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2017/04/04 21:00

 

“今日が新しい物語のはじまり” 忘れらんねえよ 野音初ワンマン大成功―OTOTOYライヴレポ

 

忘れらんねえよ、日比谷野外大音楽堂での初ワンマン・ライヴ大成功。

“ロックの聖地”と称される舞台で2時間半全31曲にわたり行われたライヴは、バンドの存在感、パフォーマンス、歌と演奏の魅力がすでに野音の規模を越えるスケールの大きなものになっていることを感じさせるものだった。

“本日は、〈忘れらんねえよ日比谷野音ワンマン ワンワン!ワンマン!野音でワオーン!〉にご来場いただき~”。開演前、淡々と読み上げられる女性の場内アナウンスに会場中からなんとも言えないクスクス笑いが沸き起こる。こんなツアー・タイトルを読むことになるなんて。もしかしてバンド側はこんなシーンも想定してタイトルを付けたのだろうか。だとしたらすごい。とにかく真面目に職務を遂行したおねえさんに敬礼だ。

オープニング、[Alexandros]の「ワタリドリ」が流れ、会場後方に一斉に視線が注がれる中、客席のド真ん中に柴田隆浩(Vo.Gt)が登場。スタッフたちに担がれて野音のステージまで鳥のように運ばれていく。青空高く、鳥インザスカイ。満員の客席を縫うようにステージにたどり着いた柴田が梅津拓也(Ba)、サポートドラマーのマシータ(Dr)を呼び込むと、3人でSEXジャンプをキメて野音ワンマン・ライヴがスタート。

記念すべき1曲目は、大きな会場でライヴを行うたびに歌われてきた「バンドワゴン」だ。サビの歌詞をもじって“でかいステージにたどり着けた!”と叫ぶ柴田に、観客たちも大歓声を送って喜びを分かち合う。曲が終わると原点回帰の“サンキューセックス”のコール&レスポンスでロックの聖地に熟練の下ネタで対抗する忘れらんねえよ。めったにない着席ライヴだがライヴハウス同様に最初から観客は総立ち、普段以上に普段通りの彼らがステージにいた。「戦う時はひとりだ」の演奏途中から爆弾ジョニーのロマンチック☆安田(Key.Gt)が加わり、「僕らパンクロックで生きていくんだ」へ。梅津がリッケンバッカーベースを高く掲げて後ろの客席までアピールしながらコーラスをとっている。他のメンバーは普段着っぽい衣装だが梅津だけものすごく派手。ファイヤーシャツにフライングVという梅津の初期ファッションからの変化もバンドの歴史の1つといえる。

野音がソールドアウトになったとの歓喜の報告から、LEGO BIG MORLのタナカヒロキ(Gt)が加わり、「中年かまってちゃん」「体内ラブ~大腸と小腸の恋~」「犬にしてくれ」と、ガレージロック、ファンキーな16ビート、大合唱できる曲と、多面的なバンドの魅力を凝縮した楽曲たちを聴かせた。「中年かまってちゃん」のギターリフを弾くタナカのアクションがバンドにさらなる熱量を与えている。そして「犬にしてくれ」での柴田のシャウトは大合唱に負けない迫力。ヴォーカリストとしてどんどん自信をつけているようだ。演奏も抜けの良い音でライヴハウスのときは一味違うダイナミックさを感じさせる。続いて泣きのメロディ「そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか」では安田の鍵盤が抒情的なムードを高めていき、「世界であんたはいちばん綺麗だ」の熱唱には静かに聴き入っていた客席から大きな拍手が贈られた。

野音ライヴの醍醐味は、なんといっても夕方から日が暮れて夜に変わる時間。ビル街に囲まれた景色の中でこの時間に演奏される曲でバンドの個性が出るものだ。そんな夕暮れ時にまず演奏されたのは柴田と梅津の思い出の曲「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」。“赤い夕焼けが俺を染める”と歌われるこの曲から、サーチライトが飛び交う中、凄まじいマシータのドラムに導かれて始まったのは「夜間飛行」。これ以上ないシチュエーションの中、静かな歌い出しから始まり空に向かって叫ぶようなサビメロと感情に寄り添った演奏でドラマティックに野音を夜に変えてみせた。

それにしても、さすがに4月頭の野外、けっこう底冷えする。そんな空気を察知したのか、“ロックンロールで暖を取ろう!”と野音ライヴ史上に残る庶民派ロッカー的な柴田のMCから「この街には君がいない」「北極星」「CからはじまるABC」と怒涛のライヴ・アンセム3連打。梅津はベースを掻き鳴らす流れで右手を振り上げ体全体で“C”ポーズを取っている。柴田と梅津が肩を組んではしゃぎまわる姿に、観客も寒さも忘れる盛り上がりぶりだ。(「体内ラブ」に続き)本日2つ目のトイレ系下ネタソング「俺の中のドラゴン」ではド迫力のサウンドにヘドバンの嵐で野音が揺れる。

