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2015/08/26 17:00

 

【ライヴ・レポート】ヒロネちゃん、20歳の誕生日にレコ発ワンマン「1stアルバムを出してから、いろんなことが変わりだした」

 

鍵盤弾き語りのシンガー・ソングライターのヒロネちゃんが、自身の20歳の誕生日でもある7月26日にワンマン・ライヴ〈ドッペルゲンガーの痛み分け〉を東京・下北沢THREEで開催した。

このワンマンは、同月22日に〈術ノ穴〉から発売したばかりの、彼女にとって初の全国流通盤『きみの死因になりたいな』の発売記念ライヴでもある。1時間40分以上におよんだライヴは、2度のアンコールをふくむ全19曲を披露。繊細で情緒的な歌声に、満員の観客が酔いしれた。

フロアに入ると、初期から彼女の活動を支えているさいあくななちゃんによる、かわいらしい装飾が目を引く。そこに裸足で白いドレスを身にまとったヒロネちゃんが登場すると、流れるオケにあわせて「少女事情」を歌いはじめる。昨年11月に無力無善寺で行われた初ワンマンと同じ曲でスタートしたライヴは、打ち込みの煌びやかな音色とあいまって、幻想的な雰囲気に包まれていった。すかさずステージ中央に置かれたキーボードをならすと「片道切符」を演奏。ここからは、いつもと同じように弾き語りでの演奏となった。「こんばんは、ヒロネちゃんです。今日はありがとうございます」と少し照れたようにあいさつすると、観客は拍手で応えた。

時折入り混じるウィスパー気味な歌声がせつない「プラネットボーイ」では、客席のひとりひとりを見回すように歌う。彼女がいつも椅子に座らず立ったままキーボードを弾いているのは、もしかしたら観客の顔が見えやすいようにという配慮なのかもしれない。「セットリストを前半と後半でわけたので…。前半は弾きまくるっていうセットリストです」と説明すると、言葉を畳み掛けるように早口で歌った「ピンポンダッシュ」、そして「きみと雨ふりのうた」を披露して前半を終えた。

ここで、「鳥取県からきたスーパー・ギタリスト」という紹介で「野澤さん」がステージに招かれる。「今日はすごくいっぱいのお客さんでうれしくて…。後ろの人にも届くように、カウンターで歌います」と話すと、会場の中央付近のカウンターの上にふたりで腰掛けて、野澤さんのアコースティック・ギターに合わせながら生歌でのライヴを披露。3月に鳥取で行われた大森靖子のワンマン・ライヴに前座で出演したさいに、野澤さんとふたりで作ったという「内緒」や、野澤さん作曲の「メフィストフェレス」などを演奏した。

ヒロネちゃんがメイン・ステージに戻ると、さいあくななちゃんをステージに招き、ふたりで初々しいトークを展開。さいあくななちゃんが2014年6月に高円寺の無力無善寺で開催していた個展に、ヒロネちゃんが訪れたことがきっかけで出会ったエピソードや、最初の"共同制作"がツイッターのアイコンであったことなどを話した。続いて行われたクイズ・コーナーでは、観客が遠慮して誰も挙手しないハプニングもありつつ、徐々に回答者が増えて正解者にはふたりのサイン入りカロリーメイトがプレゼントされた。そして、さいあくななちゃんがこの日の舞台装飾に込めた思いを、時折言葉に詰まりながら話す。

「1年くらい一緒にやっていくにつれてヒロネちゃんがどんどん進んでいって、私も同じステージに連れていってくれるんですよね。もっとほかの人にも頼めるはずなのに、ずっと私に頼んでくれてるのがうれしくて……超泣いちゃうよ。そのぶん、がんばるぞと思って。一緒にやってきたからには、私にしか見せられないものがあるはずだと信じて、がんばりまくって。CDのジャケットをイメージして作った星とかの装飾も全部手づくりしました。ただ好きだっていう気持ちとか、皆さんが持っている気持ちとかを詰め込んで創作できればいいなと思ってやりました。それでヒロネちゃんの音楽がもっと楽しくなったり、いっぱい伝わればいいなと思います。ありがとうございました」と話し終えると、客席から暖かい拍手が贈られた。

それを受けてヒロネちゃんは「ずっとって言っても、まだ私が弾き語りを話して1年4ヶ月だし、ななちゃんとは一緒にやって1年1ヶ月お世話になっていて。レーベルのKussyさんがジャケットがすごい感動したって言ってて。私はこれからもずっと一緒にやってもらいたいし、Kussyさんももちろんって言ってくれているので、ななちゃんが死なない限り、私が死なない限りは(一緒に)やりたいな」とラブ・コールを送った。

「後半の部に行きたいと思います」と話すと、「さみしいキャラメル」へ。新曲「ほうき星」や「スローモーション流星群」など、じっくりと聴かせるミディアム・テンポの曲をたて続けに演奏していく。心を込めて演奏された約7分にも及ぶ大作「死と魔法」では、感情をたかぶらせるような仕草や、一瞬マイクを外すような場面もあった。歌い終えると、大きな拍手が起こった。

「はあ、疲れちゃった、いまので(笑)。じゃあ、感動トークを」と切り出すと、20歳になったことや、今日のライヴのこと、そして全国流通でアルバムを出したことについてなどを語った。

