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2016/10/13 21:00

 

“俺らは俺らの道を行きます”忘れらんねえよ、満員のZeppワンマンから野音へ―OTOTOYライヴレポ

 

10月9日(日)、忘れらんねえよが初めてZepp DiverCityでのワンマン・ライヴを行い、満員の観客を前に全力バンドマンぶりを発揮して詰めかけた大勢のファンを大満足させると共に、来年4月2日(日)日比谷野外大音楽堂でのワンマン・ライヴ開催を発表した。

“僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ”と題されたこの日のライヴ。小さなステージから忘れらんねえよを観続けてきたファン、最近フェス等で彼らのライヴを観て好きになったファン、もしかしたらこの日が初めての忘れらんねえよライヴだった人もいたのかもしれない。前日にソールドアウトとなったことが告げられたように、Zepp DiverCityのフロアはパンパンに膨れ上がっていた。

開演時間になって流れて来たのは、[Alexandros]の「ワタリドリ」。会場後方に姿を現した柴田隆浩(Vo.Gt)が「ワタリドリのように、みんなで作ったあのステージまで運んでもらっていいですかー!」と、ステージに向かい出発。満員の観客が柴田を夢のステージまで運んでいく。歌うたい、柴田は渡り鳥でいえばカッコウだろうか。いや、そんなことはどうでもいい。いよいよ、忘れらんねえよ最大規模のワンマン・ライヴが幕を開けた。

“愛すべきメンバーたち”梅津拓也(Ba)、サポートのマシータ(Dr)も登場、梅津はステージ前に陣取る梅津ガールズに投げキッスのプレゼント。早くもイケメンぶりを見せる。「1曲目はこの曲しかないでしょう」と柴田が声をかけてライヴが始まった。〈高速道路のその先に でかいステージがある〉と歌い続けてきた彼らが、このでかいステージで歌う「バンドワゴン」は、まるでこの日のためにあったかのように胸に響くものがあった。観る者のそんな気持ちをより熱く焦がすように、曲が終わると柴田と梅津がガッチリと握手をして固い絆を感じさせた。いつもはその時々の世相を反映した(?)コール&レスポンスも、この日は「サンキュー!」「セックス!」と原点回帰して行われ、「戦う時はひとりだ」へと続く。ライヴ定番曲ということもあり、普段なにげなく聴いていた気がするこの曲だが、サビのコーラス箇所「Ah-!」で観客が一体となった瞬間は鳥肌もので、会場がソールドアウトになっていることを実感させるものだった。「生きてて今日が一番楽しいかもしれない!」と柴田が叫んだのも頷ける。

ロマンチック☆安田(Key.Gt)が加わり、「僕らパンクロックで生きていくんだ」に続き「一緒に世界を変えましょう」と柴田がカッコよくキメたMCから「僕らチェンジザワールド」へと突入、と思いきやギターの音が出ないズッコケぶりで和ませる。忘れらんねえよの原点ともいえるこの曲は安田がギターで加わっていることで、バンド小僧が集まって初めてライヴをやっているかのような荒っぽいパンキッシュな演奏となっており、真っ赤な照明に煽られるように突っ走っていた。その安田が間奏でギターソロをとる「体内ラブ ~大腸と小腸の恋~」では、大腸を表現したかのようにうねる梅津のベースラインが曲をリードして、後半の転調からさらに狂ったように盛り上がった。冷静になるとなんともバカバカしい歌詞なのだが、こうした何もかも忘れて楽しめる楽曲こそが彼らの真骨頂だ。また、「中年かまってちゃん」のようにソリッドなメロディへの絶妙な歌詞の乗せ方には改めて感服してしまった。「犬にしてくれ」もそんな柴田の作詞・作曲のセンスが光る曲。サビで観客の方を見ながら嬉しそうに左右に体を揺らしてコーラスする梅津が子犬のようだった。

安田の郷愁感を誘うキーボードが新鮮だった「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」、「夜間飛行」ではマシータの凄まじいドラムに圧倒され、梅津の太いベースライン、安田のピアノ、柴田のメタリックなギターが絡み合い、サビで流星群のように回るミラーボールがさらに気分を盛り上げた。名曲「そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか」「世界であんたはいちばん綺麗だ」と渾身のバラードを熱唱すると、一転して「この街には君がいない」「北極星」「CからはじまるABC」と、怒涛のパンク・ナンバーを連発。今やこの3曲の並びは懐かしさすら感じさせる。しかもまだライヴ中盤なのだ。「俺の中のドラゴン」のAメロではなんだか妙なステップを踏みながら歌う柴田。ブラックメタル、ドゥームメタル要素も感じさせる深い暗黒を思わせるサウンドだが、曲のテーマがテーマだけに「体内ラブ」と連続して聴くのは控えたいところだ。

