンブルで、情感豊かに奏でられる旋律はとても感動的だ。静謐で物悲しい雰囲気でありながら、躍動感や生命力と言ったポジティプなものも感じさせる、表現力に満ちた一枚。