Tenderlonious

Jazz/World

Discography

Jazz/World

設定温度40℃の地下室内で平然とホットのダージリンティーを啜る様にして、首謀者 Tenderlonious は、ジャズファンクとアフロビートのその先を見据えている。 目紛しく呼応し合うドラム / パーカッション / ベースの嵐と、だまし絵の様なパースペクティヴを示す美しい鍵盤のコードの狭間を、フルートとシンセサイザーで往来する彼独自のスタイル。まるで 74年のHerbie Hancockにカポエイラで勝負を挑む 00年のSlum Villageの様なこの勇敢なヴァイブスは、寄せては返すサブスク時代の荒波をものともせず、華美な装飾は徹底的に排除し、鬼の様にストイックに、渋く、辛抱強くグルーヴし続ける無骨なジャズメンシップと、音楽への愛情、そして何より信頼に溢れている。 22a MusicはTenderlonious率いるサウスロンドンの音楽仲間の集い。DJやジャズリスナーを中心にカルト的人気を博すRuby Rushtonや、惜しくも袂を分かつことになったYussef KamaalのHenry WuとYussef Dayes、Gilles Petersonからの寵愛を受けるReginald Omas Mamode IV、そしてその兄弟Mo KoloursにJeen Bassa、Al Dobson Jr.やDennis Ayler、James 'Creole' Thomasら様々なシーンの最先端を突き進むプロデューサー、エンジニア、演奏家たちによって構成されるいわばファミリーの様な集団だ。いま一際盛り上がりを見せるUKジャズシーンが成熟する以前から、マイペースに活動を続けていた彼らは、そもそもDJカルチャーの中で頭角を現してきたが、他のUKのジャズメンの様に、オーセンティックな演奏家としての魅力はまだまだ周知されていない。 今作”The Shakedown”では、まさに時代が彼らのヴィジョンと魅力にフィットした形で、最良のタイミングでリリースされることになった。今作はこれまでのクルーの活動の総決算でもあり、同時にTenderlonious名義でのデビューアルバムでもある。 レコーディングにはthe 22archestraという名義でクルーのメンバーを含む6人の演奏家にTenderloniousが加わり、彼自身によるプロデュースで制作が行われた。録音はアビーロードスタジオ。Ezra Collective、James Blake、Frank Oceanの最新作での仕事で知られるMatt Myskoがエンジニアを担当している。 この名盤の登場により、MF DoomやMadlibはしばらくレコ屋を巡る必要もなくなるだろうし、ジャズ、ソウル、ファンク、ヒップホップ、アフロビートを志す音楽ファンたちも、この作品と向き合うための時間を用意せざるを得ないだろう。 これは音楽への従順で素朴な愛、そして祈りだ。

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