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2016年01月18日18時30分

 

3776は時空を越えた! 音楽×演劇で異質なワンマン展開 ーーライヴ・レポート

 

3776がワンマン・ライヴ〈3776ライヴにいかない理由があるとすれば〉を1月16日に渋谷TSUTAYA O-nestにて開催。会場を埋め尽くした観客を前に、演劇などを取り入れた独自のパフォーマンスを展開した。

3776とは静岡県富士宮市発の“富士山ご当地アイドル”。富士宮市制70周年を記念し、発足したアイドル・グループ“TEAM MⅡ”を前身とし、2014年から活動をスタート。メンバーの脱退を受け、現在は井出ちよのによるソロ・ユニットとして活動している。ちなみにその名前は富士山の標高から取ったものだ。

2015年10月には1stアルバム『3776を聴かない理由があるとすれば』をリリース。同作はオルタナティヴやニューウェイヴなどを始めとするバラエティ豊かな楽曲を収録。しかも全20曲入りで収録時間は3776秒。語りのようなインタールードを随所にはさみ、アルバム全体を通して富士山登頂に挑むという物語を取り入れたコンセプチュアルな作りとなっている。そして前述したTEAM MⅡ時代から現在の3776に至るまで、一貫してその奇天烈なサウンドの作詞・作曲を手掛けるのがプロデューサー石田彰だ。

彼はギターや機材を手にステージに立つこともあり、7月に下北沢Basement Barで行われた3776のワンマン・ライヴでも、石田はちよのと共にステージに登場。バックで演奏を務めたほか、井出ちよののMC中に彼女の声を即座にサンプリングし、ループして流すなどの試みを行っていた。さて今回はアルバム発売後のワンマンとあって、一体どのような仕掛けが待っていたのか。この日はライヴが始まった瞬間から、3776独自の世界観が展開されることとなった。

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会場が暗転すると「時は西暦☓☓☓☓年〜」といきなり場内にナレーションが響き渡る。井出ちよのの声に思えたが、どうやらその正体は未来に生きる女の子。タイムマシンの故障で、2016年1月16日の渋谷O-nestに偶然たどり着いてしまったという。未来では、この日の3776の公演は教科書にも載っているほどだったようで、自身曰く“ちよのにソックリ”だと言う未来人はライヴを少し覗いていくことに。

通常とは異なるライヴになることを早くも伺わせたオープニングを終えると、井出ちよのが1人ステージに登場。楽曲「洞窟探検」で3776のワンマンをスタートさせた。続くはファンク調のギター・カッティングが心地よい「登らない理由があるとすれば」。伸びやかな声を会場に響かせる。この曲ではフロアからささやき声でミックスが控えめに打たれた。

同曲を終えると「みなさん、今日は来てくれてありがとう! チケット完売だって。やったね!」と喜びを語る。自己紹介をはさんだあと「じゃあお茶飲んできまーす」と袖へ。なぜかここで起きた拍手に対し、ちよのからツッコミも飛び出し、会場はゆるりとした雰囲気と笑いに包まれた。

そして3曲目はアルバム『3776を聴かない理由があるとすれば』収録の「八合目にゃまだ早い」。サビでテンポが急速になるストレンジな楽曲で、ちよのは活発にステージを右へ左へと駆け周る。ここまでアルバムからの楽曲を続けて披露してきたが、3776としての一般的なライヴらしいライヴはなんとここまで。ここからは演劇と音楽ライヴが融合したパフォーマンスが繰り広げられる。

ちよのが早くも2度目のお茶タイムに入ると「あれ、このお茶さっきと味が… ガクッ」と薬で眠らされてしまう展開に。すると誰もいなくなったステージ上に「3776ってアイドル・グループなんですよ。私たちが本物です!」と3776の派生グループMi-IIの3人が扮する偽3776が登場。

この流れには客席も大盛り上がり。ライヴを乗っ取った偽3776が、ニューウェイヴ感漂う「私の世界遺産」を披露し、大きな歓声やミックスが起こった。すると「待った!!」という大きな声とともに、ちよの扮する未来人がフロア後方より突如現れる。ざわつくお客さんの間を抜けてステージに。正常な歴史に戻すべく立ち上がった彼女は、これよりアイドルとして偽3776との対決を繰り広げていくこととなる。ライヴと劇が絡みあいながら進行していく様子にはぐいぐいと引きこまれてしまった。

そして今度は3776のターン。「これが未来のアイドル・ライヴ!」と“運転手”ことプロデューサーの石田彰をステージに呼び、機材やギターを手にした彼をバックに従え、2人編成によるライヴが進行。ギター・ストロークから幕を開けたバラード調の「僕だけのハッピーエンド」を井出ちよのが切なく歌い上げる。

