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2015/06/11 18:00

 

ポストロックを一括、総ざらいーー『ポストロック・ディスク・ガイド』

 

誕生から20年、その領域、世代も越えて拡大するジャンル、ポストロック。

ポストロックを体系的に、そのスタートから現在にいたるまでを豊富なディスク・ガイドとともに紹介する『ポストロック・ディスク・ガイド』がこのたび刊行された。監修はOTOTOYでも執筆しているライター、金子厚武。

「ポストロックってなに?」という初心者から、「もっと深く知りたい!」というディープなリスナーまで安心の内容。

その発生源となった1990年代のトータスを中心としたシカゴのシーン、ジム・オルークや周辺のバントを含む、いわゆるシカゴ音響派と呼ばれたシーンにはじまり、そこへとつながるエレクトロニカやテクノ、マスロックやエモ、さらには2000年代のバトルス、そして最新作をリリースしたタイヨンダイ・ブラクストン、また地域にしてもアメリカのインディ・シーンはもちろん、モグワイをはじめとするイギリス、アルゼンチン音響派に、シガー・ロスと北欧シーン、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラー周辺やブロークン・ソーシャル・シーンをはじめとするカナダのシーン、そして代表、河野章宏のロング・インタヴューがフィーチャーされている残響レコードをはじめとする日本勢まで包括的に”ポストロック”なる、誠に曖昧な音楽ジャンルを大量のディスク・ガイドにて、1冊で浮かび上がらす感覚は鮮やか。

また森は生きているの岡田拓郎とOTOTOYプロデューサーでもある高橋健太郎による対談、クラムボン、ミトとtoe、美濃隆章の対談など、ポストロックと出会い、自らのサウンドを進化させてきたアーティスト、エンジニアたちによる、かの音楽の解析を試みた対談たちも収録。普段の作品中心のインタヴューでは語られない、”ポストロック”的な音の向き合い方がなにより興味深い。そして、これらの対談を読むとよくわかるのが、ポストロックは”音”の捉え方をある種、根底から変えてしまったという感覚。ルーツ・ダブやディスコといったジャンル以外で過小評価されていた事実=スタジオ・エンジニリング的な観点が音楽を変えるという事実が、楽曲制作の価値観の一片を変えてしまったということだ。そこには1990年代のエレクトロニック・ミュージックと、そこに関わる制作、リスニング感覚の変化が共犯関係にあることは間違いないだろう。もちろん、いわゆるエデット処理を施すこと=ポストロックではないことは一応断っておく。が、そのあたりも含めてその広大なポストロックのフィールドを知るには本著はガイドとして最適だ。

20世紀末に生まれ、発生から約20年を時を経へて、ある種その名前を字義通りに捉えればロックに非ざるロック、傍流として生まれながら、むしろロックの中心にもある程度の影響を与える大流になってしまったことが本著を読むとよくわかる。

またポストロックの思想とも共鳴する、スタジオ・エンジニアリングと音楽の関係を結んだ高橋健太郎の著書『スタジオの音が聴こえる』(上記トータス周辺、ポストロックの牙城となったSOMAスタジオにも言及している)と、本著の刊行を記念したトークセッションが6月19日(金)タワーレコードの渋谷店B1F〈CUTUP STUDIO〉にて開催が決定。本著の監修、金子厚武とともに、ゲストに新作『Wonder Future』をリリースしたばかりのアジカン、後藤正文が登壇。本イベントは、なんとツイッターでの高橋健太郎とのやりとりによって実現した模様だ。SOMAでソロ作をミックス、またさまざまな名盤を生み出した機材などが受け継がれている、フー・ファイターズ所有のStudio 606でレコーディングした新作『Wonder Future』などの制作秘話が聴けるのではないだろうか。チケットは下記のサイトより。
(河村)

・『ポストロック・ディスク・ガイド』
http://www.shinko-music.co.jp/main/ProductDetail.do?pid=0641434

・チケットのなどの情報はこちらへ、後藤正文×高橋健太郎×金子厚武 トーク・セッション 〈未来の音が聴こえる〜ポスト ロックの聖地Somaとデイヴ・グロールのStudio606を巡って〜〉
http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/6852

後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)×高橋健太郎×金子厚武
〈未来の音が聴こえる~未来の音が聴こえる~ポストロックの聖地Somaとデイヴ・グロールのStudio606を巡って~〉
ASIAN KUNG-FU GENERATION 『Wonder Future』+「スタジオの音が聴こえる 名盤を生んだスタジオ、コンソール&エンジニア」+「ポストロック・ディスク・ガイド」リリース記念

日時:2015年6月19日(金) 19:30開場/20:00開演
場所:タワーレコード渋谷店B1 〈CUTUP STUDIO〉
出演:後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、高橋健太郎、金子厚武
チケット代:1,000円(税込) *別途1ドリンク必要

[ニュース] Battles, Gotch, Mogwai, Sigur Rós, Tyondai Braxton, toe, クラムボン, 森は生きている

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