「弾き語りをはじめて、いろいろやってきましたが、今日、本当にたくさんの人が見に来てくださって、うれしかったです。『きみの死因になりたいな』って1stアルバムを出させてもらってから、いろんなことが変わりだして。最初の5ヶ月くらいのブログをみればよくわかると思うんですけど、死にたいとか、人間全般ファック・ユーとか、そういうタイトルなんですよ(笑)。なのに最近、しあわせとか、そういうものが多いですね」

そして「19歳の夏」を演奏。ゆっくりとまわるミラー・ボールの光に照らされながら「目に見えない暗い暗い闇に潰されても ひかりを探してた」と歌った。続いて、歌詞がアルバム・タイトルにもなっている彼女の代表曲「カロリーメイト」について話す。

「すごい馬鹿にされるんですよ、『きみの死因になりたいな』について。30キロ台になれるわけないじゃん、カロリーメイトなんだから、とか。わかりやすいものだとブスとか、メンヘラじゃん、とか。そういう言葉でしか言えないのだダサいですよね。私は私だし、そんなに嫌なら聴かなければいいだけの話でしょって。けど、結構つらいんですよ、メンタルが弱くて。メンヘラっていうことだけで聴いてほしくない… メンヘラじゃないんですよ。この曲は自分のことのようですけど、いろんな人のことなんです」

「お薬飲んだこともないし、お別れを言ったこともないし、そのくらい君を愛したこともないから、なんとも言えないんですけど(笑)」と歌詞を引用しつつ「けど、はじめて作った曲なんですよ。そしたら『きみの死因になりたいな』って出てきちゃったんです。それが素晴らしいからタイトルにしただけであって、またメンヘラの再来か、とか言われて」。ひととおり思いをさらけ出したあとに、「メンヘラの曲です(笑)」と紹介、「カロリーメイト」を演奏すると、大きな拍手のなかで本編を終えた。

アンコールの拍手に応えて、ヒロネちゃんがステージに戻る。「あーあ、終わっちゃったよ。2月から用意してきたのに、悲しいね…」とさみしそうに話すと、その言葉を遮るように客席は「Happy Birthday」を合唱。さいあくななちゃんと野澤さんがケーキと花束をヒロネちゃんに手渡すと、客席から一斉にクラッカーが放たれた。

「私、高1の時に誕生日やめたんですよ。mixiが流行ったんですけど、1件もおめでとうってメッセージが来なかったんですよ。メールも2件とかしかこなくて。だから、高2高3はSNSとかで誕生日公表するのやめたんです。それから一転して、すごいですね。たくさん祝っていただいて。ありがとうございます」と、少し照れくさそうに感謝を伝えた。

煌びやかなキーボードの音に乗せて「あなたの宇宙、わたしの鬱。」を演奏。そして新曲の「さよならモンスター」をせつなげな声で絞り出すように歌い終えると、「ありがとうございました」と客席のさまざまな方向を向いて礼をした。ダブル・アンコールでは客席からのリクエストでこの日2回目の「さみしいキャラメル」を歌い、ライヴは終了した。

全国流通のアルバム発売後はじめて、そして彼女にとって2度目のワンマン・ライヴということで、はじめてライヴを観た人も多くいたと思う。前半はMCが少なかったこともあり、序盤は場内に緊張感があった。トーク・コーナーを挟んだ後半は、次第に打ち解けたような雰囲気があった。演奏も暖かみを増して、特に終盤の「死と魔法」以降は曲がはじまるたびに、彼女の紡ぎ出す歌声や世界観に包まれているような感覚になった。

ヒロネちゃんは8月8日には大阪で初のワンマン・ライヴを開催。そのライヴ後に更新したブログで「わたしはじぶんのライブのステージ空間が宇宙みたいになったらいいなあとおもっています」と語っていた。その宇宙がこれからどのように広がっていくのか、思わず想像してしまうような、とても素敵なライヴだった。(前田将博)

撮影 : おのちゃん(ツイッターhttps://twitter.com/6___ph)

ヒロネちゃん初全国流通CD発売&20さいになりましたイベント
〈ドッペルゲンガーの痛み分け〉
2015年7月26日(日)下北沢THREE

<セットリスト>
1. 少女事情
2. 片道切符
3. 恐竜のうた
4. プラネットボーイ
5. 目隠し
6. ピンポンダッシュ
7. きみと雨ふりのうた
8. 神様
9. 内緒
10. メフィストフェレス
11. さみしいキャラメル
12. ほうき星
13. スローモーション流星群
14. 死と魔法
15. 19歳の夏
16. カロリーメイト

アンコール
17. あなたの宇宙、わたしの鬱。
18. さよならモンスター

19. さみしいキャラメル

・東京と大阪(ヒロネちゃんオフィシャルブログ「目隠し 照れ隠し」)
http://blog.livedoor.jp/h____chan/archives/45865168.html

・ヒロネちゃん、デビュー・アルバム『きみの死因になりたいな』をリリース&インタヴュ—(OTOTOY特集ページ)
http://ototoy.jp/feature/2015072205

・ヒロネちゃん、OTOTOY限定のオリジナルepを配信スタート!!(2014年11月2日(日)@高円寺 無力無善寺ライヴ・レポート)
http://ototoy.jp/feature/2014112104


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