未来からの刺客のパフォーマンスにたじたじとなった偽者たちは、元3776メンバーまりりん扮する“ラスボス”を呼びこむ。彼女を加えた編成で演劇の延長線のような「まりりんのテーマ」、TEAM MII時代の楽曲「わかってよねえ先生」を披露した。

どちらが観客を盛り上げられるかという対決の様相を呈してきたため、3776は“誰もが踊ってしまう禁断の曲”をプレイすることに。「もしかして過去の世界のみんなはノリが悪かったりして…」とストーリーを活かした笑いを取りつつ、楽曲「ハイカー[Everything your friend is hiker]」へ。輝くミラーボールの下、曲の終盤では偽3776たちも一緒に踊ってしまい、ついに降参。活躍をみせた未来から来た少女が眠っているちよのを起こしに行くというところで、演劇タイムは終了。3776のみのステージへと戻った。

ここで実験的な試みは終わったかに思えたが、それは終演後まで徹底して続いていく。次に演奏されたのはインスト曲「ドローン~富士信仰~」。これはトラックやビートもなく、石田のギター・ノイズと、うっすらと引き伸ばされたちよののコーラスから成り立った荘厳な曲で、その音をバックに彼女はステージ上で長い手足を活かしたバレエ・ダンスを踊る。ここまでを振り返ってみると、変拍子の楽曲もなんなくこなす井出ちよのの歌唱力、演技、そしてダンスと総合的な表現力の高さに改めて気付かされた。

続くMCでは、「改めまして、未来ではなく現代の井出ちよのちゃんです」と挨拶。「みんな分かんなかったでしょ? 全部お芝居だったんです」と告げると、客席からはお約束のように「えー!!」と驚きの声があがった。そしてこの次に披露されたのもかなりの問題曲だった。ちよのと石田の2人編成のときには最後に即興曲を演奏するという説明から、通称「しりとり即興曲」へ。

もちろん、ただのしりとりである訳がない。石田が出すビートに対し、そのリズムからちよのが単語を導き出し答え、またそれに対して石田はビートを出す… というもの。この間、ちよのが答えた単語は即座にサンプリングされ、ひたすらループ。しりとりを続けるにつれ、その声が幾重にも重なり合い、音楽となっていく。

途中からは、ちよのがジェスチャーをし、そのワードを石田が当てるというやりとりに変化。ちよのがその場でスケッチブックに答えを書いて、客席にのみ正解を教えていったのだが、明かされた答えには「ぎょぐんたんさき」など、動きから読み取るのは難しいものも。当然2人は大きくスレ違いながら、ちぐはぐな「しりとり即興曲」を続けていった。2人のやりとりから生み出されていく音楽のなかで、奇妙なしりとりが反復されるシュールな光景を前に、ただ笑いながらポカーンとするしかなかった。そしてラストには当日出演した4人もステージに集結。最後の曲として全員で「序曲」を披露し、ライヴは幕を閉じたのだった。

さて、この日『3776を聴かない理由があるとすれば』から披露されたのは前半の3曲のみ。少ないのは確かだ。しかしながらアルバムから引き続き、今回のライヴにおいてもコンセプトを持たせ、ひとつのストーリーとして聴かせるという手法は観客を引きこませる力を持っていたと感じる。またアルバムの評価に甘んじず、さらに別の場所へと向かおうとする挑戦的な姿勢をここで提示してみせたことには強く心を打たれた。

さらに言えば、そのなかで披露した楽曲もかなり面白いものであったし、なにより井出ちよの自身の表現力の高さや、そして3776の底知れぬ可能性をうかがい知ることができたのではないか。次に3776は一体なにを見せてくれるのだろう。そんな期待に胸が膨らんだワンマン・ライヴだった。(鶯巣大介)

・『3776を聴かない理由があるとすれば』特集ページ(OTOTOY)
http://ototoy.jp/feature/20151025

・3776の作品はOTOTOYにてハイレゾ配信中
http://ototoy.jp/_/default/a/109998

・3776 オフィシャル・サイト
http://m3776.com

〈3776ライヴにいかない理由があるとすれば〉
1月16日(土)@渋谷TSUTAYA O-nest
セットリスト

01. 洞窟探検
02. 登らない理由があるとすれば
03. 八合目にゃまだ早い
04. 私の世界遺産
05. 僕だけのハッピーエンド
06. まりりんのテーマ
07. わかってよねえ先生
08. ハイカー[Everything your friend is hiker]
09. ドローン〜富士信仰〜
10. しりとり即興曲
11. 序曲


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