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2015/04/06 20:00

 

闇ポップSSWしずくだうみ、初ワンマンで学生時代の未発表曲など全16曲披露——OTOTOYライヴ・レポート

 

鍵盤弾き語りで都内を中心に活動する闇ポップ・シンガー・ソングライターのしずくだうみが、自身初となるワンマン・ライヴ〈スナックだうみ第1夜〉を3月28日に東京・渋谷guestで開催した。学生時代に作ったという貴重な初期の曲から最新E.P.収録の曲まで、これまでの彼女の歴史を総括するようなセットリストで、しずくだうみが構築する世界観をじっくりと聴かせる内容となった。

会場に入ると、スナックのママに扮したしずくだと、チーママという名目で手伝いにきていたシンガー・ソングライターのタグチハナに迎えられ、前日から仕込んだという手作りの料理が彼女たちから直接ふるまわれた。パクチー好きで知られるタグチは、パクチーを手に「パクチーは好きですか?」とフロアにいる人たちにうれしそうに訊いてまわっていた。

オープニング・アクトのシンガー・ソングライター、ナリナリが30分弱のステージで会場を暖めたあとに、黒いワンピース姿のしずくだが登場した。「今日は高校生のときに作った曲、大学生のときに作った曲、フリーターになってから作った曲と順番にやっていきます」と説明すると、「あじさい」からライヴはスタート。1曲歌い終えてから「これ大学生のときに作った曲だった」と告白し、会場を笑わせた。「人生で3番目くらいに作った曲です。しずくだを名乗るようになってからはほとんどやっていないんですけど、壮大な曲です」という紹介で演奏された「ペトラ」は、その言葉どおりのどこまでも伸びていくような高音のヴォーカルが心地良い曲だった。なお、人生で最初に作った曲は「オーカー」らしいが、「ひとりで演奏するのはきついので、音源で聴いてください」とのこと。

「こんな暗い感じでやっていますけど、みなさん生きてますか? 」と闇ポップ・シンガーらしいMCを挟みつつ、「震災のあとに、あまりに震災についての曲を書く人が多くて、ダッセーと思って作った曲」という「midori」を披露。孤独な歌詞と美しくもかなしげなメロディが心に響いた。彼女の曲では珍しい軽快なリズムの曲「浮いた惑星」ははじまった途端に演奏を中断。「譜面が全部半音下で書いてあって、思い出しながらやっている」ために間違いが多く、やめることにしたらしい。「非常に病んでいて、自殺をしようとしてやめたっていう曲」という「透明タウン」など、1曲1曲を紹介しつつライヴは進んでいった。

「私はどんなイベントに出ても浮くんです。アイドル・イベントはもちろんなんですけど、弾き語りのイベントでも浮いて、つらぽよな感じです(笑)」とイベント出演時の苦労話をしつつ、最新E.P.『泳げない街』収録の「パラレルワールド」を演奏。さらに1st E.P.『届かぬ手紙のゆくえ』から「大学2年生くらいに書いた曲」という「夜の海の夢」では、サビでファルセットのせつない歌声を聴かせた。

ここで、オープニング・アクトで登場したナリナリを呼び込み、この日入場特典として配布されたCDに収録されている共作の2曲を一緒に演奏する。しずくだが年明けの打ち合わせの席でインフルエンザ級の風邪をひいた直後で咳をしていたところ、「まじかわいそうだね」とナリナリに他人事のように言われたことをきっかけに作ったというエピソードをユーモアを交えて紹介しつつ「お願いチョコリータ」をナリナリのアコギに乗せて演奏。ほのぼのとした日常を歌った「おとなりさん」では、しずくだのピアノ演奏にあわせてふたりの暖かい歌声が響いた。

再びしずくだがひとりで演奏する。小学校時代を振り返って作ったという「いじわるなきみのこと」では、「近道教えてくれるのはいいけど 膝カックンしないでよ」「掃除しないのは別にいいけど スカートめくるのはやめてよ」という懐かしいワードから「電話くれるのはいいけど突然切るのやめてよ」という少しせつないものまで、思わずうなずいてしまうさまざまなエピソードが歌詞に散りばめられていた。さらにセックスをテーマにした「ゲーム」では、「愛に似せた下心をあばき合う空虚なゲーム」「心動いたら服従のゲーム」とリアルな言葉が心に刺さった。

しずくだが、3月で辞めてしまうというguestの店員に花束をプレゼントするという心温まるサプライズを挟みつつ、本編最後の曲「水色」へ。心を込めるように目を閉じてゆったりと紡がれる歌声に、観客はじっくりと耳を傾けた。

アンコールでは、この日ライヴ会場で発売開始された初のライヴDVDの宣伝をしつつ、「みなさん本当に今日はありがとうございました」と感謝を述べる。そして「スリーコードで恥ずかしいんですけど、高校生の頃に作った曲です」と紹介すると、しずくだうみ名義では初披露という「adult 」を演奏。音源化されている曲ではあまり聴くことのできない歌いあげるようなメロディと、「あなたにも本当はわかってほしいなんて言えない」などのナイーブな感情をつづった歌詞が印象的だった。最後にしずくだが一礼すると大きな拍手が場内に響き、初のワンマン・ライヴは終了した。

これまで自主企画でも30分程度の演奏がほとんどだったしずくだが、はじめて行った1時間超えの長尺ライヴ。彼女らしい毒気をはらんだMCを挟みつつ、これまでの歩みを振り返るように1曲1曲をていねいに歌っていった。鍵盤の演奏に乗せて紡がれる美しいメロディもさることながら、独自の視点で心情を切り取った繊細な歌詞表現の秀逸さを改めて感じさせられた。それはきっと多くの人の心に響く普遍的なものであると思う。しずくだは今年に入ってから以前に比べてライヴの本数も格段に増えており、今後はさらにアグレッシブに活動していくことだろう。彼女のさらなる飛躍を期待させる初の単独公演となった。(前田将博)

写真 : 箪笥

しずくだうみ 初ワンマン・ライヴ〈スナックだうみ 第一夜〉
2015年3月28日(土)渋谷guest
<セットリスト>

OPSE.水色ゲームボーイver
1.あじさい
2.血のインクといちょうの木
3.ペトラ
4.今日
5.midori
6.浮いた惑星(途中まで)
7.透明タウン
8.部屋
9.パラレルワールド
10夜の海の夢
11.お願いチョコリータ(ナリナリとのコラボ)
12.おとなりさん(ナリナリとのコラボ)
13.いじわるなきみのこと
14.ゲーム
15.水色

アンコール
16.adult

・2015年注目の女性シンガー・ソングライター2人が語る「女の子が歌う理由」――しずくだうみ×タグチハナ対談&ハイレゾ配信!!
http://ototoy.jp/feature/index56.php/2014121501/

・しずくだうみ オフィシャルサイト
http://szkduminfo.tumblr.com


[ニュース] しずくだうみ, タグチハナ

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