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2015/07/12 16:00

 

忘れらんねえよ 緊急事態をエモさ全開で正面突破―OTOTOYライヴレポ

 

2015年7月10日(金)赤坂BLITZにて忘れらんねえよのワンマン・ライヴ〈3rdアルバムリリースワンマンツアー「犬にしてくれ2015」〉がおこなわれた。

※以下、ネタバレ有りなのでご注意下さい。

「バンドとして緊急事態なのよね。でもなんか、ドキドキしてんだよな。マシータさん、メンバー、スタッフみんなで、もう笑ってバカになるしかねーなーってなってます笑。
ブリッツに来てくれるみんな。明日はとてもレアな一日になります。みんなでバカになって、この緊急事態を乗り越えんぞ!!」

前日に柴田隆浩(Vo.Gt)がツイートしたように、ツアー初日の赤坂BLITZを直前に控えた8日(水)の夜、ドラマーの酒田耕慈が家庭の事情によりしばらくライヴ活動を休止することが発表されるという、バンドにとってまさに緊急事態。ライヴは元BEAT CRUSADERSのマシータをサポートに迎えて決行することになった。いったい忘れらんねえよに何が起こっているのか、誰もがもやもや感を抱えつつも、同時にアルバム『犬にしてくれ』の楽曲がほぼ初めてライヴで演奏されるという期待感もあり、フロアには大勢の観客でギッシリ。開演前には「おしゃれイズム」にVTR出演した際の映像がスクリーンに流され、ライヴを待つ観客を楽しませていた。

会場が暗転しステージには梅津拓也(Ba)とマシータが登場。誰もがステージに視線を向ける中、例のごとく柴田は“フロアの後ろから失礼します!!”と会場後方から登場。良く見ると頭に何かかぶっている。なんとその姿はさかなクン! そしてBGMはサカナクション。どうやら「赤坂BLITZ→ブリ(鰤)→魚→サカナクション→さかなクン」ということらしい。わかりづらい!

ステージに上がると“バンドが今、ちょっと大変なことになっているから、今日はあんたらの力を貸してほしい!!”と第一声。当然だ、といわんばかりに拳を突き上げて応える観客たちに対し“お前ら犬になれ!”と“ワン!”“ワン!”のコール&レスポンスから、1曲目は「この高鳴りをなんと呼ぶ」。冒頭の歌詞を変えて歌う柴田に大歓声。聴きなれたこの曲だが、やはりドラマーが違えばサウンドは当然違って聴こえる。少しテンポを落とし気味でどっしりと重め、輪郭がくっきりしたマシータのドラムはライヴが進むにつれて馴染んで行ったが、前半の演奏にはバンドも観客も戸惑っている様子が感じられた。演奏中、リッケンバッカーを高く掲げる梅津。そして柴田は間奏で“泣きそうだ! お前ら大好きだ~!”と叫ぶ。

新曲「風に吹かれて(毛が)」では間奏中にさりげなく(?)ステージにスタッフのC氏が登場して盛り上げる爆笑シーンも。ライヴはアルバムの世界を反映したハイスパートな楽曲でどんどん進む。途中、“みんな気遣うのやめろ~!”と呼びかける柴田に観客爆笑。改めてマシータを紹介すると、元ビークルということでビークル名物の例のコール&レスポンスが飛び出す場面も(自粛)。「体内ラブ」では両手を振って揺れるフロア。序盤からライヴ後半のように怒涛の勢いで突き進む姿は『犬にしてくれ』の世界観そのままだ。その流れのせいか、「バンドワゴン」が何か懐かしいように聴こえたが、同じ過去曲でも「中年かまってちゃん」の演奏は今の忘れらんねえよのモードにピッタリ合っているように思えた。

中盤では『犬にしてくれ』のプロデューサーを務めたNARASAKIがステージ上がると新曲を数曲一緒にプレイ。途中、チューニングが合っていなかった為、柴田が曲を止めてペグを回しながら「これ、酒田いるな今日! 別に死んだわけじゃないけど!」とチューニングの合わなさを酒田の生霊のせいにする柴田。観客からは苦笑いともなんとも言えない反応。笑っていいのかなんなのかわからないが、とにかく今は笑っておこう!

