News

2016/05/25 19:00

 

D.A.N.初ワンマン『Curtain』ライヴレポート

 

1stアルバム・リリース後、1ヶ月すでにフジロックの出演も決定、まさに波に乗るD.A.N.。アルバム・リリース・ライヴとして渋谷〈WWW〉にて行われた5月20日は、彼らにとって、初のワンマン・ライヴとなった。

ソールドアウトとなった本公演のライヴレポートをここにお届けする。

倦んだ都市の空気の間を縫うようにして現れた3ピースは、数年来の衝撃度でもって私たちを高揚させ、空虚ないまここ、東京でゆらめいている。

結成から2年足らずの3ピース・バンド、D.A.N. 。弱冠22歳ながら透徹された彼らの美学は、楽曲をはじめとしてジャケットやMVなどのクリエイションの細部まで妥協なく彩っている。そんなアーティストとしての姿勢も踏まえ、各界の注目を一身に集め、まさにいま、最もシーンを賑わせている彼らの初となるレコ発ワンマンが5月20日、渋谷〈WWW〉にて行われた。アルバムをリリース後、チケットは瞬く間にソールドアウトし、当日はパンパンにつめかけた観客の期待感がざわめく中、開演が待たれた。ちなみにこの日も彼らは、日頃から熱を込めて“最強”と語る布陣でライヴに臨んだ。サポート・アクトには5月25日にソロ・アルバムをリリースする才媛・小林うてな。PAにはサウンド・プロデューサーとして「EP」の頃から楽曲制作にも携わる葛西敏彦。照明に〈WWW〉のオオニシイクコ、VJにmitchel氏である。そしてオープニング・アクトとして出演した、真っ暗な会場のなかの空気を、Albino Soundがヘヴィーなベース・ラインのテクノ〜ダブステップ〜レイヴ・サウンドで会場揺らした。

20時をやや過ぎた頃、暗いステージにブルーのライトが落とされ、4人の姿が浮かび上がるとオープニング・アクト、Albino SoundからD.A.N.にフロアは引き渡された。スペーシーなシンセ・サウンドと小林うてなのヴォーカルが高まり、アルバムをワントップで飾る“Zidane”のヘヴィーなドラム&ベース・サウンドで、記念すべき1夜は幕を開けた。“Zidane“から“Ghana”、そして“Native Dancer”と、めくるめくVJとともに注目曲が畳み掛けるように披露され、会場は熱狂に包まれた。

ここまできて、空気はふと揺れ動き、この後2つの新曲を境に会場は、その深部体温を下げていった。ライヴの全景を見れば、彼らが”インナーマインド”や”楽曲に対するメンタリティー”に対していかに重きを置いているのかを表すライヴとなったのではないか。「インナーマインドの奥に沈み込んだ風景を浮かび上がらせられたら」と、たびたびインタヴューなどで言及してきた、こうした志向のもとで生まれた彼らの楽曲は、醒めた芯にすんなりと浸透し、聴く者をライトなトランス状態に誘い出す。

また同時に、どちらかといえばそのサウンドについてその作品について言及されることの多い彼らだが、このあたりからのライヴの展開は、D.A.N.が日本語のロックを確かに継承する存在であることを再認識させられるようなところもあった。

スローで長めのブレイクビーツ・ループ的なドラムとともにはじまったのは新曲の“Shadow”。D.A.N.には珍しく終盤にはストーナーでガレージなギターをフィーチャした楽曲。白い砂嵐のようなVJが映し出される中で、茫洋とした遠い過去を見つめるような、叙情性を持った楽曲が織り成されていく。遠く霞んだ記憶のなかに分け入り、歩いていくような感覚をもたらして、それまでに熱狂していた空気をしんと鎮めた。

さらに続いた新曲“SSWB”も、ミニマル・ファンクなベースラインとポップスが心地よく肩を組んで鳴り響く、夏の名曲となる予感を秘めた1曲。「それはきっと夏のせい」と耳に飛び込んでくるリリックで描き出されるのは、冷房の効いた部屋から窓の外の蜃気楼を見つめているような、どこかアンニュイな、都市における夏の姿だ。続く楽曲も、新曲かと思いきや、続いてはじまったのはロマンティックかつメロウにアレンジされた“Now It's Dark”(「EP」収録)。そしてその波音のようなギターがチルアウトに導き、“SSWB”から夏の空気感を引き継いだ。その後アルバムから“Dive”、“Time Machine”、“Navy”と続き、この日のライヴ・タイトル“Curtain”の幻想的なコズミック・ブルースで本編は締めくくられた。

「暗い曲が多いけど、最後くらいみんな笑顔で終わりましょう」

ヴォーカルの桜木大吾の掛け声とともにはじまったアンコール曲は“Pool”。楽曲に対して自ら”暗い”という言葉を選んだことをやや意外に感じたが、鎮められたフロアの空気を読み取っての言葉かもしれない。アンコールを終え、ステージを後にしても鳴り止まない拍手にメンバーが再び登場。MCを経て、最後には小林うてなの発案で、ややテンポ早めの“Ghana”の”ハッピー・ヴァジョン”が披露され、止まない拍手の中、和やかにこの日の公演は幕を閉じた。

新世代の一翼を担い、注目されるバンドがいまこのときに放つ求心力の凄み。そして終わったそばから辺りに伝播した新たな予感。「〈WWW〉は憧れのライヴハウスだった」と語る彼らも、またそんなステージに立ち会った私たちも、満足感とまだ見たことのない季節への期待感が交差する、どこか浮き足立った心持ちでこの日会場を後にしたに違いない。(文:稲田真央子 / 写真:タイコウクニヨシ)


[ニュース] Albino Sound, D.A.N.

あわせて読みたい


TOP