Radical Face

Discography

作家が本を書くようにしてアルバムを作りつづける米フロリダ州ジャクソンヴィルの才人ベン・ クーパーのメイン・プロジェクト=ラディカル・フェイス。長年、彼がライフワークとして取り組んできた「家族」をテーマにした「The Family Tree」三部作の最終作『The Family Tree: The Leaves』がついに完成しました。デビュー作『Ghost』製作時より構想し、実に8年をかけて完結させた一大巨編。 この三部作において1800年から1950年における架空の家系をモチーフにし、アメリカやクーパー家の歴史と彼自身の経験と想像を複雑に絡め合わせることで、幻想と寓話が入り交じる物語を形成しながら、その時代背景に合った楽器だけを基本的に用いるというリミットを自ら設ける挑戦を行っていましたが、本作では物語内の時間が経過していくにつれ、必然的により多くの楽器が投入されており、三部作のなかでもっとも作りこまれたプロダクションは息を呑むものがあります。また、三部作の各章をつなぐために、共通のメロディーやコード進行を血統に見立てるようにして用い、変化していくそれらのメロディーがある世代から次の世代へと流れていくことで、時間の流れすらを操ろうと試みています。1作目『The Family Tree: The Roots』(2011年)、2作目『The Family Tree: The Branches』(2013年)だけではわからなかった想像をはるかに越える深みと壮大さ。途絶えることのない血が、物語をすすめていきます。 パートナーであるヴィオラ・ダ・ガンバ奏者ジョシュ・リーの力を借りているものの、ほとんどすべての楽器をベンひとりで手がけていますが(ミックスからアートワークまでも)、そんなこだわりつくした壮大な物語の結末は決して大仰なものになることはなく、前2作に比べて自分自身の経験と感情がより濃く反映された、これまででもっともパーソナルな作品となりました。10人兄弟の大家族で育ち、14歳のときにゲイであることをカミングアウトしたことで親に勘当されてからは自分だけの力で稼ぎながら高校まで通った彼の人生は、決して穏やかなものではありませんでした。大昔においてきたはずの、彼いわく「奇妙で暗い家族の歴史」が期せずして再び姿を現した家族間の事件によって、姪を養子にしたことで期せずして親となったベン。本作製作時に起きたそんな出来事は、完璧主義者のベンですら元々あったプランや意図を貫き通すには大きすぎるものでした。最終曲「Bad Blood」では自身の少年期についてはじめて自叙伝的に歌っています。本作について彼はこう語っています。「音楽をセラピーとして使うことにいつも罪を感じていたけど、もっとも悲しいことでさえ、ひとは美しいものにできるんだ」と。 天才シンガー・ソングライター、ベン・クーパーが成し遂げた驚異のマスターピース。隠者気質の彼がシーンの中心になることはないかもしれませんが、この三部作は多くの人びとの心に爪痕を残し、長く語り継がれることになるでしょう。なお、『The Family Tree』三部作の本編には収録されなかった楽曲を集めたサイド・アルバム『The Family Tree: The Bastards』も本作のあとにリリースされる予定です。

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V.A.

静寂と平穏が強く求められている現代で、かなしみをたたえた美しい音楽こそが必要なときがある。そんな想いから編まれたコンピレーション・アルバム『エンディング・ミュージック』は2017年にひっそりと発売され、繊細で美しい音楽を必要とする多くの人々の耳に届きました。本作『エンディング・ソングス』は「この世を去る60分前に聴く最後の音楽」をコンセプトにしたコンピレーションの続編。インスト作品を集めた『エンディング・ミュージック』に対して、『エンディング・ソングス』は歌の入った曲だけで同じコンセプトの物語を構成しました。 自分がいなくなった後の世界を想像すること、たいせつなひとを思い出すこと。「自分の葬式で流してほしい音楽」という誰しもが一度は考えたことがあるかもしれない妄想を丁寧にかたちにしたような、ぬくもりだけが詰まったアコースティック・ソング集。天使のような特別な歌声と、流麗なメロディーが形作った祈りのような優美な歌が、安らぎを求めるかたにとって穏やかな60分間を約束します。

15 tracks

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