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2014/06/17 12:30

 

説明不要!! 玉手初美が魅せたロックンロールーーOTOTOYライヴ・レポート

 

先日OTOTOYでは『狂』が配信され、一部店舗ではデビュー・アルバム『遺書』も先行販売が開始。着実に玉手初美の名が広まりつつある。YouTubeにアップされているMVを皮切りに、シングルのみならずアルバムまで手に入れ、筆者の玉手に対する興味は日々高まるばかりであった。はたして実際の演奏では、彼女はどのようなパフォーマンスをみせるのだろうか。 いても経ってもいられず、早速現場へと足を運んだ。

アルバム先行発売後、初となる会場は渋谷O-nest。東京・大阪で各日、ステージを複合する会場を用いて行われるサーキット・イベント〈DUM-DUM PARTY〉の出演である。この日玉手は『遺書』でも共演を果たしたオータコージと共に、トップバッターとしてステージに上がった。MVでも見せた衝撃的な演奏は、演奏は実演ではどれほどまで増幅されるのか、期待は深まるばかりである。

受付に並んだ観客が目当ての会場に落ち着き、いよいよイベントが開幕。客席から玉手が入場し、パフォーマンスを行うO-nestのサブステージにしばし視線を送る。先にステージに上がったのはオータコージで、コシの効いたリズムを刻み始めた。暖色の照明で緩やかな雰囲気が漂う会場に、張り詰めた緊張感が走る。数回リズムがループすると、ゆっくりと玉手がステージに上がり、オータのリズムに合わせてギターを弾き始める。そして歌を重ねていき、新曲「ぶたにしんぢゅ」からライヴがスタートした。

この曲は歯切れ良い二人のカッティング&ドラミングで構成されており、合間でヴォーカルのみになったりとメリハリを効かせている。一曲目にふさわしいソリッドなインパクトを残し、そのまま楽曲は「偽善者」、「論文」へと矢次早に移り変わっていく。ともに実生活に基づいたかのような、生々しい題材を歌詞にしている。その迫力は実演でも大いに冴え渡り、特にギターとドラムの音がストップし、音が無くなる中での言葉は、その味わいが最大限に発揮される瞬間であった。

チューニングで一呼吸挟み演奏された「純情」「17才」は、玉手のヴォーカル・スタイルの幅広さがうかがえるナンバー。ささやきやえぐりこむようなコブシ、響き渡る高音のヌケの良さなど、一曲の中で複雑に歌い方が変化していく。こういった唱法の懐の広さも、彼女の表現力の高さを物語る一因である。特に「17才」は漂うようになめらかなギター・フレーズと相まって、高いポテンシャルを明確に発揮させる名演であった。対して刺々しい若者言葉を効果的に用いる「姉妹のゲンカ」では、声や歌詞の内容だけでなく口調による殺傷力も提起し、これまでにない表現方法をも突きつけていった。

彼女の演奏スタイルは実にストイックで、むやみに暴れまわったり客を煽るようなことはしない。楽曲ごとのフレーズを的確に紡ぎ出し、時おりアンプを調節するのみに留めている。弦にピックを当て、音を出す手つきそのものがパフォーマンスとして成り立っているのである。これが実に効果的で、音と密接に繋がり合い、一切無駄がない。MCもほとんどなく、この日も簡潔な自己紹介とオータの紹介、それから曲の終わりで頭を下げるだけだった。まさに硬派。ここまで突き詰めたステージングは、純粋に楽曲を聴かせたいという、シンプルながら最も重要となる目的を体現していると言えるだろう。誤魔化しなど絶対に使わない、強い意思を感じさせる。

もう一つ特筆だったのが彼女の表情。めまぐるしく頭を振る彼女の表情は、長い髪に隠れて基本的に見えない。しかし一瞬、髪が揺れて顔つきが見えることがある。その様子は険しく、まばゆく眼を光らせている。その状態で客席を満遍なく捉えていき、緊張感を絶やさないように働きかけていた。途中前髪を寄せるシーンがあり、ここではまた違った趣きも見せてくれた。鬱屈した歌詞の世界観そのままに、どこかけだるいような様子でマイクに集中する。それは冷め切ったようでもあるし、対して寂しげでもある。複雑な心情を歌にするだけあり、その形相も観る者に様々な解釈を引き起こさせるようであった。

終始場慣れした振る舞いを見せる玉手。途中アンプが倒れて音が出なくなるトラブルにも全く動じず、黙々と演奏を続けた際には凄みさえ漂わせていた。そんな中スタッフがアンプのセッティングを行う最中、オータに微笑みかけシンバルをチョンチョンつつくという、唯一年齢相当の姿をみせる場面もあった。そんな彼女の姿を現すような、軽快なフレーズとオータとのコーラスが飛び出す新曲「本日のディナー」を挟み、最後の楽曲はMVでもおなじみの「狂」。畳み掛けるようなオータのドラミングに感応し、玉手のギター・サウンドとヴォーカルも切れ味が増していく。駆け抜けるような演奏が終わると、玉手は足早に客席を通って退出。オータも手早く機材を撤去し、会場が明るくなり外に出ると、すでに彼女の姿はなかった。ただ余韻だけを残して立ち去る姿勢は、終始無駄のない空間を生み出す、その一点に尽力するようであった。

楽曲のみならず、ステージングにおいても卓越した腕を見せた玉手。オータの熟練したドラムさばきに見事合致した演奏は、今後の成長・活動にさらなる期待を抱かせてくれた。10代の今だからこそできる表現を的確にアウトプットしつつも、どんな変化を見せるか想像できないほどの奥深さを潜ませている。一度実演を目にすれば、その凄味は一発で分かるはずだ。ライヴを観る度、また違った姿が見えてくるのかもしれない。再び彼女の舞台に足を運ぶ、その機会が待ち遠しいところだ。(高橋拓也)

写真 : 中島未来

〈DUM-DUM PARTY 2014〉
2014年6月14日(土)TSUTAYA O-nest

・セットリスト
1. ぶたにしんぢゅ(新曲)
2. 偽善者
3. 論文
4. 純情
5. 17才
6. 姉妹ゲンカ
7. 本日のディナー(新曲)
8. 狂

・玉手初美の音源はOTOTOYで配信中!
http://ototoy.jp/feature/2014061105

[ニュース] 玉手初美

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