まさにサウンドスケープの“魔術師”のような3人である。ギター・ベース・ドラムという最小構成のアンサンブルで2003年に大阪/日本で結成された百景。いまや、日本のシーンにおいてもインストゥルメンタルのロック・バンドというのは決して珍しいものではなくなってきた。それでも、百景の3人は他にはない独特な色を持つサウンドを鳴らしている。そのオリジナリティの秘密は、彼らが持っている「緊張」と「ゆるさ」の絶妙なバランスにある。彼らの編成は、ギター・ベース・ドラムという最小構成のアンサンブル。3つの楽器は一分の隙もないアンサンブルを形作っている。が、一方で、彼らの鳴らすメロディやフレーズはゆるやかで、どこか平和で温かな情景を描き出すのだ。その景色が、聴き手の耳にしっとりと沁みこんでいく。(ライター/柴那典)百景の音楽から僕が見たものは、日本の原風景的な光景だったのかもしれない。情緒ある日本の風景美と置き去りにしてきた感性を、懐かしさと幸福な憧れをもって感じてみたりもする。もっとも深いところに眠っている僕達の共鳴箱が動いたとき、言葉は力をなくす。「あの空だけがなぜ特別に美しいのだろう」幼い頃不思議に思ったその答えが、今、月日を超え、百景の音楽によって呼び起こされる。(Takaakira Taka Goto MONO)