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2015/06/26 12:00

 

ボンジュール鈴木、初ワンマンでファンタジックな世界を構築 「ユリ熊嵐」への思いも語る——OTOTOYライヴ・レポート

 

魅惑的なウィスパー・ヴォイスで話題を集める注目の宅録アーティスト、ボンジュール鈴木が、1stフル・アルバム『さよなら。また来世で』発売記念ライヴを6月7日に東京・渋谷club asiaで開催した。自身初の単独公演となったライヴのチケットは完売。会場につめかけた満員のファンを、その甘い歌声とファンタジックな世界観で魅了した。

ステージはあふれんばかりの百合や薔薇で装飾され、中央には白いアンティーク・アーチに蔦が巻き付けられた神秘的なセット。さらにその傍らには大きなキリンのぬいぐるみが設置されているなど、会場に足を踏み入れた瞬間から、そこはすでに彼女の世界だった。DJの音楽がフェード・アウトすると、真っ白いロング・ドレスとヴェールに身を包んだボンジュール鈴木が登場。GEMINIのバイオリニストAsuka Mochizukiとともに、「je ne sais pas pourquoi」から演奏をスタートさせた。ステージ後方にはスクリーンが設置されており、演奏中は美しい夜空の映像などが映し出され、彼女の幻想的な世界観を彩った。

「こんばんは。はじめましての方もいると思うんですけど、今日は楽しんでいってもらえたらうれしいです」とあいさつ。そして彼女自身も「大好きな曲」というMinnie Ripertonのカヴァー「Lovin’ You」をキーボードの弾き語りで歌った。「趣味が影絵とプラモデルなんですけど、せっかく作ったから活かせないかなと思って。アニメーションで作ったら意味のわからない動画になってしまったんですけども…」と少し恥ずかしそうに話すと、その影絵がMVとして使われている「羊曜日に猫ごっこして」を披露。そして「アゲハ蝶の破片と君の声」を再びバイオリンの美しい音色に乗せて、ゆったりと聴かせた。

ここで、今回のライヴの為に召集されたサポート・メンバーのMisaki Nakamura(Gt)、Kie Kinoshita(Ba)、Ena Kitajima(Key)、Ayako Sema(Dr)が登場。「キミと恋したいのです」からバンド編成での演奏がスタートした。より重厚感の増したサウンドに、フロアは体を揺らしながら酔いしれていた。「こんなにたくさんの方に来ていただいて、本当にうれしいです」という言葉に、客席からは暖かい拍手が起こる。「まさかワンマンなんてできると思っていなかったので、いま震えてしまっているんですけど…」と感慨深い様子のボンジュール鈴木。フランスでヴォイス・トレーニングにかよっていたときのエピソードを交えつつ、Vanessa Paradisの「Joe Le Taxi」をミラーボールの光に照らされながら演奏した。

バンド・メンバーを愛情たっぷりに紹介すると、ライヴは終盤へ。ボンジュール鈴木にとって初音源となったミニ・アルバム『私こぶたちっく』のタイトル曲を演奏。ダンサブルな「5番目のPoupéeコレット」でいたずらっぽい歌声を聴かせると、「甘い声でちくってして」ではとびきりセクシーなウィスパー・ヴォイスを披露。彼女自身による鉄琴の演奏も織り交ぜながら、煌びやかなサウンドで場内を盛り上げた。

アンコールに応えてボンジュール鈴木が再度ステージに登場、「どうもありがとうございます。すごいうれしいです」と感謝した。そして彼女の名前を世に知らしめたTVアニメ「ユリ熊嵐」のオープニング曲「あの森で待ってる」について言及。制作当時の状況を振り返りながら、並々ならぬ決意で完成させたことを明かし、「私がいまここで歌わせていただいているのも、あのアニメを歌わせていただいたからだと思います。自分のなかで一番大変だった時期を乗り越えられたので、すごく自信になったというか。素敵な作品で歌わせていただいて、とても幸せに思います」と、言葉を選ぶようにゆっくりと語った。

幻想的な鐘の音とコーラスが響くと、ラストの曲「あの森で待ってる」がはじまる。本編はすべて座って演奏していたボンジュール鈴木が、この曲では立ち上がり、両手でしっかりとマイクを握りしめながら言葉をつむいでいく。スクリーンに緑がまぶしい森の映像が映し出されるなか、客席をゆっくりと見渡しながら、気持ちを込めるようにていねいに歌った。最後に「どうもありがとうございました」と深く長い礼をすると、場内は大きな拍手に包まれ、ライヴは幕を閉じた。

DJを除いた演奏時間は、トータルで1時間20分ほど。これまで行ったライヴは2回のインストア・イベントのみで、本格的なライヴはこの日がはじめてだったこともあり、特に前半は様子をうかがうようにじっとステージを見つめている人が多かった。アンコールでは、謎の多い彼女が自らの口で思いを語ったこと、さらに立ち上がってじっくりと客席を見ながら歌ったことで、ステージと客席との心の距離が一気に縮まった気がした。おそらく客席のほとんどの人が知っていたであろう「あの森で待ってる」という曲の力も大きかったのだと思う。あの瞬間、会場には確かに静かな一体感が生まれていた。

彼女は活動開始当初から、ネット上に音源をあげながら、たったひとりでその世界を構築してきた。そのひとつの完成形が今回の公演だったわけだが、リスナーと直接ライヴという場で関わったことは、彼女の世界観に少なからず影響を及ぼすのではないだろうか。おとぎの国から現れたようなお姫様は、今後どのような物語をつむいでくれるのか。これからも注目したい。(前田将博)

写真 : ellenote photography

〈ボンジュール鈴木1st full album「さよなら。また来世で」release party〉
2015年6月7日(日)渋谷 club asia

<セットリスト >
ヴォーカル&Vnセット
01. je ne sais pas pourquoi
02. ave maria(カバー)
03. lovi'n you(カバー)
04. 羊曜日に猫ごっこして
05. アゲハ蝶の破片と君の声

バンドセット
06. キミと恋したいのです
07. allo allo
08. はやく行かなくちゃ
09. Joe le taxi(カバー)
10. 私こぶたちっく
11. 5番目のPoupéeコレット
12. 禁断のショコラ
13. PM9:55
14. 甘い声でちくってして

アンコール
15. あの森で待ってる

Vocal & Keyboard:Bonjour Suzuki (Kobuta Japon)
Violin:Asuka Mochizuki (GEMINI)
Guitar:Misaki Nakamura (magallanica)
Bass:Kie Kinoshita (taihen ningen)
Drum:Ayako Sema (meisai modern)
Keyboard:Ena Kitajima
Manipulate:Wonder World (CLUSTER SOUNDS)

・ボンジュール鈴木、待望の1stフル・アルバム『さよなら。また来世で』ハイレゾ配信&インタヴュー(OTOTOY特集ページ)
http://ototoy.jp/feature/2015041500

・ボンジュール鈴木とLINEしてみた&「ユリ熊嵐」OPテーマがハイレゾ配信開始(OTOTOY特集ページ)
http://ototoy.jp/feature/20150225

・ボンジュール鈴木 オフィシャルサイト
http://bonjoursuzuki.com


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