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2014/12/04 08:00

 

キセル、『明るい幻』最速生披露でファンを酔わせる-OTOTOYライヴレポ

 

キセルが、4年半ぶりのニュー・アルバム『明るい幻』発売日の12月3日(水)、横浜・黄金スタジオ内試聴室にてライヴをおこない、満席となった会場でアルバム収録曲のほとんどを初披露した。

〈カクバリズム&OTOTOY presents キセル『明るい幻』発売記念! Special Place Live & Ustream in 黄金町試聴室〉と題して開催されたこの日のライヴは急遽決定したもので、実に4年半ぶりとなるスタジオ・オリジナル・アルバム『明るい幻』発売当日に新曲の生演奏を披露しようというもの。ファンにとっては待ちに待ったニュー・アルバムの楽曲を小規模なスペースで楽しめるとあって、会場には開場時間のだいぶ前から待っている方の姿も見られた。

会場となった横浜市黄金町の黄金スタジオ内試聴室は、外の寒さと相まってどことなくスキー場のロッヂのような雰囲気を醸し出していた。開場後リラックスしたレゲエナンバーが流れる中、お客さんはビールを飲んだり、カレー(めちゃくちゃ美味い!)を食べたりしながら開演を待っていた。用意された椅子は満席で、立ち見も出る盛況ぶりに彼等への期待感が伺える。またUstreamでも生中継されるのでPCの前で楽しみにしていた方も多かったに違いない。

20時を過ぎると、クリスマス・ソングがBGMに流れる中、辻村豪文・友晴兄弟が登場。今日のライヴは2人だけのセットでおこなわれる。「こんばんはキセルです。今日はありがとうございます」。豪文が第一声でお客さんに感謝を伝えてから始まったのは、ニュー・アルバム1曲目を飾る「時をはなれて」。口笛を吹きながら曲が動き出す。丸みを帯びながらも歪んでいる友晴のベース(フェンダーのジャズベース)とショート・ディレイがかったギター(ダブルカッタウェイのGRETSCH6120を使用)を淡々と鳴らしながら歌う豪文。

「キセルは今日、新しいアルバムを出しました」との豪文のMCに観客から一斉に拍手が沸き起こる。「発売日にライヴをやるのは初めてなので若干フワフワした気分(笑)」という友晴。このアルバムが制作から発売に至るまではかなり時間がかかり、長い道のりだったとのこと。「無事完成できました。おかげでめちゃくちゃ良いアルバムが出来たと思っているので、今日はアルバムのほとんどの曲を収録順にやります」と、「夏の子供」へ。ギターで刻む小気味良いブラッシングと友晴のベースがR&B風のクロいビートを感じさせた。「君をみた」ではワルツ調に乗せた2人の声のハーモニーに観客の体も揺れる。

「13曲あるうち、僕が歌わせてもらってる曲です」(友晴)と「花に変わる」を紹介。”悲しいあの日も 花に変えて”という歌詞が印象的なじんわりと心に沁みる良い曲だ。「本当にCD出すのが久しぶりなので、タワレコに偵察に行ってレジを10分くらい観察してた(笑)」という豪文。それだけ力作だということはここまで聴いた楽曲たちからも充分伝わっている。アルバムの中盤の変わった曲を、と逆回転風のイントロから演奏された「そこにいる」。2人での演奏はシンプルだが、アルバムではかなり賑やかな音使いと不規則なドラムが楽しめる一曲となっている。

時折、頭上を京急線の電車がガタガタと音を立てて通り過ぎて行く。そんな音さえも、キセルの音楽に最初から入っている楽器のように聴こえるから不思議だ(ライヴの最後にもまさにそんな瞬間が訪れた)。続く「ミナスの夢」も会場をサイケなムードに包み込んだ。キセルが15年続けられてきたことに感謝、そして豪文がツイッターを始めたもののまだリプライの見方がわからない、とのMCから「たまにはね」では友晴がミュージックソーを演奏して浮遊感を演出。淡々としながらも力強い歌がその音色と混じり合う名演だった。軽快なリズムとコーラス・ワークで聴かせた「今日のすべて」を終えると、今後久々の全国ツアーをおこなうこと、さらに初めての台湾ライヴをおこなうことを告知。幻想的な打ち込みのリフレインから「空の上」へ。ベースのロングノートがゆったりとした重力で曲を引っ張って行き、ニュー・アルバム最後の曲「声だけ聴こえる」を演奏。まっすぐなメロディをさらに純化していくような2人のシンプルな演奏は、口笛のハーモニーとともに静かにエンディングを迎えた。

一度舞台袖に消えた2人だが、アンコールの拍手が起こるとわずが数十秒でステージに戻ってきた。「じゃあ最後は慣れた曲を」と「ベガ」を歌うと、肩を揺らしつつ小さく一緒に口ずさむ観客も。曲を終えステージを降りたものの観客は誰ひとりとして席を立たない。しばらく続いた熱いアンコールの拍手に応えて再びステージに戻る。

予定外のアンコールに応え始まったのは「ピクニック」。サンプラーの音が流れ出しギターを弾き出したタイミングで、そこに重なるように電車が走り去って行き、まるで作りこまれたサウンドのようだった。「電車の窓は 一つの 映画の様で」という歌詞もバッチリはまった楽曲の演奏を終えると、満員の会場から万雷の拍手が起こり、この日のライヴは終了した。

新曲中心でありながら、ライヴが始まった瞬間に会場の空気はあっという間にキセルの世界に染められ、お客さんは一種の安心感の中で新しいキセルの歌を堪能していたのではないだろうか。『明るい幻』というアルバム・タイトル通り、揺らぎの中にポジティブな希望を見出すような楽曲たちの美しいメロディがシンプルな演奏から伝わってくる好企画だった。ニュー・アルバム『明るい幻』の全貌は是非、OTOTOY配信ページから聴いてみてほしい。

取材・文:岡本貴之
写真:大橋祐希

〈キセル『明るい幻』発売記念ライヴ〉
2014年12月3日(水)黄金町試聴室
〈セットリスト〉
1.時をはなれて
2.夏の子供
3.君をみた
4.花に変わる
5.そこにいる
6.ミナスの夢
7.たまにはね
8.今日のすべて
9.空の上
10.声だけ聴こえる
AN1.ベガ
AN2.ピクニック

・キセルのニュー・アルバム『明るい幻』はOTOTOYから絶賛配信中!!
http://ototoy.jp/_/default/p/47145

・キセル「明るい幻」特設サイト
http://www.kakubarhythm.com/special/akaruimaboroshi/


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