そんな流れをガラっと変えたのは、サウンドプロデューサー・松岡モトキの登場。「まだ知らない世界」「眠れぬ夜は君の名をググるよ」「うつくしいひと」と、『俺よ届け』で完成したメロウな世界を聴かせてくれた。とくにマシータのリムショット、松岡のアコギ、安田の効果音的なギターと、サポートメンバーの仕事が光る中で歌われたバラード「うつくしいひと」は名演だった。そんなセンチメンタルな気分に浸るコーナーが終わると、柴田が「恋ダンス」をガッツリパーフェクトに披露。しかも終わりでスモークが出るスペシャルぶりで“ここでスモーク出るのおかしくない!?”と梅津が指摘するほど。「恋ダンス」はこの日で卒業とのことだが、続いてはもはや忘れらんねえよのステージには欠かせない「よさほい」からライヴは後半戦へ。「ばかばっか」では恒例のビール購入をどうするのか注目されたが、再びスタッフ総出で後方まで運ばれて行き、柴田は無事ビールゲット。その間、残りのメンバーがステージ上で行っていたサイケなセッションがカッコよかった。その後はライヴ定番曲で一気に畳みかけ、「僕らチェンジザワールド」で会場中がジャンプしながら大合唱。「バンドやろうぜ」では野音に咲いた花のように掌が広がった。

“何でもない自分がここに立って歌わせてもらってます。本当にありがとう”と、ファンへの感謝を伝えてから、最後に歌われたのは「この高鳴りをなんと呼ぶ」。ステージの照明が明るく客席を照らすと、たくさんの右手がステージに向けて掲げられて大合唱。アンコールでステージに上がった柴田は、これまで共に忘れらんねえよの音楽とステージを創り上げてきた仲間へ向けてメッセージを送ると、声を張り上げて「別れの歌」を歌った。メンバー脱退を機に作られたこの曲は、今や人生の断片を歌う普遍的な楽曲となった。アンコールの2曲目は、新曲「時間がないっす」を初披露。短いセンテンスで歌うスカ・パンク調の演奏による楽曲だった。さらに配信リリースされMVも話題となった「スマートなんかなりたくない」へ。他の楽曲を加えたシングルとして6月にリリースされることも発表された。

夜が深まり、いよいよ野音ライヴはクライマックスへ。“俺らはあんたらの1番で居続けたい。その上でもっと良い景色を見せたい”そんな感動的な柴田のMCから流れでなぜかチャゲアスの「SAY YES」を合唱したりもしながら、“今日が新しい物語のはじまりだと思ってます。これからもよろしくお願いします”と、最後の曲「忘れらんねえよ」を全員で大合唱。金テープが夜空に舞う中、ワンマンツアー・ファイナル、そして初の日比谷野音ライヴはエンディングとなった。

終わってみれば、“忘れらんねえよがついにあの野音に”というよりは、“忘れらんねえよなら野音ワンマンくらいやれて当たり前”という気持ちになるくらい堂々としたライヴだった。老若男女が喜怒哀楽をぶつけられる彼らのライヴは、もっと大きな会場でたくさんの人を集めることも決して夢ではないと思う。もちろん、野音でのライヴもこれから何度もやってほしい。次回はできればもうちょっと暖かい季節でお願いします! (岡本)

〈忘れらんねえよ日比谷野音ワンマン ワンワン!ワンマン!野音でワオーン!〉
2017年4月2日(日)日比谷野外大音楽堂
〈セットリスト〉
1. バンドワゴン
2. 戦う時はひとりだ
3. 僕らパンクロックで生きていくんだ
4. だんだんどんどん
5. 中年かまってちゃん
6. 体内ラブ ~大腸と小腸の恋~
7. 犬にしてくれ
8. バレーコードは握れない
9. 美しいよ
10. ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
11. 夜間飛行
12. そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
13. 世界であんたはいちばん綺麗だ
14. この街には君がいない
15. 北極星
16. CからはじまるABC
17. 俺の中のドラゴン
18. まだ知らない世界
19. 眠れぬ夜は君の名をググるよ
20. うつくしいひと
21. ばかばっか
22. ばかもののすべて
23. 寝てらんねえよ
24. 僕らチェンジザワールド
25. 俺よ届け
26. バンドやろうぜ
27. この高鳴りをなんと呼ぶ
EN1. 別れの歌
EN2. 時間がないっす
EN3. スマートなんかなりたくない
EN4. 忘れらんねえよ


[ニュース] 忘れらんねえよ

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