新曲「愛の無能」が始まると、ギターの刻むリフに合わせて自然に手拍子が起こり、会場全体が昂揚していくのがわかる。ニュー・アルバムの中でも特にライヴでの再現に期待が持たれていた曲だけに、手拍子しながらも息を飲むような緊張感が感じられた。無機的で張りつめたサウンドにNARASAKIのギターがカオティックな響きを加え、初披露にして見事な名演に。その中で存分に叫んだ柴田は「やべえ、めちゃくちゃ気持ち良かった!」と満足げだ。

“今のでモヤモヤが90%消えた! これから後半戦、速い曲ばかり行くよ!? お前らまだまだ元気だよな!?”のMCに会場後方にいる幼児から泣き声のレスポンス。すかさず「後で携帯番号教えてくれ!」と反応する柴田。変態か!「僕らチェンジザワールド」ではもう一度ライヴが最初から始まったかのような大爆発でフロアはモッシュの嵐。「夜間飛行」の演奏中、観客の盛り上がりに感極まったのか「ありがとな~!」と言ったきり歌い出しを飛ばす柴田。幻想的な照明が映し出すステージは何もない至ってシンプルなものだが、以前よりも多彩になった楽曲で観客を一時たりとも飽きさせない。

柴田がクラウドサーフでお客さんに運ばれ、ドアを開けてバーカウンターまでビールを買いに。プラカップに入った生ビール片手に再びステージに戻るとほとんどこぼれてしまったものの、一気に飲み干す。“運ばれてる間、誰も俺のちんこや乳首を刺激して来なかったな…”と残念そう。「犬にしてくれ」ではフロア中から大合唱が起こり、アルバムの反響がダイレクトに伺えた。最高に切なくて親しみやすいメロディは忘れらんねえよの真骨頂だ。

「CからはじまるABC」が始まると、梅津が柴田に走り寄って背中あわせにイントロを弾きながらポーズを決めるシーンもあり、観客から大歓声。「バンド、ぜってーやめねーぞ!!」と叫んでから歌われた「バンドやろうぜ」にはいつも以上の力一杯の手拍子と大合唱でファンも後押しする。

“梅津君なんかある?”と柴田が話を振ると梅津は“3日間のワンマンだけど、なんか練習してるとき青春みたいで楽しかったんだよ。なにより大好きなドラマーのマシータ先輩に後ろで叩いてもらって、それをみんなに観てもらえて嬉しいです。ありがとう!”と観客に感謝を伝えた。会場中に舞い落ちてきた色とりどりの風船の中、ステージを後にするメンバーたち。

アンコールでは2曲。ラスト、1人ひとりに会いたいから、と再びクラウドサーフされながらフロアをまんべんなく運ばれ、最後には歩いて1人ひとりと触れ合う柴田。恒例の記念撮影では観客からのリクエストに応えて「1、2、3、サカターーー!」でライヴを締めくくった。酒田の活動休止による急なサポートを迎えてのライヴということもあり、噛み合わない部分は何度か感じられたものの、『犬にしてくれ』の楽曲が加わったことでこれまでの忘れらんねえよのライヴがスケールの大きなものになったことは事実。今後の忘れらんねえよがどのように進んで行くのか今はわからないが、こんなにドラマティックなバンドもそうはいない。その類まれな人間臭さ、熱さを改めて感じられたライヴだった。(岡本貴之)

〈3rdアルバムリリースワンマンツアー「犬にしてくれ2015」〉
2015年7月10日(金)赤坂BLITZ
開場:18:00 開演:19:00

ライヴ写真:岩佐篤樹


[ニュース] 忘れらんねえよ

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