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2016/06/22 12:00

 

「特定遊興飲食店営業」ってなに?ーー“知らなかった”では済まないライヴハウスの現実

 

2016年6月13日(月)、〈オトトイの学校〉の講座として「特定遊興飲食店営業でライヴハウスはどう変わる?」がミューズ音楽院にて開催された。「四谷アウトブレイク」店長・佐藤"boone"学の呼びかけのもと、講師に行政書士の谷田部智敬を迎え、ライヴハウス店長らを含む約20名が参加。その講義の内容をレポートする。


◼︎風営法から「ダンス」が抜けたことでライヴハウスの深夜営業も規制対象に?!

2015年(平成27)年6月24日の風営法改正によって風俗営業から「ダンス」が除外されたことは各メディアのニュースでも大きく取り上げられたので知っている人は多いだろう。そしていよいよ改正された風営法が、2016(平成28)年6月23日より全面施行される。

それに伴い、0時以降にお酒を提供してダンスをさせる場合、風営法の新しい許可「特定遊興飲食店営業」を取ることが必要となった。本講座では、改正された風営法が施行されるにあたり「ライヴハウスはなにをする必要があるか?」に焦点をあて、谷田部先生が解説を進めることになった。

警視庁生活安全部保安課が発行する「特定遊興飲食店営業のしおり」にはこう書かれている。 「深夜において客に遊興(ダンスを含む。)をさせ、かつ、客に酒類の提供を伴う飲食をさせる営業を、特定遊興飲食店営業とし、都道府県公安委員会の許可を受けなければならないこととするとともに、必要な規制を設ける」。

わかりやすくまとめると、
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1. 午前0時以降の深夜に
2. 客に遊興(ダンスを含む)をさせ
3. 客に酒類の提供を伴う飲食をさせる
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営業は「特定遊興飲食店営業」となり、都道府県公安委員会の許可を受けなければならないこととなった。

ここで注目すべきは「遊興(ゆうきょう)」という言葉。

これは「営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせる行為」を指している。これだけだとわかりづらいので具体的に解釈すると、ここには音楽ライヴやお笑い、トークショー、落語なども含まれている。つまり、ライヴハウスでお酒を販売して行われるオールナイト・イベントも対象となっており、そうした営業が考えられるライヴハウスも「特定遊興飲食店営業」の許可をとらなければならない。

ちなみに、無許可営業の場合は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこれが併科される。

果たして、小規模なライヴハウスのスタッフがどれだけ「特定遊興飲食店営業」の許可を取らなければならないことを知っているだろうか? 少なくとも「四谷アウトブレイク」の店長・佐藤"boone"学はその事実を2016年5月まで知らなかった。

◼︎「特定遊興飲食店営業」の許可をとるためには?

もちろん風紀を守り、健全なナイトライフが地域住民や一般市民から理解を得るには「特定遊興飲食店営業」のような許可制が必要という側面もある。

ここではひとまず許可制についての議論は置いておいて、「特定遊興飲食店営業」の許可をどのようにしたら取ることができるのかを説明する。

いくつか必要条件はあるが、とりわけ重要なのは以下。
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・告示された営業所設置許容地域内にあること。
・客室の床面積は、1室の床面積を33平方メートル以上とすること。
・営業所内の照度が10ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
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「四谷アウトブレイク」を例にとって照らし合わせてみよう。

四谷1~3丁目は営業所設置許容地域内にある。そして1室の床面積が33平方メートル以上のライヴハウスという点もクリアしている。ちなみに、四谷アウトブレイクはスタンディングで約200名が客席に入る広さ。これでギリギリ33平方メートル。都内には床面積で33平方メートル未満の小箱が数多く存在している。ということは、現状「特定遊興飲食店営業」の許可を取ることのできないライヴハウスが数多く存在しているということが言える。

10ルクス以下という照度の部分は、風営法改正のロビー活動により「ダンススペースと飲食スペースが分離されている場合、飲食スペースの食卓や椅子、床の箇所で暗さを測定できる」ようになったため、照明の調整の必要はあるがクリアできないことはなさそうである。

そう考えると、床面積と営業所設置許容地域内にあることがネックとなりそうだ。この日訪れていたライヴハウスでも営業所設置許可地域に含まれておらず、「特定遊興飲食店営業」の許可を取る条件を満たさない事例がみつかった。

講座内ではライヴハウスのスタッフを中心に具体的な質問が飛び交った。「数日間にわたり行われる野外イベントにも特定遊興飲食店営業の許可は必要なのか?」「プライベート・パーティということで営業することは可能なのか?」。自分たちが遊ぶ場所を知識不足によって奪われることは防ぎたい。そんな必死な想いが強く見受けられ、熱のこもった時間が過ぎていった。

◼︎ライヴハウスも自分たちの「遊び場」を守っていかなければならない

本講座を通してわかったことは、2016年6月23日以降、深夜にお酒を販売して営業をするライヴハウスは「特定遊興飲食店営業」の許可を得ければならないということ。そして明るみにでた問題点は、床面積で33平方メートル未満の小箱はグレーゾーンの中で営業を行わざるをえないということである。最悪の場合、突然深夜に営業しているライヴハウスが警察の摘発にあう可能性もある。

まずは、この事実をライヴハウスのスタッフが理解すること、その対策を勉強して、しかるべき対応をとることが早急に求められる。

ダンス・クラブに対する取り締まりと近年の風営法改正をわかりやすくまとめた神庭亮介による書籍『ルポ風営法改正』では、「踊れない国」から「遊べない国」へ? という小見出しの中、「警察はダンスだけでなく、ライヴからイベントまで新たな直罰の対象にしようとしている」という穀田恵二議員の言葉を引用している。そうした表現はたしかに絵空事ではない。

クラブ関係者が自ら「ダンス」を勝ち取ったように、ライヴハウスも自分たちの遊び場を守っていくための情報共有と行動が必要である。自分たちの遊び場は自分たちで作っていかなければならない。そうしたことが明るみになった講座でもある。

改正された風営法は、2016年6月23日より全面施行される。

取材&文 : 西澤裕郎


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