MCを挟み、ステージにはゲストとして『俺よ届け』でサウンドプロデューサーを務めた松岡モトキと、アーバンギャルドのおおくぼけい(Key)が参加して「眠れぬ夜は君の名をググるよ」でのフィル・スペクター・サウンドを思わせるピアノとシンプルなリズムを軸とした世界観や、ギター3本で厚みを持たせた「まだ知らない世界」、松岡の流麗なアコースティック・ギターのアルペジオが光る「うつくしいひと」を続けて披露。このコーナーが素晴らしかった。ゲストとサポートメンバーが加わったことでこれまでにない音楽的な広がりを聴かせただけではなく、何よりも忘れらんねえよの楽曲、メロディーメイカーとして、ボーカリストとして柴田の魅力がより鮮明に伝わる珠玉の3曲だった。

“俺らは俺らの道を行きますよ”と決意を語る柴田。いや、決意なんていう堅苦しいものじゃないのかもしれない。目の前には忘れらんねえよを支持する満員の観客がいる。バンドマンとして活動を続けて来た自信がそんな言葉になったのだろう。ライヴは後半戦に突入、「ばかばっか」ではステージにスモークがたかれる中、会場後方までクラウドサーフしながらビールを買いに行く。さすがにいつもより遠い! その間、ステージ上では梅津、マシータ、安田によるゴリゴリでサイケなセッションが繰り広げられている。無事ビールを手にして観客の上に立ち上がり飲み干すと、ここで柴田は会場に来ているという父母への手紙を読みあげる。「ここにいる人たちが、正真正銘、俺の宝物です」そう言うと会場から万雷の拍手が贈られた。

感動のシーンを終えて、再び人から人へとステージへ運ばれていく柴田。その姿は渡り鳥というよりムササビのようだ。「寝てらんねえよ」「ばかもののすべて」と怒涛の『犬にしてくれ』曲のラッシュ。「全部受け止めるから、全部置いていけ!」このライヴに賭ける気持ちを投げると、それに答えて歓声を上げる観客たち。「バンドやろうぜ」の大合唱には思わず涙腺が緩んでしまった。イントロのギターから盛り上がった新曲「俺よ届け」ではAメロで柴田が刻むギターに合わせて変化するライティングが最高にカッコイイ! キャッチーなこの曲は、彼らの代表曲の1つになって行くのではないだろうか。そして代表曲といえばこの曲、「この高鳴りをなんと呼ぶ」。サビでは大・大合唱が起こった。天井から落ちてきた金テープが多幸感を演出する中、ステージを降りて行くメンバーたち。アンコールの「忘れらんねえよ」では後半で演奏を止めて、柴田、梅津、マシータ、安田で肩を組んで大合唱。2000人以上の腕が揺れる壮観な光景と共に、記憶に残る瞬間だった。ライヴが終了すると、ステージに掲げられていた「忘れらんねえよ」のバックドロップに代わりスクリーンが登場。全国ワンマンツアー〈僕とあなたとあんたとお前のごほうびワンマンツアー〉及び〈忘れらんねえよ日比谷野音ワンマン ワンワン!ワンマン!野音でワオーン!〉が発表された。これまでの活動の総決算ともいえるZeppワンマン・ライヴを最高の形で終え、次なる大きなステージへと進んで行く忘れらんねえよ。日比谷野音でも最高のライヴを見せてくれるはずだ。(岡本貴之)

PHOTO:岩佐篤樹

忘れらんねえよZeppワンマン 〈僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ〉
2016年10月9日(日) Zepp DiverCity
〈セットリスト〉
1. バンドワゴン
2. 戦う時はひとりだ
3. 僕らパンクロックで生きていくんだ
4. 僕らチェンジザワールド
5. 体内ラブ ~大腸と小腸の恋~
6. 中年かまってちゃん
7. 犬にしてくれ
8. バレーコードは握れない
9. 美しいよ
10. ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
11. 夜間飛行
12. そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
13. 世界であんたはいちばん綺麗だ
14. この街には君がいない
15. 北極星
16. CからはじまるABC
17. 俺の中のドラゴン
18. 眠れぬ夜は君の名をググるよ
19. まだ知らない世界
20. うつくしいひと
21. ばかばっか
22. 寝てらんねえよ
23. ばかもののすべて
24. バンドやろうぜ
25. 俺よ届け
26. この高鳴りをなんと呼ぶ
アンコール
EN1. 別れの歌
EN2. 忘れらんねえよ


[ニュース] 忘れらんねえよ

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